深山夏乃子の話
デビュー作の「ふしぎ荘で夕食を」の発売が10日後に迫り、このタイミングで作品の話をちゃんとしておこうと書き始めてはみたんですが、いざとなると何を言えばいいのかわからなくなりますね。だから、作品というよりは登場人物の話をしようと思います。
こんにちは。村谷由香里です。
noteをご覧いただきありがとうございます。
深山荘の面々とも、もう1年半くらいの付き合いになります。公募用の小説って長くても半年くらいで書き上げるので、ひとつの作品とこんなに長く付き合うのはこれがはじめてです。
あの小説の中で、わたしが一番気を遣って書いたのはヒロインの夏乃子でした。わたしとは全然違う性格の女の子なので、丁寧でたおやかな彼女の所作を書くのはとても神経を使った。
深山荘のメンバーの中で一番過去を掘り下げた子でもあったのですが、あの子と向き合うたびにいつも、すごく好きだけれど、なかなか踏み込めない女の子だなという気持ちになりました。
その感覚は、夏乃子に片思いしている七瀬に引きずられていたのかもしれない。でもそれを差し引いても、わたしにないものをたくさん持っているあの子に、わたしは憧れのようなものを抱いていたのかもしれません。眩しい子だと思って書いていました。夏の朝の光みたいな。
ふしぎ荘は家族の物語です、と、いろいろなところで言っています。でも、それはわたしが書こうと思って書いたものではなくて、夏乃子がわたしの手を引いて導いてくれたテーマでした。わたしが創り出した女の子なのに、あの子はいつもわたしの少し先に立って、目尻に皺の寄るあの優しい笑みを浮かべて、わたしを待っているようでした。
10日後、「ふしぎ荘で夕食を」という小説が発売になります。みなさんもしよかったら、深山夏乃子に会ってあげてください。味音痴で、とにかく人が良くて、とても心の強い、わたしの大切な女の子に、出会ってもらえたら嬉しいです。
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4/25に第25回メディアワークス文庫賞を受賞したデビュー作「ふしぎ荘で夕食を〜幽霊、ときどき、カレーライス〜」が発売になります!
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