舞台の音を考える
▼舞台の音
こちらの記事で、「舞台デザイン(設計)」について述べました。
・最終シーンをどのように見せたいかを考える
・衣装、メイクのイメージ、台本に即した舞台空間をイメージする
・舞台の色を考える
をそれぞれ述べてきました。
今回は舞台デザイン(設計)で考える事の最後、「舞台の音」について述べて参ります。
▼音で表現できること
前回までの記事でも述べました通り、既に最終シーンのイメージが出来上がっておりますので、そこに続く「音」を考えていく必要があります。
音響家、音楽家の方にまたも笑われてしまうかもしれませんが…
ぼくが把握している舞台上にて「音」で表現できることは…
・音の大きさ(強弱)、範囲
・音の高低
・音の方向
・音のタイミング
と考えています。
もちろんこの他にも表現できることはあるとは思いますが…
ぼくが舞台デザイン(設計)をするときには、この4つについて考えるようにしています。
▼音の種類
舞台上で聞こえる音の種類は大きく分けて次の3つだと考えています。
・俳優さんのセリフの音声
・効果音
・背景音(BGM、Background sound)
これらの音がどのようにして融和し、且つ、お客様にお聞きいただけるか、ということを台本を元に構想を練ります。
音の方向、強弱、範囲などなどを考えていくときに、やはり大事になってくるのは「演出目標」です。
この演出目標に沿うような選曲、音の作りこみ、セリフの発し方を音響スタッフや俳優さんに依頼するわけですから、演出目標から大きく逸脱したものは本末転倒になってしまいます。
▼やはり・・・
「照明を考える」記事でも申しましたが、
実際の音響設計とオペレーションは音響家の方が行う事が多いです。
ですので、演出家が、いちいち、その表現方法において口出すべきではないと考えています。
前述したように、「依頼」がはっきりしていれば、音響家の方もイメージを膨らませてくれて、素晴らしい「音」ができると考えています。
とは言え、音の好みも千差万別です。
ですので、音のタイミング(フェードインなのか、フェードアウトなのか、カットインなのか、カットアウトなのかなど)は、入念に打合せが必要だと感じております。
また、音の大きさや響きなどは劇場によって異なりますので、劇場に入ってからの確認も必須です。
もちろん確認作業も事細かにやる場合もありますが…基本的に演出が考えることは、基盤の音量、最低値の音量、最高値の音量がどれくらいかです。これらを現場で伝えることで、音響家の方がスムーズなオペレーションができると考えています。
また、照明と同じで、音楽イメージに合わせて俳優さんに動いてもらうところもあれば、俳優さんの動きに合わせて効果音、背景音が変わることもあります。
▼無音という音
また、物語によってはいわゆる「無音」という選択肢もあります。
もちろん厳密には無音になることはありえません。俳優の呼吸音もありますし、会場によってはエアコンの音などもあると思います。
しかし、世界観としても「無音」という選択肢をとる場合もあります。
だれもしゃべらない、何もならない…というような。
この時、ぼくが気を付けているのは、「本当に」無音の必要があるのか、ということです。
お客様は台本をお持ちではありません。物語の進みなどご存知ないのです。
そこで…誰もしゃべらない、何もならない・・・ましては誰も動かない空間が存在する意味があるのか考えます。
無論、必要であれば、「無音」という選択肢をとります。
▼音はそれだけでなく…
劇場内で聞こえる音はこのほかにもあります。
お客様の呼吸音、場合によっては咳払いや笑い、拍手などなど…
また、会場の外から聞こえてくる緊急車両の音などなど…
そういう音があることも押さえておかなければなりません。
もちろんこれらを、物語の中に取り込むことはあっても・・・
「邪魔」などと思うことは以ての外です。
こうした音はいつ発生するかわかりません。わかりませんが…これらの音を物語に取り込まないのであれば・・・これらの音に影響されない(されるとしても良い反応として)舞台空間を構築する必要があると考えています。
▼次回は・・・
次回は、「拠り所にするもの」というテーマでお届けする予定です。