いつもの天体撮影〜画像処理 (1) 機材編
天体の撮影をしてみたい、画像処理もやってみたい。
という人は多いと思いますがいざ手を付けようと思ったら「何から初めていいか分からない」「撮影はできたけど画像処理は分からない」という人は多いと思います。
そういった人にとって細切れの記事ではなく、一気通貫となるような情報として参考になればと思って文章にしてみようと思いました。
あくまでも私の機材とソフトウェアを前提として、準備から撮影・画像処理のやり方を書こうと思います。
しかし基本的な考え方や流れは別の機材でも大きく変わらないと思うので参考にしていただけると思います。
内容としては以下のようなことを書いていこうと思います。
使用機材
撮影前準備
撮影手順
画像処理
これらは書いているうちに増えたり変えたりはするかもしれません。
あと最後の画像処理編は途中から実験的に有料記事にするかもしれません。理由としては画像処理ソフトウェアは常に高度化し更新されていきます。それに従って画像処理手順も日々更新しています。画像処理の記事はそれに追随して更新しようと思っているからです。それは一定の価値のある情報と考えられます。(Youtubeはその時のソフトの状態で止まるから)
長くなってますが目次はこんなかんじです。
気になる所だけ読んでもらうでも良いかと思います。
使用機材
まず天体撮影に使用する機材として必須なものとして以下があげられます。
赤道儀&三脚
メイン鏡筒
メインカメラ
ガイド鏡
ガイドカメラ
撮影制御装置(PCやASIAIR)
ポータブル電源
これらに加えて有ったほうが良いものとしてこれらを使っています。
カウンターウェイト&シャフト
ハーフピラー
フィルター
フィルタードロワー
フォーカサー
レンズヒーター(メイン鏡筒用)
レンズヒーター(ガイド鏡用)
上記の機材についてそれぞれ具体的な製品や使用の目的などを説明していきます。(順番は説明しやすい順序になります)
撮影制御装置
天体撮影を行うには通常のカメラと違い、カメラそのものには撮影を制御する機能が持たされていません。そのため撮影(撮像)するためにはPCやASIAIR(小さなPC)のようなコンピューターが必要となります。
ZWO ASIAIR Plus
私は各機材全体の制御をまとめて1つのソフトウェアで行うことができるZWO社製品のASIAIRを利用しています。以前はMacbookにWindowsをインストールし、SharpCapやPHD2を使っていましたが今はASIAIRにまとめる選択をしています。
ASIAIRというのは赤い小さは箱のようなもので、これが小さなコンピューターであり天体撮影機材をまとめて制御できる機械です。
使用する際にはASIAIRとスマートフォンを専用アプリで接続して、アプリ上ですべての操作を行います。
ASIAIR Plusともう1つASIAIR miniも持っているのですが、大きな違いはUSB規格でPlusはUSB 3.0 × 2 + USB 2.0 × 2で、miniはUSB 2.0 × 4となっています。これはカメラのセンサーサイズがAPS-Cやフルサイズになると撮影された画像が大きく、転送速度が必要になるのでPlusが推奨されることになります。
またASIAIRにはDC12Vの出力が4つ有り、そこから赤道儀・冷却CMOS・レンズヒーターなどに電力を供給することができます。これにより機材のケーブリングがシンプルになり、ケーブルを引っ張ることによる転倒や抜線のリスクが抑えられます。
たまにこの出力があるのにポータブル電源から分岐させてる人がいますが、それはASIAIRへの電力供給の安定性を下げるのでやめましょう。
赤道儀 & 三脚 他(AM3 etc)
赤道儀は地球の日周運動に合わせて地上から星を追尾する機械です。
私はASIAIRを使い始めた当時はポータブル赤道儀(SWAT-350)で使っていたのですが、赤道儀を買うときはASIAIRとの相性がいいものをと考えていました。
そこで2023年にZWO AM3が発表された際にすぐに購入して非常に安定して利用ができています。
実物としてはこういった構成になっています。
ZWO AM3
ZWO社の波動歯車赤道儀でAM5の弟分となるAM3という製品です。
2023年5月に発表されて、入手できたのは2023年9月でした。
製品の特徴としては何と言ってもZWO ASIAIRとの完全なる親和性ですね。他の赤道儀であれば部分的に機能が動作しない(またはしないかもしれない)などのリスクがあるのですが、ZWO製品なのでそれがありません。
ASIAIRからUSBケーブルと電源のDCケーブルを接続するだけで、あとはすべてASIAIRから借りてきた猫のように大人しく言う事を聞くようになります。オートガイドのケーブルすら要らないのでものすごく楽です。
私がカスタムという程でもないけどAM3にほどこしていることは、棒タイプの水準器を両面テープで貼り付けていることです。
こうすることで三脚の足で水平を調整するときにしゃがんだまま横から見て調整ができるので、スムーズに水平を出すことが可能になります。(おすすめ)
鋼の柱君ライト
これはハーフピラーというものでカッコイイから買ったというのが一番大きな理由ですが、本来はハーフではないピラーがありその目的は長さの長い鏡筒が向き(特に天頂付近)によっては三脚と干渉してしまうために取り付けるものです。
私の鏡筒はそこまで長くないのでなくても大丈夫なのですが。。。はい、カッコイイから買いました。
カウンターウエイト&ウエイトシャフト
これは赤道儀に乗せる鏡筒がある程度重たいものになるので、安定した追尾を行うことと、向きによって三脚から含めた全体のバランスを取って転倒などを防止するためのものです。
波動歯車赤道儀であれば追尾精度に関してはカウンターウエイトが必須ということはないのですが、やはり転倒は避けたいですからね。
