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災害と看護師養成

災害と学校教育機関

日本の看護師養成は高等学校専攻科や専門学校、大学で行われている。

そして、大規模災害が起こり、避難所の設営が必要となると日本ではその避難所として学校施設が使用されることが多い。当然、看護師養成機関にも被災者が多数避難してくることは想像に難くない。

とくに看護師養成機関には医療機関で使用しているものと同じベッドが演習用に設置されており、何より教員や学生に看護師免許や准看護師免許、保健師免許、助産師免許、医師免許を有している者がいるために「要支援者」のニーズに応えうる、と社会から期待されよう。

体育館や講堂、演習室(病床、在宅看護演習室など)、各教室などが長期に渡って避難所として使用されることになると養成機関、つまり学校教育機関としての本来業務である教育・研究は休止せざるを得なくなる。また、有資格者の教職員・学生の学外での活動も社会から求められることになる。

養成の営みの継続は

発災後しばらくは教職員も学生も生活再建の途上で、教育・研究どころではないが、看護師養成機関は毎年度学生に卒業と同時に看護師国家試験受験資格を与え、看護専門職者を社会に送り出すという社会的使命を持つ。

医療機関側も毎年度新卒者の入職を看護職員の確保のため期待している。いわゆる病院奨学金制度を設けている医療機関も少なくない。

2024年1月の能登半島地震では高校受験を控える中学生の集団避難が行われたが、それよりも大規模かつ広域の災害が発生した場合、看護師養成の営みはどのようにして継続できるだろうか。2022年の看護師国家試験では、新型コロナウイルス感染症の影響により受験できなかった学生への追試といった救済措置が講じられなかった(医師、助産師、保健師、薬剤師、介護福祉士等の医療系国家試験も同様)。

大災害への対策は社会の復旧・復興まで見越して事前に立案されていなければならない。学びの機会の保証(修学期間の延長をやむなくされた場合の学生への緊急奨学金制度など)や受験機会の保証、医療提供体制の維持(マンパワーの面から)の議論が深められていることを願う。


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