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そのセールステックはどのドライバーを引こうとしているのか。「セールステック導入時に気をつけたいビジネスドライバーとROI」|セールステックアドベント 2024

はじめまして。Xpotentialの田所と申します。
このたび、マツリカの中谷さんが執筆された「SalesTech大全」出版記念として開催される「セールステックアドベント 2024」に参加させていただくことになり、「セールステック導入時に気をつけたいビジネスドライバーとROI」というテーマで執筆させていただくことになりました。

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生成AIの活用をはじめ、営業の世界でも、テクノロジーは日に日にそのプレゼンスを高め、うまく使いこなしているチームとそうでないチームで、成果、特に一人当たりの生産性に大きな違いが出てきております。

そこで本記事では、セールスイネーブラー(営業企画・営業推進)や営業DX担当者が見るべきビジネスドライバーやROIの算出方法について、私なりの解説をしていきます。(あくまでも私的な見解ですので悪しからず)
少しでもみなさまのビジネスヒントになれば幸いです。


そもそもセールスイネーブルメントとは?一般的な営業企画とどう違うの?

セールスイネーブルメントも営業企画も、目的は「組織全体の営業成果を上げる」という部分にありますが、大きな違いは「データを元にロジカルに成果までの道筋を語れる」ことにあります。

例えば、ある大手人材業界の方からこんな話を聞いたことがあります。
営業企画「ロジカルシンキングの研修を実施したいです」
上司「確かに営業にはロジカルシンキング大切だから実施しよう」
受講直後の受講者「ロジカルシンキング勉強になった!」
受講後日の受講者「ロジカルシンキングって結局実務の何に使えばいいんだろう?」

こういった話をいたるところで聞いてきました。
「人事や営業企画のやる研修は意味がない」等の声はこういった中から出てくるのではないかと思います。

これは、ロジカルシンキングの研修が意味がないのかというと、そうではありません。セールスイネーブルメントでも、ロジカルシンキングの研修は必要によっては実施します。
ただし、セールスイネーブルメントの場合は、そのロジカルシンキングが何のKPIを構成するどのドライバーに効かせたいから実施するのか、また、そのドライバーをどれくらい伸ばせばどれくらいの売上インパクトに繋がるか、それにかける人的リソースも加味した費用はどれくらいか、ROIはどれくらいなのかを計算した上で実施していきます。
セールスイネーブラーは、勘と経験を元にした意味がありそうな施策ではなく、ロジカルに「◯◯にこれくらい効く施策だからやります!」という施策を実施していくわけです。

ここまでの記述が一番お伝えしたかったことですが、ここまでの説明だけでは少しわかりづらいと思いますので、具体的なイメージを解説させていただきます。

セールスイネーブラーが見るべきビジネスドライバー(KGI・KPIとの違い)

まず、「ロジカルに◯◯に効く」の「◯◯」とは何なのかというと、いわゆる「ビジネスドライバー」と呼ばれるもので、KGIを分解したKPIをさらに分解したものです。

売上の方程式はいくつかあると思いますが、ここでは下記がわかりやすいので下記から分解していきます。

BtoB事業の売上の方程式(一例):売上=営業人数×一人当たり売上

売上=営業人数×一人当たり売上

営業責任者の方は上記のように、人数(KPI)を増やして目標(KGI)にヒットさせようとしたり、一人当たりの生産性(KPI)を向上させて目標にヒットさせようとしたりする場合もあるかと思います。
しかし、ご存知の通り、営業を取り巻く環境が複雑になってきている中、ある程度できるレベルでも営業を採用するのは年々難しくきていますし、単純に人数を倍にすれば売上も倍になるようであれば採算も合いますが、基本的には人数を増やせば新人も増え、一人当たり売上は減ってしまい、人数倍にしても1.5〜1.8倍にしかならないことも多々あるかと思います。

一人あたりの売上をドライバーにまで分解する

そこで、セールスイネーブラー(営業企画)が考えるべき部分として、「一人当たりの売上向上」が出てきます。
一人あたりの売上をまずは量と質で分解してみます。

生産性向上のKPI

上記のように、回数と能率(遷移率や転換率、移行率など呼び方は様々)というKPIに分解することができます。
ここで考えるべきは、それぞれに「どれくらい向上の余地がありそうか」です。

