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目標の決め方

数年前。
ぼくは自分の仕事で目標を決めても達成した事がないと感じる事が多かった。
達成したのかどうかわからない…そんな気持ちがずっと続いていた。

しかし、とある時、元海上自衛官の伊藤祐靖さん(海上自衛隊特別警備隊先任小隊長)の動画を見ていた時に『目標』についての考え方が大きく変わった。

伊藤さんのお話についてはYoutubeなどで配信されているので、ご興味のある方はそちらをご覧いただければと思う。

今回、この記事では伊藤さんのお話を元に、ぼくの「目標の決め方」について書いていきたい。

▼必成目標と望成目標

伊藤さんのお話に出てくる「必成目標と望成目標」という言葉がある。
この違いを聞いた時にぼくは目から鱗が落ちた。

必成目標・・・必ず達成しなければいけない目標。
望成目標・・・できれば達成する、達成出来たらいいなぁという目標。

という「目標」には二つの種類があるというお話だった。
さらに言えば、必成目標はシンプルでかつ、具体的かつ、一つだけ決めるというお話だったと記憶している。

マガジン「演出家の演出術」でよく出てくる言葉「演出目標」も今は、この必成目標の考え方を反映しているつもりだ。

▼それまでの目標の決め方

ぼくは伊藤さんのお話を聞くまで、複数の目標を立てていた。
 [例:〇月の目標]
 1.××を行い、レビューをうける。
 2.月末までに3本以上の原稿をあげる。
 3.売り上げを前月よりあげるように行動する。
と言ったような具合で目標を立てて、すべての目標を達成しようとして、スケジューリングを行い、行動した。

もちろん、今でも生きているのでなんとか仕事をこなし、そこそこの成果も収めてきた結果はある。

しかし。
冒頭にも書いたように目標を達成したように感じなかったのだ。

今から思えば当然のことだと感じる。
上の例でいえば、どれも達成できるような目標ではあるけれども、いわゆる「ゴール」があいまいであり、何を為せば良いのか不鮮明なのだ。
 ・レビューを受けて終わりなわけではなく、そのレビューから何が生まれるか
 ・3本以上の原稿はどのような長さの原稿なのか
 ・前月の売り上げ、稼働時間など比較要素が不鮮明
と言ったように…挙げればきりがないが、非常に抽象的で…行動した後でも果たして「終わったかどうか」が判断できない事が多いからだ。

▼聞いてからの決め方

こうした抽象的でかつ複数の目標を持っていたら…毎日、毎日の仕事の中で迷ったり、余裕がないスケジューリングになったりしていた。

伊藤さんのお話を聞いてから、まず「必成目標」を決めるように心がけた。
・シンプルでかつ、具体的かつ、一つだけ
このルールで決めた。
例えば・・・「〇〇社の原稿を10000字で1日で書く」というモノだ。
これにはもちろん、推敲や校正の後の修正は含まれない。
とにかく・・・この目標に即して行動すると、行動がシンプルになり、思考も本来使わなくて良いこと―――他のスケジュールの心配や次の工程など―――について使わなくなり、目の前の仕事に更に集中できるようになった。

最初は不安で仕方なかった。
上記の例でも分かる通り、具体的にかつシンプルにすることによって…目標を設定する時間はより短くなるし、この目標はもちろん達成するするのだが・・・次もシンプルな目標をまた立てるのかと思うと・・・果たしてこの目標の立て方はよいのだろうかと感じていた。

しかし、それは杞憂におわった。

▼必成目標を立てることに慣れた時

こうして、「短い時間」を対象として必成目標を立てて実行していく中で、目標→実行→達成→次の目標というサイクルが何回か行われた時に、次に試したのが、少し長い時間を対象としたものだった。

・4日間で〇社の原稿、10000文字、推敲まで終わらせる。

というようにした。
つまり、最初の目標は1動作、一つの行動だけで行っていたが、今回の目標では「書く」「見直す」さらに「直す」という三つの行動に増えたのだ。
時間を長くすることによって、行動が増えた形となった。

これもやりやすかった。
つまり、期限、対象、行動と言った各要素を具体的にシンプルに目標に置くことによって「必ず達成させる」目標は期間が長くなろうとも、行動が増えようともわかりやすく、実行しやすい事を体験したのだ。

