「鏡の中のミザリー」について

今回、初めて自主企画というものをやってみてと、それをやるに至った話やら裏話やらを書いてみます。基本的にネタバレや製作話になるので、これから動画や台本読まれる方はご注意を。逆に意図が知りたい!と思ってくださる方はスクロール。





「自殺の話を書いてほしい」というオーダーから、この話は出来上がりました。

元々、私と今回共同主宰をしてくれたArisaちゃんは、配信アプリの「17live」で出会いました。私が去年企画したライブ配信アプリを使った朗読劇、通称イチナナ朗読を見て声をかけてくれたのがきっかけでした。
イチナナ朗読はライブ配信をしている役者さんを集めて短い朗読劇とリスナーさんからお題を貰って即興劇をやるという企画でした。

その企画自体は大変反響があって、また見たいという声や、ありがたいことに今度は出演したいと仰ってくれる役者ライバーさんもいてやって良かったと思うことがたくさんある傍ら、やはり興味のない人からは「芝居見るために配信見てるんじゃない」という声もありました。

私たちの根底には「お芝居をもっと手軽に多くの人に楽しんでもらいたい」という理念があり、それが今回の企画に繋がりました。
「なんとなく遊びに来た、と思ったら気が付いたらお芝居を見ていた」というのが今回のコンセプトでありテーマです。
手軽にお芝居感がないのにお芝居を楽しめる、考えた結果がイマーシブでした。加えて、せっかくならフィールドの違うところで経験を積んできた2人が組むなら、お互いの得意なことでお互いを輝かせることができるのではないか、という発想から劇中劇には映像でドラマパートを入れることになりました。
イマーシブパートは生のお芝居をお客さんに提供する、加えて謎解きを入れることでより世界観に没入してもらう、様々な要素を入れつつも、上演時間は60分以内に収める、これは絶対条件でした。
課題は色々ありましたが、これは「演劇はコスパが悪い」という主張に対する私のアンチテーゼでもありました。

日本人が1年に映画館に行く回数は平均1回
音楽はサビしか聞かずに早送りする
ドラマは量を見るために全て倍速視聴

エンタメが飽和して、エンタメの楽しみ方が悪い言い方をすれば質より量になっている時代になっている今、演劇との相性は最悪です。
そんな中で舞台観劇をわざわざ選んでもらうためには、何をしたらいいだろう?
それが今回の企画に取り組むきっかけでもありました。

カーテンコールで私が言った、「応援してくださる皆様にお芝居で恩返しがしたい」というのが全てです。コスパの悪い舞台観劇を愛し、その良さに通い続けてくださる全ての演劇ファンとこれから舞台を愛してくださるようになる全ての方に、まず楽しいと思ってもらう企画を。
それがこの「鏡の中のミザリー」です。

そして冒頭に戻る。
手軽に楽しむイマーシブのテーマとしては少々重たいが、これをどうしていくべきか。
Arisaちゃんが、これでもう役者を辞めてもいいと思ってる、この作品で終わりたい、と言っていたので、何故このテーマにしたいかと伝えたい思いをしっかりと聞いて執筆をし始めました。
最初に貰った原案のそのままでは重たい話になりすぎてしまうので(でもこれはこれで面白い作品になりそうだったので、そのうち書きたい)私なりのアレンジが、親友・マリコの存在でした。救いになる、なんでも相談できる主人公の拠り所、幼馴染で親友で、お互いのこと何でも分かってると思ってしまうが故に対立してしまうこともある。マリコの存在で、かなり救いのある物語になりました。演じてくれた三葉彩夏ちゃんは、初期からこの人にこの役をやってほしいなと思っていたのでオファー受けてもらえてとても嬉しかったです。明るく可愛く、物語を導いてくれる存在になってくれてありがとうございました。

私が演じる主人公のヒカリは、なるべく私に寄せてキャラクターを作っていました。とはいえ自分への解像度が高くなれば高くなるほど向き合いたくない部分が多くなるものだな、と改めて再確認。ヒカリとマリコは陰と陽、側から見たら何でこの2人仲良いんだろうって思われるような雰囲気を作ろうと思ってました。

ヒカリは内向的で、自分に自信がないものの、これと決めたらそこに行き着くための努力を惜しみません。ただ、その過程で周りを見失ってしまいがちで、先生や周りからの自分の評価は言われてからやっと気づくのでした。

