女にゃ勝てない。
最初に申しておきますが…この記事はフェミニスト云々ということではなく、ぼくが舞台演出をする上で大切に思っていることを書くつもりです。
結論から申せば、ぼくは女性を非常に尊敬しています。
それは産み出す力を持っているからです。
▼産み出す力
世の中には男と女が居ます。
世界中の生物の中には例外もあるかもしれませんが…人間で言えば、女性には「産み出す」力が備わっていると認識しています。
男にはない、「子を産み出す力」です。
この「産み出す」力を持つ女性にぼくは創作において勝てる気がしないのです。
▼色々な舞台やドラマを見ると…
色々な舞台やドラマ、映画を見ると…ぼくが好きだなぁ~とかいいなぁ~と思う物語の多くは、脚本や原作を女性を務められている事が多いです。
極端な事を申せば物語を産み出すのは女性が向いているのではないか、と思うほどにぼくが好きなドラマや舞台、映画は…女性が原作や脚本のものが多いのです。
とは言え…ぼくが今までやってきた、シェイクスピア作品、ギリシア悲劇の作者は男性だったりします。
もちろん世の中には…色々な作品があり、素敵な物語の原作者・脚本家は男女を問いません。
▼女性の力
ただ…ぼくが今まで行ってきた演劇活動の中で、作・脚本・役作りなどなどについて「女性に勝った」と思う事はありませんでした。
ぼくは「芸術に答えはない」と考えていますので、そもそもが勝ち負けなどないのですが…それでも感覚で「女性には勝てないなぁ~」と思っています。
それは「産み出す力」がぼくにないだけなのかもしれません。
ぼくが多く演出を務める劇団新和座でも女性座員が多いですし、ぼくは、彼女たちに「創り出す」ということにおいて、今までずっと助けられてきたと感じているのです。
男性は育てることはできます。
だからそこに在るものを育てていくことはできると考えていますし、作品を創り、育てることにおいては男性の力は何倍にも発揮されると考えています。
無論、女性も育てる事はできます。ですので、作品や役に向かい合いその力を何倍にもしていくものだとも感じています。
これは・・・ぼくだけなのかもしれませんが・・・
「作品を産み出す」という行為、「作品を育てる」という行為を考えた時に…ぼくには産み出す力はないなぁ~と思っています。
無論、現在の仕事で「何かを創り出す」ということをしているわけですから、そういった意味では「産み出す」ことはできるのかもしれませんが…まるっきり「無」、何もないところから何かを創り出したことというのはないのかもしれません。
そこにはアイデアとか下敷きとか…何かのきっかけがあって…「産み出す」というよりも育ててきた方が多いかもしれません。
▼無から創り出すこと。
もちろん、女性も「まったく何もなかったら創れない」ということもあるかもしれませんし、男性も「何もないところから創り出せるぜ!」という方もいらっしゃると思います。
「女性は無から創り出せる」
というのはぼくの思い込み、ぼくだけの経験の話なのかもしれません。
しかしながら…男にはない、女性の強さ、賢さ、弱さ、脆さ…そういったものを作品の中に入れることができるのは女性の方が向いているような気がしてならないのです。
そして、その「無」から創り出されたものを想像して創造していくことに、男性も女性も心血を注いでいくからこそ、「舞台作品」が出来上がってくるとぼくは考えています。
▼男女が協力して・・・
物語の多くは人間関係、そしてその愛が詰まっているとぼくは考えています。
その「愛」は男性特有のものもあれば、女性特有のものもあり、また男女の区別なく人間共通のものもあると思います。
こうした「愛」を物語にする上において…男女が協力していく事が大切だとも考えています。
男性の固有の能力、女性の固有の能力があり、持っていないところを互いに補い合うからこそ、素敵な作品ができると考えています。
演劇というものは太古の昔からやられていて…今も技術革新、演技の方法の変化、演出の方法の変化などはあれど、その多くは過去からずっと守られてきたものが土台になっている場合が多いと感じています。
そうした土台の中で・・・今活動している劇団やプロジェクト、カンパニーが多くの新しい挑戦をして行っていると感じています。
▼挑戦の中で・・・
この記事はマガジンの「演出術」のカテゴリの記事ですので…今回の話で何が言いたいか、と言うと…
舞台作品を創り出すのは色々な技能が必要であって・・・
その技能は男女の区別はないけれども、男女の特性、固有の能力は互いに補う必要があるのではないか、と考えているということです。
つまり、脚本は男女区別なく書くことができます。
向いている、向いていないというのはあるかもしれませんが…女性特有の感性、男特有の感性があったり…
演出においても、所作やしゃべり方についても男女の特性によって、演出のオーダーの内容が変わってくると思っています。
しかし、作品創りでは特別な事がない限り、同じ職種に男女二人がつくことはまずありません。
それは多くの人がかかわる舞台では混乱の元になってしまいます。
しかしながら、作品創りという挑戦をしていく中でお互いの職種はもちろん、自分の性ではない人々の感性や意見、特性というのを大事に考える事で新しい「価値」や新しい「方法」、新しい「考え方」が生まれてくるのです。
これはぼくの経験則の話ですが…
昔は「女の感性なんか信じられるか!」と思ってやっていた時期があります。先輩・後輩関係なく、女性のいう事は聞いていても…右の耳から左の耳でした。聞いているフリをしていたのでしょう。
しかし、ある時に女性の先輩からアドバイスをもらった時に(その先輩が大好きだったということもありますが)素直にそのアドバイスを取り入れたら…(ぼくにとって)新しい演じ方を発見したのです。
これは非常に大きな出来事でした。
その後も舞台演出をするようになってからも、先輩、後輩、そして今の仲間たち、女性・男性の区別なくアイデアをもらうようにし、それを作品に反映させることは多いのです。
▼ぼくにはない考え
そして、女性からもらうアイデアやアドバイスは…ぼくが考え付くことのないモノが非常に多いのです。
男性同士だから分かる、という話ももちろんあるのですが…
女性からもらうアイデアやアドバイスは…なんというか次元が違うことが多いのです。
ぼくは改めて「産み出す」力をもつ女性の偉大さを感じ、尊敬しています。
そして、舞台作品を創る、ということにおいて…
たくさんの職種がかかわり、男女ともにその特性と能力を生かし、役割を全うすることでより素晴らしい作品に一歩近づくのだと考えています。