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【エッセイ】久々のサウナで意識が飛びかけて危なかった話

2024年はサウナに行く余裕など全くなく、毎日毎日その日生きることに必死になりながら、無常にも淡々と過ぎ去る時間を可能な限り無駄にせず過ごす…そんな一年だったからこそ、久々に地元のスーパー銭湯に足を運んだ時はこれ以上ないほどのこれ以上ないほどの喜びが身体全体を覆ったのを今でも鮮明に覚えている。

至上の喜びの中、浸かる湯船は極楽すぎるあまり、ここが天国かと…思うほどの気持ちよさ。あれが指定薬物として禁じられていない事実にはただただ感謝するしかないなと思いながら、その日の私の意識は久方ぶりに入るサウナへと向かっていた。

自身の体に蓄積された疲れを全て解き放ちたい。

そんな気持ちが私の思考を支配し、私は早々に湯船から抜け出しサウナ室へと足を運んだ。気持ちの昂りは近づくにつれて大きくなる。まるでサウナ室が地平線まで広がる懐石料理のように見えてきた。

私が訪れたスーパー銭湯には特定の時間にサウナ室に入るとスタッフによるアロマを垂らしたロウリュウが受けれるサービスがある。無論、受けるに決まっている。久々のサウナだ。行けるところまで行きたいと思う気概が芽生えないわけがない。

一言で申すなら、久々すぎたからなのか分からないが汗がとんでもなく溢れ出た。正直、今執筆している時点では鮮明にその時のことを覚えていない。

ただただ、サウナってこんなに熱かったか…と。

サウナ室の外に出たときには景色はボヤけており、湯気と光が入り混じることで雲の中にいるように思えたほどだ。朧げながら汗を洗い落とし水風呂に入る。急速に意識は明晰になっている。幻想的な光は神秘さを失い店内を照らす光源となり、景色もハッキリと輪郭が現れ出した。

そうなると後はゆっくりと椅子に座り、自律神経を整える時間へと意識が動き出す。久々のサウナであることもあり、一体どれくらいの快楽が私を包み込むのだろうか?そんなことを考えながら椅子へと座った。


私は一時期ほぼ毎日サウナに入っていたこともあったジャンキーであった。暇さえあればサウナがある温浴施設を調べ、1日に複数施設を梯子することだって珍しくはないほどにサウナに通っていたし、サウナを健康的かつ気持ちよく入るためにコンディションを整えることも意識していた。

そんな過去があったから油断していたのか?原因は分からない。

ただ一つ言えることは、あそこまで意識が飛びかけた経験は一度たりともなかったという…それだけである。

まず、音が少しづつ小さくなっていった。周りの音が聞こえにくくなり、意識できているのは私の呼吸と血液の流れ。そして五臓六腑の体動である。

身体は通常の倍以上に重たく椅子にめり込み、瞼の裏は暗闇に浮かぶ光の渦で埋め尽くされている。

これまでの経験からか、危機的状況を瞬時に察して脳がシグナルを送ったのかは分からないが、私は「これは多分まずいやつだ」と思い無理やり目を開いて体勢を前屈姿勢に変えた。吐き気がする。脱水症状の可能性もある。

朦朧とする視界とは裏腹に鮮明になる意識。ゆっくりと立ち上がり水を飲む。横になれる場所へと足を運び身体を休めた。

淀む意識は無造作に波を打ち、脳が揺れる感覚とともに身体が静かに沈んでいく。音は聞こえる。匂いも感じる。吐き気も消えていった。

意識は辛うじて繋がっているが、判断が遅れたら途切れていたと思う。それほどまでに強烈な乱れを感じながら微かに揺らぐ快楽を掴もうと暗闇を旅した。


結局のところ、私は少し寝落ちし、底冷えした身体を温めるために再び入った湯船でととのう感覚を久々に味わった。

やはり、何事も準備運動は欠かせないなと思い、これからは無理をせず、身体のペースに合わせてサウナに挑もうと、少しばかり成長した…そんなサウナであった。

しかし…今振り返れば「音が消えていき、身体が椅子に呑まれるほど重くなっていく」感覚は気持ち良かった。

無事生還したから言える戯言ではあるが、それでも気持ちよかった事実もまた記述しておこう。二度はごめんだが、もし機会があればしっかりと乗りこなせるように精進したいと湯の神々へと誓う。


【パーソナル】
名前:Sakai Yuto
職業:デジタルマーケティングコンサルタント
   Webライター、Webマーケティングスクール講師
   事業家(アパレルブランド経営、カフェ・ギャラリー経営)
   合同会社Toiki 代表社員
趣味:アート鑑賞、一人旅、音楽
   ラジオ、伝統・民俗芸能について調べること

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Web制作会社のマーケティング支援部門でWebマーケティングコンサルタントとしてSEO、広告、コンテンツ制作、LPO、EFOなどの手法を元にお客様のWeb戦略のサポートを担当。提案・分析・企画・施策の実施・効果測定まで全て一気通貫で対応できることが強み。その後、Web接客ツール
のベンダー企業にカスタマーサクセスを提供するコンサルタントを経て、現在フリーランスとして独立。

その後、フリーランスのデジタルマーケターとして活動しながら、アパレルブランドの立ち上げ及び運営、リアルイベントの企画及び運営、シェアキッチンの経営、カフェ(飲食店)の立ち上げ及び経営、地域創生プロジェクトへの参画など、活動範囲を広げ、その経験をもとにデジタル領域外のマーケティング活動の支援も対応開始。

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S.Uto
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