▼望成目標

次は必成目標の他に望成目標も同時に立てて実行してみた。
望成目標は複数あっても良いと考えている。「できればいいなぁ」くらいの目標だ。
望成目標についても必成目標と同様、シンプルに具体的にたてるように心がけた。
上記の例でいえば・・・
[必成目標]
 ・4日間で〇社の原稿、10000文字、推敲まで終わらせる。
[望成目標]
 ・1日の作業時間は5時間。
と言った具合だ。
作業時間の目安は5時間だが・・・これを守れれば万々歳。守れなくてもいいや、くらいの気持ちで臨んだ。
大事なのは必成目標の方だ。
実際、行動していて・・・結果として望成目標も達成できることもあれば、望成目標が達成できない事もあった。

しかし、以前のような「達成したのかどうかわからない」気持ちにはならなかった。

▼目標を達成できなかった時

伊藤さんのお話を聞くまで「目標を達成できていない」気持ちが多かったので、その目標に対しての作業のやり方や量にたいしての振り返り、反省についてもどこか抽象的な反省で終わっていた。
「次は量を減らそう」
「次はスケジュールをのばそう」
などなど…

だから、また、抽象的で複数の目標を立てる事になり、仕事がうまく行かない事が多かった。

必成目標・望成目標の分け方をしてからというもの、必成目標については達成することが多くなったし、もし、達成できなかったとしても、どこが原因なのか具体的に把握できるようになってきたように感じている。
それは、期間なのか、量なのか、範囲、工程なのか…などなど目標自体がシンプルで具体的にしているから、「できなかった」ということについて、「ここがダメだったのか」という部分が具体的にわかるようになってきたのだ。

望成目標についてもそうだ。
シンプルに具体的に立てているので、「達成できたかどうか」の判断は容易につくし、もし達成できなくても原因はすぐに把握できた。

▼気持ちの問題

必成目標・望成目標の種類をわけて目標を立て、仕事をするようになってからというもの、気持ちがだいぶ楽になってきた。
つまり、達成すべき目標は一つであり、他は「まぁ、できればいいかなぁ」というような気持ちでいられるからだ。

伊藤さんのお話を聞くまでの、それまでのぼくは、やっぱり欲張りな人間だから「これもあれも」取ろうとして・・・めちゃくちゃな、本当にほしいものをぼやかす目標の立て方になっていたのだな、と感じている。
一つの目標に向かっているつもりで・・・そうではなかったのだ、とこの分け方をしてから強く実感している。

▼目標の立て方

もちろん、この記事を読んでくださっている皆さんに全てが全て当てはまるとは思っていない。

がしかし、試したいと思っていただいた方に少し。
どんな仕事、勉強でもそうだと思うのですが・・・時間ややる事はその仕事や勉強によって違うとは思っています。
しかしながら、「必成目標」はその仕事・勉強に対しても
 ・具体的でシンプルで一つ
 ・期限、対象、行動の要素で決定する
といったルールにそって決めることで色々な仕事・勉強にも適応できると考えています。

▼さらに

ぼくはこの目標の分類の仕方が非常に気に入っている。
しかし。
この他にも良いやり方がるかもしれない。
また迷ったり、仕事に滞りなどを感じたら…この分類方法を変えるかもしれないし、進化させるかもしれない。
常に実験の途中だと考えている。

▼伊藤祐靖さんの本

この記事に何度もお名前を出させてもらっている伊藤祐靖さん。
ぼくが尊敬する方の一人だ。お目にかかったことはない。
以下に伊藤さんのご著書の一つを紹介するが、当然ながら利害関係もないことを断っておきたい。

この本は元海上自衛隊の特別警備隊先任小隊長だった伊藤さんのご経験をもとに日本が真っ先に取り組むべき「邦人奪還」について小説として書かれたものだ。
非常に面白く、ぼくは1日、集中して読んでしまった。

必成目標・望成目標も・・・この本の中にエッセンスとして入っているように見受ける。
国民の生命と財産を守ってくれる自衛隊だからこそ、命にかかわるからこそ、その任務は崇高で「必ず達成しなければいけない目標」という考え方ができるのだとこの本を拝読し改めて感じた。


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武藤賀洋
舞台演出家の武藤と申します。お気に召しましたら、サポートのほど、よろしくお願いいたします!