徒然草 人生初のマイハウス、さよなら編

2016/11/27 15:18:04

夏の台風は怖いから、みんな気をつけてほしい。

今年の夏、東京にも大きな台風がやってきて、私はその被害を被った。腰窓から水が大量に入ってきて、床が水浸しになったのだ。幸いにも電化製品には雨がしみることがなかったが、床の色は変色するし、本も御陀仏に。なんだか居心地が悪く感じてきて、その日から「部屋の嫌なところ探し」が自然と始まっていた。 

いろいろ出てきた嫌なところ。中でも結構嫌だったところは「夏の蝉の鳴き声」だ。

家を決めた理由が「目の前に子どもが遊ぶような公園があった」からなのだが、引っ越し初めて×春に探したこと相俟って、ベランダ目の前に大きな樹があることも見て見ぬふりをした。

するとどうだろう、その大きな樹は「蝉の休憩所」じゃないか。「休んでんだよ〜休んでんだよ〜」と泣いて止まない蝉。夜勤のセミもいるらしく、夜中にも「休んでんだよ〜休んでんだよ〜」と鳴く。勿論、「休んでんだよ〜」という鳴き声は私には「ミーンミーン」としか聞こえないのだが。ひどく鬱陶しいかった。

嫌な思い出縛りで書くつもりもないので、いい思い出もあったことを書く。友達が大阪からお泊りに来たこと、近くのお祭りに行くために一生懸命浴衣を着たこと、アイスクリームをみんなで食べたこと、雪が降って死ぬほど寒かった日のこと、冷蔵庫の中がお母さんからのプレゼントで野菜ジュースいっぱいになったこと、ゴキブリが1回だけ出て死にそうになりながら戦ったこと、なかなか起きれない日があったこと、仕事で凹んで近くの公園で一人ボーッとしたこと、引っ越しの片づけをほろ酔いになりながら友達としたこと。

脳内思い出どんちゃん騒ぎの中で、一番の思い出といえば、大阪から上京(上埼玉?)し、引っ越しが完了した日のことだ。

この日はお母さんが大阪から手伝いに来てくれていたのだけれど、終わったということで大阪に帰る支度をし始め、私も最寄り駅まで見送ることになった。

最寄り駅までの10分の間に、お母さんはたくさん心配してくれた。「ここのスーパーは深夜2時までやってるから、夜も明るいと思う」とか「近くにデニーズもあるし松屋もあるし、あんたがご飯作らんようになるのが心配や」とか「この本屋は雑貨も売ってるしペンとかなくしたら買いや」とか「反対側には銭湯あるのお母さんマップで調べたから疲れたら使いや」とか、言い出したらキリないくらい。

最寄駅に着いて改札で「バイバイ」って見送ったけど、なんとなく寂しかったから、近くの駐輪場のフェンス越しに気づかれんようにこっそり見てた。

そしたらお母さん、泣いてんねん。駅のホームで泣いてんねん。私もそれ見て涙こみ上げたけど、喉ぐるぐる鳴ったけど、眉間シワシワ険しくなったけど、とんがり口になったけど、泣きはしなかった。

電車きてお母さん見えなくなって、今までありがとうって気持ちがこみ上げてきて、お家まで散歩して帰った。これが引っ越し完了の日の思い出。

脳内どんちゃん騒ぎはもうおしまい。とりあえず良くも悪くも思い出たくさんな、いい仕事してくれた、すげえいい家だった。

先週、私は都民になりました。引っ越しました。蝉どもの「休んでんだよ〜」も聞くことないな。

電線に鳥が止まりませんように。

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