TC40&漬物石
三脚はZWOの純正でAM3と一緒に買ったTC40というカーボン三脚です。一般のカメラ用三脚でももちろん良いのですが、私はせっかくなので揃いのものをということとで買っています。
天文用の三脚の良いところは機動性は無視して、三脚の足が完全に開いた状態で固定されることです。
あとこの三脚は最初からストーンバッグがついていて、ホームセンターで買ってきた5.5Kgの漬物石を置いています。サイズがちょうどよかったのでお気に入りです。
メイン鏡筒 & メインカメラ
William Optics RedCat51 II
通称「赤猫」口径51mm、焦点距離250mmの撮影向けの鏡筒です。
この前にFMA180やFMA135を使ってたのですが、もうちょっと寄って撮りたいと思い値段も手頃なこちらを買いました。宮崎の五ヶ瀬でオリオン大星雲を撮ったときにその構造の繊細さに感動しました。
ZWO ASI294MC Pro
大事なことなのですが「ASIAIRは天体撮影カメラはZWOのカメラしか対応していません」なので、ASIAIRを買ったタイミングでメインカメラをPlayerOneからZWOへ移行しています。
AliExplressで買ったM42ねじ用のキャップ便利です。
そしてたしかM&Mさんのポストを見て真似してるんですが、棒タイプの水準器を2つ付けています。
これは撮影の際に縦構図・横構図を正確に合わせるためです。これがあれば赤道儀のホームポジションで概ね0度または90度に合わせることができます。
フォーカサー
ZWO EAF
ZWOの電動フォーカサーです。必須ではありませんが、これが有るとピントを確実にあわせられるし自動放置撮影の助けになるのでかなりおすすめです。
RedCat51 IIにはこのようにベルトで動かすように取り付けています。
EAFを使うとASIAIRのAF機能が有効になり、星の一番小さくなる所を探索して確実に合わせてくれます。また長時間撮影していて外気温が下がってピントがずれてくると自動的に合わせなおしたりもしてくれます。
フィルター&フィルタードロワー
Antlia ALP-T Dual Band 5nm Ha&OIII Filter
フィルターは色々あるのですが、このフィルターが一番使っているフィルターになります。
これを含めて以下3枚のフィルターを使い分けて撮影しています。
Antlia ALP-T Dual Band 5nm Ha&OIII Filter
Antlia ALP-T Dual Band 5nm SII&Hb Filter
IDAS HEUIB-II
フィルターについては以下の記事でも触れてるので良かったら参考にされてください。
ZWO Filter Drawer
フィルタードロワーは複数のフィルターの交換を簡単にするもので、鏡筒とカメラの間に取り付けるものになります。
3枚のフィルターを使い分けているため、これが無いとちょっと不便です。
ガイド鏡 & ガイドカメラ
SVBONY SV165 & ZWO ASI120MM Mini
大事なことなのでもう一度書きますが「ASIAIRは天体撮影カメラはZWOのカメラしか対応していません」はガイドカメラについても同様です。
なのでガイドカメラもZWOのカメラ担っています。
ガイド鏡とガイドカメラについてはそんなにこだわりはなくて、ポーターブル赤道儀時代に「よしオートガイドを始めよう」と思って天文ショップTOMITAに行って置いてあったのを買った感じでした。
レンズヒーター
SVBONY SV192
レンズヒーターはめちゃくちゃ重要です。
これがないと撮影している間に鏡筒のレンズが曇ってしまって使い物にならなくなりますからね。
こちらじゃなくても良いのですが、私がこれを使っている理由は電源がDC12Vでの接続が可能な商品だからです。これを利用すればASIAIRのDC出力から電源を取ることができるし、ASIAIR側から出力を調整することもできます。
迷人会工房 あったか君 AT-01
あったか君はガイド鏡用のレンズヒーターです。ガイド鏡用は世の中にこれしか無いんじゃないかな。こちらもDC12V化したいところですが、部品調達の兼ね合いで今すぐは難しいらしいです。
コードを切って12V→5V高圧チップをハンダ付けして挟むことも検討しています。
ポータブル電源
Anker 521
どれを買ったらいいか分からなくてお求めやすいものを買いました。
今のところ夏に一晩撮影で使っても残20%くらいまでで済んでるので今のところ困ってはいません。
次に買うとしたらEchoFlowのDC出力がシガーソケットだけでなく、5521のDC出力ポートが最初からついている製品にしようと思っています。
これからポータブル電源を買う方は「冷却CMOSカメラのセンサーサイズによって、冷却するための消費電力に差がある(大きいほど使う)。」ことを意識して選ぶと良いと思います。
配線図
最後に配線図です。ASIAIRや冷却CMOSを使うときに配線に悩む方は多いみたいで参考になればと思います。
具体的にはこんな感じで配線しています。
重要なポイントが1つあって「赤経軸から下に伸びるケーブルが電源ケーブル以外に無い」ということです。
これは赤道儀で鏡筒をあっちに向けたりこっちに向けたりしても、上にあるケーブルはどの方向にも引っ張られることが無いということです。
これを注意しておけば意図しない抜線や転倒のリスクが下がります。
おわりに
思いの外にボリュームのある記事になってしまいました。
まだまだ先は長いので斜め読みだけでもしてもらえたらと思いますし、キーワードだけ覚えておいてもらって何かのときにまた読んでもらえたらと思います。
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