「どれくらい向上の余地がありそうか」を考え、キードライバーを発見する

例えば、同様のサービスを展開していて同じような規模、同じような営業スタイルを採用している企業のインサイドセールスの人が、1日50活動(コールやメール、SNS-DM、フォームアプローチなど)しているとします。自社のISを見た時にそれが半分の25活動だとしたら、そこは倍にする余地がありそうだとわかります。
また、業界最先端の事例から1日50活動を100活動に上げた事例があったとすれば、それも余地になり得るかもしれません。

そして、重要なのはそこから調査して「キードライバーを発見する」ことです。
実際に25活動になっている原因を調査(何にどれくらい時間をかけているか、プロセスは競合と同じなのか等)し、本当に改善できそうなのかどうかを検討していきます。
例えば、営業事務作業が多すぎて実営業時間が他社と比べて半分になっているのであれば、営業事務作業の効率化がキードライバーになるでしょうし、そこが減らせないのに活動数を自分たちで倍にしろというのは無謀なチャレンジとなってしまうでしょう。

ドライバーのイメージを下記にまとめてみました。

セールスイネーブラーが見るべきビジネスドライバー

あくまでも上記は一例ですが、参考になれば幸いです。
ちなみに、オレンジの部分が「イネーブルメント領域」で、セールスイネーブラーが見るべきビジネスドライバーと言えるのではないかと思います。我々Xpotentialでは下記赤枠の領域を主にコンサルティングで支援しております。

Xpotentialの支援領域

ROIの算出方法

最後に、ROIの算出方法の具体的なイメージを共有いたします。
今から話す手順を実施していくと、下記のようなアウトプットを出せるようになります。
「業界把握力を1点上げる為にこの施策を実施します。1点上がれば受注率が3.35%上がり、粗利ベースだと◯◯円上がる計算になるので、予算を△△円をかけてもROIが合う計算です。」
実際の計算式を下記になります。

ROIの計算式

なんだかすごそうで、実際にROIが出るのであれば非常に良さそうですよね。では、この式を出す手順を解説していきます。

ROIを算出する上で、事前に把握しておくべき内容が、実は先程のドライバーの話です。

①事前準備:営業プロセスを定義する

それぞれの会社でそれぞれの営業プロセスがあると思いますが、まずはそれを言語化・定義します。
我々Xpotentialでは、ここの部分を「フェーズ」と「Key Action」とで定義しています。
例えば、ソリューション営業の会社なら下記のようなイメージです。

営業フェーズとKey Action

各フェーズはいくつかのKey Actionで構成されているイメージです。
Key Actionがすべてできていれば次のフェーズに移ります。
(ここで注意すべきは「営業がやったかやっていないか」でフェーズを区切るのではなく、顧客視点でフェーズを定義することにあったりしますが、詳細は下記でご覧ください。)

②Key Action をスキル・知識(ドライバー)に分解し、アセスメントをする

上記の記事で詳細は記載していますが、下記のようなイメージです。

営業スキルマップ

フェーズはKey Actionで構成され、Key Action はスキル・ナレッジ(知識)で構成されるように作ります。Key Action を実行するのに必要なスキル・ナレッジを明らかにすることで、Key Action ができていない人がいれば、そのスキル・ナレッジ(ドライバー)を動かすことでロジカルな育成ができるようになってきます。

そしてさらに重要なのが「数値化」です。

数値化できないものは改善できない

Xpotentialコンサルタント 杉村

弊社コンサルタントである杉村が良く言うのですが、数値化できていないと、どこが悪いかもわからなかれば、改善できているかどうかも把握することができません。故にそもそも改善ができないということです。

逆に、数値化できるものは改善の対象になり得ます。
例えば、行動件数。やるやらないの話ですし、計測できるものなので改善施策に上がりやすいです。あとは商談数やパイプライン。これらも比較的数値化しやすいので改善の対象になりやすくあります。
フェーズをきちんと定義して転換率を計測しているところは、これらも改善対象になります。

