突然の指示で感じた日米の違い 2022年5月20日
今日は久しぶりに荷物がかなり多く、久しぶりに時間内で回り切れるか、配達しながらヒヤヒヤしていた。それでもひたすら休むことなく〝無の境地〟で配達し続け、なんとか最後のマンションに到着したのは20:30。
しかしそこは3棟構成になっている巨大マンションで25件ほどの荷物があった。ちなみにAmazonのルールでは21:30までに配達を終えなければいけない。(常にアプリとGPSで配達状況が記録されているので、誤魔化すことはできない)
さらに追い討ちをかけるように台車が使えなかったり、エレベーターごとに部屋が分かれていたりと厄介かつ複雑な構造になっていて、相当な時間がかかった。やっとの思いで1棟分の配達が終えた頃、Amazonの中の人から電話があった。
「未配が出るといけないので残りは全て宅配ボックスに入れてください」
アプリを通して、常に配達状況を監視されているので自分が時間内に配達し切れるか心配されていたようだ。
「すみません、了解しました...」
お客様の中にはインターホンを鳴らされず宅配ボックスを使われることに対して、不快に思う方もいるだろう。宅配業をしていると直接宅配ボックスに入れられたことによるクレームはよく耳をする。
多少の罪悪感に苛まれながら、残り10件ほどの荷物を全て宅配ボックスに入れていった。その日のうちに荷物を配り切れないのは宅配業としてはご法度とされていて、Amazonの場合は契約解除にも繋がってしまう。
お客様が不快に思う気持ちも分かるが自分にも生活があるので指示に従うしかなかった。明日、直接宅配ボックスに入れられたお客様からのクレームがあるかもしれない。
悶々とした気持ちの車内で去年まで勤めていたヤ○ト運輸とAmazonの違いを考えた。
ヤ○ト運輸ではお客様からクレームは真摯に受け止めなければいけない。やはり良くも悪くも日本企業といったところだ。
それに対し、Amazonの場合はあまりクレームを気にしない雰囲気を感じる。「荷物がその日に届かない」のと「直接宅配ボックスに入れられる」のでは「後者の方がまだマシでしょ」という判断だろう。
これがヤ○ト運輸時代だったら、とりあえず端末のデータ上は業務を終えたことにして、一軒一軒遅くなったことをお詫びしがら配達していたように思う。
ヤ○ト運輸も表面的には労働時間にうるさいが正直なところサービス残業や休日出勤が横行していた。あくまでも自分の観測範囲内での出来事だが...。また自分は委託だったのが、そんな社内の風潮を押し付けられることも少なくなかった。
ただ宅配大手であるヤ○ト運輸も佐○急便も日○郵政も委託ドライバーに頼らないと荷物を捌き切れないのが現状だ。しかし今後ガソリンの高騰に加えてインボイス制度が始まるのでフリーの宅配ドライバーであるメリットが少なくなる。なので自分的には荷物の増加と反比例するようにドライバーの数は減っていくと予測している。
そうなれば荷物が指定日にちゃんと届くとか再配達を何度もしてくれるとか、今現在の宅配品質は保てなくなり、どんどん悪化していくだろう。こういうことは宅配だけでなく日本の各所で起こりそうだ。
政治家が働き方改革とか言い出して久しいが、末端の現場で働く労働者的にはそんな雰囲気はあまり感じない。Amazonのアメリカ的なやり方が正しいかどうかは人それぞれ意見が違うと思うが、もっと「お客様と労働者は平等に人権がある」ということを日本企業のお偉いさんには理解して欲しい。
だが残念ながら日本企業のお偉いさんの多くはおそらく今の旧態依然なやり方でも逃げ切れる世代だろう。なのでしばらくは現在のような〝お客様至上主義的な考え方〟は続くと思っている。主語が大きくなってしまったが、少なくとも自分が携わっている宅配業界はそうだと思う。
だからこそ自分の身は自分で守るため、やはり今みたいな大企業に依存するだけでなく、自分の力でビジネスを展開していかなければいけない。
お客様への罪悪感や日本企業への悲観、そしてこれからの人生に対しての危機感、それらのようなしんどい感情が入り混じりながら帰路についた。
また、改めてヤ○ト運輸からAmazonに移籍して良かったとも思ったが、そう安堵もしていられない。Amazonも今後どうなるか分からないし、良くも悪くも長い歴史のある宅配大手と違って、その歴史が浅い分先行きは不透明だから。
とりあえずここまで長々と書いてきたが、もし宅配ボックスが無かったら今日は完全に詰んでいたので、宅配ボックスがある住宅に住んでいる人には何かしらのインセンティブを付けた方がいいということだけは伝えていきたい。