星の歌人
優しき娘がいた
人を癒やし
心に寄り添う
多くの薬草や石、動物、水
癒やしの為に知らぬものはなかった
人々は娘の微笑みと
歌声も好きであった
祭りがあると
男達は
彼女と踊るために
花を送る
彼女は誰の花も受け取ることをしない
人々は
彼女が神に身を捧げていると噂する
人々は
彼女が己の運命を嘆く過去を持つと噂する
誰もその心を知ることはなかった
ある夜
村に聞き慣れない歌を奏でる男が訪れた
彼は遠き地より旅をし
何かを探していると言う
その歌は
彼の多くを語るように
多くの物語を歌う
彼の地の豊穣
風に広がる潮の香り
月夜に輝く森の花々
どれも村の人々を魅了し
誰もが我が家に迎え
歌を聴き
彼をもてなした
ある日
彼が村の農作業を手伝い
その時に怪我をしてしまう
娘は、村人を楽しませてくれた彼に
その傷を癒やすためと
我が家での滞在を薦めた
1日
2日
数日の日がすぎる
娘は彼の傷に効く薬草を集め
日々、手当をしていった
彼の傷がほぼ癒え
彼は明日
村を出ると言う
最後に
今まで村人には聴かせたことがない歌を捧げたいと
彼女は
暖炉の暖かな炎と
彼の優しい歌声を聴く
それは切ない恋の物語
星の時代
時の狭間に
二人の恋人が
出会いを慈しみ
そして死が二人を分かつ
歌が終わる時
夜は深く
森には優しき風が吹いていた
娘は男の瞳を見つめる
自らの頬に一筋の涙が流れている事に気づく
その一滴が落ちる瞬間
二人の世界は
星々にかこまれ
心には熱い想いが満ちていた
その夜、二人はひとつの星となる
次の日、村に二人を見るものはいなかった
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