しかし、ここからが問題です。
例えば、商談数を増やす為にアポ率を改善しようという話になった場合、なんのドライバーを引くか、そのロジックは?という内容は結構な確率で経験則になりがちです。優秀なマネージャーがいればずっといるのであれば良いのですが、他の役割に昇格させたり、異動があったり退職したりしてしまう可能性があり、会社としてはリスクが高い状態になってしまいます。一部の優秀な人頼みというのは避けたい。
そこでセールスイネーブルメントでは、さらに具体のドライバーである「スキル・ナレッジ」も数値化し、改善の対象にします。
数値化イメージは下記です。

※具体的な数値化方法は、弊社ウェビナー等でご覧いただくか、弊社にご相談ください。
全メンバーの各スキルが数値化されると、各種KPIとの様々な因果関係が見えてきます。その因果関係を計算式にするのが、次で解説する重回帰分析です。

③重回帰分析でROI計算式を作る

重回帰分析は詳しく説明するとそれだけで記事になるので割愛しますが、アウトプットはこの章の冒頭でご覧いただいたものになります。

実はこれ、Excelで出すことができます!

先ほど②で数値化した、フェーズの転換率とスキルの数値をExcelで重回帰分析にかけると、上記のような計算式が出てきます。(実際にはデータの扱いに長けたデータサイエンティストのような人にチューニングしてもらうとより使える式になります)
式を少し解説すると、切片と呼ばれる基礎点みないなものと、各スキルの点数による変動数が「係数」として出てきます。

実はこれ、どのくらいのインパクトに繋がるかというROI算出にも役立つのですが、改善の優先順位付けにも役に立ちます。係数の数値が多いものほど、点数を上げた際のインパクトが大きくなるので、基本的には係数の大きなものから改善していくのが正しいのですが、この重回帰分析をやっていないと、スキルの数値が低いものから改善しがちです。

これは実際にあった話ですが、あるチームで案件化率を上げるべく、受注率に紐づくスキル・ナレッジの数値化をしました。数値化をした状態では、「競合把握力」の平均点が一番低かったので、「競合把握力」を上げようという話になりそうでしたが、実際に重回帰分析をすると「業界把握力」の方が5倍以上も係数が高く出ました。
確かに、点数が低ければ点数的には改善の余地はありますが、それを上げても受注率にそんなに響かないのであれば優先順位を高くする必要はありません。おそらくハイパフォーマーも競合把握力はそこまで高くなかったのでしょう。だから競合把握をしていようがいまいが、そんなに受注率には影響しないという重回帰分析の結果になったということです。

セールステック選びにどう活用するか(結論)

ここまでで、セールスイネーブルメントについてやROI算出について解説してきましたが、本日お伝えしたかった内容はここになります。(しかしご安心ください、めちゃくちゃ短い章です。笑)

セールステックを選ぶ際も、ROIを算出してから導入しましょう!

例えばみなさん、SFAは何の為に導入しましたか?オンライン商談ツールは?商談の解析ツールは?行動支援系のツールは?

自分たちはどの数値が悪くて、それを改善する為に何のドライバーを改善する必要があるのか、そのドライバーをどれくらい改善できれば、数値はどれくらい上がるのか。それによって目標は達成される見込みになるのか。

これらの数値は何も転換率だけではありません。様々な数値を計測する為の作業時間や、教え込む時間、リードタイム、移動時間など様々な数値を改善できるのがセールステックです。何の数値を改善するのか、これらを詳らかにした上でセールステックを検討することをオススメします!

最後に

セールスイネーブラーは、営業目標・戦略を実現することが最終的なミッションになると思います。目標・戦略の実行に今のチームでは到達できないのであれば、それをどうにかしてチューニングし、実現していくのがイネーブラーの役割です。我々Xpotentialでは、現状と目標から導き出したGAPを埋める為に何をするべきなのか、これを日々お客様と考えております。もし目標と手なりのGAPが激しいということであれば、ぜひご相談ください!

おまけ:生成AI×音声データの話

途中でスキルの数値化の話がありましたが、結構ここがネックになることが多く、弊社では「商談・架電→スキル数値化→フィードバック→改善」をAIがサポートしてくれるセールステックを提供しております。
商談や架電時の音声データは宝の山です。ハイパフォーマーの型化もできれば、個人別の改善策の元にもなります。
ぜひ一度デモをご覧いただけたらと思います!

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