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風吹く女王の物語

恋に身を捧げた女王がいた
 
風が強い夜は
その風を友に
 
漆黒の星空に
あまたの願いを込め
 
我が恋に身を捧げ
炎に身を焼く
 
その冠は
煌く星
 
美しきベールに星屑が光る
 
その優しき横顔に
人々はため息をもらす
 
その潤んだ瞳に
男達は心を奪われる
 
風を友とし
実りを呼ぶ
 
人を愛し
森に遊び
空に舞う
 
ある日
旅人が訪れる
 
彼は若くはないその面影に
人生の時を映し出す
 
人々は彼を
何者でもない旅人と言う
 
ある日、街へ出た女王が
彼の姿に眼差しを向けた

振り返る、彼の瞳に囚われた
 
うつろに見えたその瞳の奥に
チラチラと燃える青い炎
 
女王の眼差しに目をそらすこと無く
見つめ返す
 
街に突風が吹く
彼と女王以外を
世界から消すがごとく
 
一歩
また一歩
 
彼が近づいてくる
 
彼女の心は
少女のように
蕾がほころぶように
ゆっくりと開いていく
 
目前まで来る男
 
名を語り
ひざまずく
 
女王は、その美しき手を差し出す
 
男は、その手に敬意の口づけをする
 
女王は、その時より
心囚われた一人の女となった


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