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還暦記念 北アルプス山旅2024〜エピローグ

装備の軽量化について

加齢に伴う体力の低下に対する対処方法として、装備重量を下げることは極めて有効だ。体力の問題は結局はエネルギーの問題に行き着く。なので消費エネルギーを小さくすることで体力の限界に至るまでのマージンを増やせる。

プロローグで書いたように今回は装備重量に真剣に向き合ってみた。超長距離ランやトレランの中でも軽量化はそれなりにやってきたけど、3000m級の高山でしかもテント泊となると装備の重要性が増すので真剣度が数段上がる。

かと言ってULを極めようという訳ではない。料理、お酒、珈琲、快眠のどこにどんな拘りを持つかによって、何を削って何を持つか、どこまで軽量化するかがずいぶんと変わる。一発で答えは出ない。次はあーしようとか、こうしよーとかフィードバックを重ねて、少しづつ自分のスタイルが出来上がっていくのだろう。

それに軽いほど高級素材を使ってるのでたいがいのものは高価になるので懐具合によっても軽量化のレベルは変わる。

それでも軽量化に向き合う意義はある。

やるべきことは装備の重さを一品づつ個々に計ることだ。一品で何百gのものもあるし何gしかないものもある。たった何gでも塵も積もれば山となるので侮れない。

そんな気づきだけでもこれからの登山の役に立つだろう。
勉強代はずいぶんと高くついたが(~_~;)

山の天気予報

山の天気は変わりやすい。5泊6日ともなると旅の間にもお天気は変わるだろう。お天気の判断も体力や装備と同じくらい重要なのではと旅の準備をしていて思った。

この領域も装備同様、30年前とは雲泥の差で技術が進歩している。つまりシュミレーション技術による予測だ。近年のAIの劇的な進化からするとそりゃそうだと思う。山中で電波が届くかどうかの問題はあれど活用しない手はない。

“山の天気予報”という「そのまんまやんか!」というサービスがあることを恥ずかしながら今回の旅をきっかけに初めて知った。
で、旅の直前に、有料動画講座を受講したり無料動画を見まくったりして俄勉強をする。

このサービスの肝は専門天気図だ。このサービス独自のデータに基づくのではなく公的機関が公表するデータを基に、図を使いやすく色付けしたり、独自の計算や評価に解説を加えたりしてくれている。それにしても凄い情報量。普段利用する天気予報とはだいぶ様相が異なる。

“専門”というだけあって、見ればわかるとか読めばわかるというレベルではない。それでも勉強すれば登山に役立てるくらいのレベルにはなりそう。そんなサービスなので万人におすすめするわけにはいかないけど勉強して損はないなと思ってる。

ただし、このサービスは有料サブスク。
いつまで払い続けるかはさておき今回はお金を払った。月550円。使いたい時だけ月単位で払うという選択肢もあるかもしれない。とにかく高いか安いかは使ってみないとわからない。

専門天気図とは、以下のものを指す。

気圧配置・降水
気温・風
高度・渦度
相当温位
ガイダンス

渦度とか相当温位は初めて知った。

これの説明と使い方は興味があれば「山と天気予報」(ヤマテン)のサイトなどネットで調べて下さい。※有料サービスでしか見れない情報が多々あるので悪しからず。

ちなみに専門天気図はこんな図です。
登山じゃなくて日常のお天気の判断材料にも使えそうな気もするし、引き続き勉強したい。

気圧配置・降水
気温・風
高度・渦度
相当温位
ガイダンス(天気)
ガイダンス(雷)

心身の限界について

こんなタイトルだと、還暦だし今回の山旅はむっちゃキツくて「歳とったわ〜」なんてことを書くのが普通かもしれないけどそうではない。5泊6日は過去最長の山旅だったけど、疲れがどんどん溜まっていくこともなく一晩立てばリカバリーできてた。睡眠と食料さえ確保できれば何日でも山旅を続けられそう。
30年前よりも元気かも(笑)
ここでは“限界”について書き留めておきたい。

長時間動き続けることは、超長距離ラン(100km以上)で身体が記憶してるのだろう。累積標高がいくら大きかったとしても、1日に10時間とか20kmとかいうレベルだと、よほどの悪天候でない限り限界に達することは無さそうだ。その限界には実は心の限界と身体の限界がの2つある。そして心の限界は身体の限界よりかなり低いところにセットされている。何故ならば、身体の限界は命に関わるので、生物の本能として心の限界でブレーキを掛ける必要があるからだ。ガソリンタンクのリザーブタンクみたいなもんで、身体を使い果たすまで動いちゃダメだってこと。

そんなこと言っていつも心の限界でブレーキを掛けてたら身体の限界を引き上げることはできない。20歳を過ぎれば体力は落ちていくのだから、意識的に引き上げないと限界は自ずと下がっていく。加齢で心の限界よりも身体の限界が低くなっているのに、心の限界にしたがっていたら突如、故障したり事故を起こしたりする。高齢者の滑落事故が多いのはそういうことだろう。

これを「歳だからしょうがない」で片付けるのは簡単だが、歳を重ねても身体の限界を向上させることは可能だ。この10年くらい、自らの身体で限界テストを重ねて来たから確信してる。(向上とまで言わずとも維持するだけでも下がるよりはかなり良い)

身体の限界を引き上げるにはまず心の限界を突破しなければならない。言うは易し行うは難し。心の抵抗はかなり大きいので(脳を)騙し騙し少しずつだ。つまり、大事なのは、時間を掛けて、交互に、段階的に限界を引き上げていくこと。1カ月とかじゃなくて何年も掛けて。どのくらい掛かるか、どこまで行くかは人それぞれ。今の立ち位置から無理のないところに一応の目標を立てて一歩踏み出せばいい。継続できれば100%成果は得られる。
継続が一番難しいのだけど・・・
だからこそ「継続は力也」なのだ!

そんなことも含めて今回の山旅を振り返ってみる。

室堂から上高地を踏破する中で、まだ登ったことのない北アルプスの山々を見て、いつか登りたいなと思う山にたくさん出会えた。北アルプス以外も含めてたら生きてる間には登り切れないほどの山が日本にはある。なので死ぬまで楽しめる。還暦を迎えてあらためて登山の魅力を再認識した。いったい何歳まで山に登れるのかわからないけど、少しでも永く登り続けられるように心身の鍛錬をこれからも続けようと思う。継続は力也。
もちろん山で死なないためにもだ。

【完】

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