とある高齢者との思い出
『お世話になり、ありがとう。大いに頑張って下さい。さよなら』
この写真は
ある高齢の患者様からの自分宛の手書きの今世の別れのメッセージ。
88歳から亡くなられる95歳まで訪問。
開業当初、毎週、往診に行っていた。
書道にも通じたその方は
亡くなられる直前、
わざわざマッサージ師である自分宛にも別れの言葉を手書きで書いてくれた。
現在は
院内での治療が多忙なため往診の新規受付していないが…開業当初は積極的に訪問していた。
その方は
健康状態に問題があるわけではなかったが
ただ、ある時期から食事中にむせ込むことが多く、誤嚥性肺炎をおこしてから痰の量が増え
寝込むことが多かった。
亡くなる前日に、プライベートで
たまたま、その患者様の自宅近くを通りかかったので寄ってみた。
座って少し雑談したあと、
せっかくだから…と施術をしてから
握手をして帰宅した。
何か今日は不思議な眼をしているな…という印象だった。
その日の夜…
深夜3時くらいにご家族から
『おじいちゃんがそろそろ逝きそうだ』と携帯に連絡がありすぐに駆け付けたが
息を引き取っていた。
この方には
『老いてなお、生きることの意味』
を背中で教えていただいた。
なぜ、人は生きるのか?
自分がまだ30代だった頃、仕事において大変なことも、悔しいこともあった。
そんな時でも
この方の施術を通じて…
実はマッサージ師である自分が元気をいただいていたのだ。
大正生まれだったこの患者様は
よく戦争や戦後の話
若い頃の楽しかった思い出話を沢山してくれた。
往診を終えて帰宅するころにはなぜか
不安や気苦労が払拭され
自分の心が安心な気持ちになっていた。
老いてなお、マッサージ師である自分に元気と学びを与えてくれた。感謝の気持ちしかない。
人は二度死ぬ…という。
一回目は肉体の死。
二回目は心の中での死。
この方は今もなお
自分の心の中で生き続けている。