余談ですが、何で漫画の話にしたかというと、私が幼い頃は本当に漫画家になりたかったからです。でもクラスに私より絵の上手い子はいっぱいいたし、話を考えるのは好きだけど絵を描くことはそんなに好きじゃないな、と思って目指すのを諦めたのでした。
(とはいえこのまま脚本書いて、いつか漫画原作とかできたらいいなとは思ってますのでよろしくお願いします。)
だから、ヒカリの「これから生まれる物語をたくさんの人に見てほしかった」という台詞は私の気持ちでもあります。私自身は創造する側にいて、私がこれから生み出す作品をたくさんの人に見てほしい、それが形が変わって演劇というものになっても。

話は戻して、葛西先生と編集長は、こういう人が周りにいたらいいなと私が思う大人たちでした。
私個人としては、ちょっと子供っぽいところのある大人が好きなので、少し毒付く部分もあるにせよ、上手く飴と鞭で引っ張ってくれるような、時には人として弱い部分も見せてくれるような、そんな愛される人間らしさがあるといいなと思って書いたキャラクターです。

最初の方は原案に沿って本当にただ主人公にヘイトを浴びせる存在にしようかな、とも考えたんですがこの話に完全な悪役や嫌な人間は必要ないかなと考えたので、こういうキャラクター設定に。
演じてくれたのはかまくらあやさん、末永全さん。元々2人とも演技はめちゃくちゃ信頼しかなかったのですが、本当にほぼ一発で理想通りのキャラクターを持ってきてくださって心の中でガッツポーズ決めました。個人的には一対一で絡む芝居がしてみたいお2人だったので、念願叶いました。とても楽しかったです。ありがとうございました。

そして、舞台パート。
Arisaちゃんは映像での経験はあっても舞台は初めてで最初は苦戦していたので、まず「台本通り言わなくていいから、とにかく私を説得して」から始まりました。
自分の体から出てきた言葉で話してほしいので、流れさえ入れてもらってあとは台本を外してもらいました。
そして、体がその感覚を掴んだ頃に今度は台詞を足すという本当に鬼のような所業をしたのですが、結果すごく説得力のある「少女」の役が出来上がりました。

お客さんを引き込み、集中を集め、場の空気を回さなければいけない「少女」という役は初めて生でお芝居をする人間にはかなり大変だったと思います。
大変な役回りをしっかりと演じてくれて、ありがとう。
そして、台本をしっかり読んで衣装プランと製作、ヘアメイク、映像監督は全て彼女がやってくれました。ビジュアル写真がとても評判で嬉しいです。物語からイメージされた彼女の衣装への色んな部分の拘りを聞いて、演出に反映させた部分がたくさんあります。
衣装は思わず可愛すぎて終わったあと、貰って帰ってきちゃいました。

これは紛れもなく、2人の拘りと伝えたいことから生まれた作品でした。

それからイマーシブとはいえ、全然参加してもらえなかったらどうしようって思ってたけど来てくれたお客様が皆さんがとっても積極的に参加してくれる方ばかりで、一体感を感じました。笑顔でこちらを見てもらえると、やってよかった、という気持ちが溢れてきました。
クラウドファンディングからここまで、支えてくださる皆様はお客様であり、そしてこの作品の一部です。感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

それから、この作品に関わってくださった皆様。
企画作成段階から一緒に考えてくれた戯曲本舗のメンバー。
当日もたくさん手伝ってくださってありがとうございました。

謎の作成をしてくれた原田くん、お客様にとても好評だった謎解きパート、とてもいい問題を作ってくださいました。

難しい注文を一生懸命やってくださったカメラマンの優太さん、編集もしてくださったひかりさん。
舞台の劇中劇にドラマパートというなかなかない絵面を、引き込まれる映像にしてくださってありがとうございました。

第三者視点から作品を見てくれた森山さん
世界観を理解して美しく仕上げてくれたゆうちゃん
忙しい中、ゆずがやるなら、と手伝ってくれたあきちゃん
稽古場でアドバイスをくれたヅカさん
親切に丁寧に対応してくれた新宿眼科画廊さん
クラファンを支援してくださったり、足を運んでくれたお客様

みんな、本当にありがとうございます。
誰がかけてもこの作品は出来上がりませんでした。

また会えるように、精進していきます。
まだまだ書き足りないからそのうち第二弾もあるかも。

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