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写真を撮ったり、文章を書いたりしています。

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    撮った写真とそれにまつわる文章。

最近の記事

メンヘラを自称する人たち

 唐突な話になるが、メンヘラという言葉も、それを自称する人たちも好きではない。  そもそもメンヘラという言葉の発祥というか、語源も知らなかったので調べてみると、2ちゃんねらーの間で「メンタルヘルス板にいるような人」のことをメンヘラーと略して呼ぶようになったことがそもそもの始まりだそうだ。  もともとは「精神的な病を抱えている人、その傾向のある人」を表すこの言葉が、どのようなきっかけでここまで一般的?に使われるようになったのかは分からないけれど、今では性格に(多少もしくはかな

    • いちばんいい時計の話

       彼女はそのとき僕に、「いちばんいい時計」の話をしてくれた。  それは彼女が以前テレビか何かで見た話で、なんでそんな話になったのかは忘れてしまったけれど、不思議と僕の心にずっと残っている。  紛争地や戦闘地域で戦う戦士たちは、ときに敵の捕虜となってしまうことがある。捕らえられ、身体の自由を奪われ、暗くて狭いほら穴のようなところに閉じ込められてしまう。明かりなんてものはなく、太陽の光も届かず、見渡す限り真っ暗だ。暗闇は、人から時間の感覚を奪う。1分が1時間に感じられ、1時間が

      • 写真を撮る理由

         何かものを作ったり、表現活動に携わる人たちに昔から憧れていた。ミュージシャンや作家、デザイナーなど、いわゆる自分の「作品」というものを持つ人たちだ。  自分もそうなりたくて、ギターを始めてバンドをやったり、絵を描いてみたり、建築を学んだり、デザインの学校に行ってみたりしたけれど、どれひとつ、何ひとつ続けることができなかった。ほんとうに、何ひとつかたちにすることができなかった。  それでも、「ものを作る人、表現活動をする人」に対する憧れは未だに自分の中に厳然と存在していて

        • LOST OF MIND

           自分は精神的に不安定になるとお酒に走る傾向がある。いちばん酷かったときだと、仕事から帰ってきたらまずウイスキーを瓶ごとラッパ飲みし、休みの日も午前中から飲酒していた。どこかに飲みに出かけるのではなく、自分の部屋で、淡々と、黙々と飲んでいた。お酒を飲むことで少しでも気分を紛らわせたい、嫌なことから目を背けたいという欲求にとても正直に反応していた。  でも、そういった精神状態のときに自分が心の底で思っていたことは、「自分を失いたい」ということだったように思う。自分を失いたい、

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        • 備忘録
          7本
        • Photo
          2本

        記事

           窓外から聞こえてくる雨音で、ひどくリアルで生々しい性的な夢が中断された。作家の村上龍は、見た夢の内容をメモとして書き残し、小説のアイデアとして活用しているらしい。自分の夢は常軌を逸しておもしろい、と書いていた。  ときどき、忘れたくない、もっとその夢の中に留まりたいと思うような強烈な内容の夢を見ることがある。覚醒しても現実と夢との境目が分からず、しばらく放心状態となってしまうような夢だ。自分も一時期、そういった印象的な夢は日記に書き残すようにしていたのだけれど、馬鹿馬

          笠井爾示という写真家

           東京から戻る新幹線を待つ間、少し時間があったので銀座の蔦屋書店に立ち寄った。蔦屋書店はいちばん好きな本屋で、普通の本屋ではまず目にすることができないマニアックな本も取り扱っているし、何よりお店の雰囲気が良い。特に写真集の取り揃えは豊富で、中身を見られるようになっているものも多いので嬉しい。  時間潰しのつもりで入ったので、特に目当ての本などはなかったのだけれど、たまたま通りがかった棚に笠井爾示(かさい ちかし)さんという写真家の写真集が平積みされていた。  『東京の恋人』

          笠井爾示という写真家

          FUJIKINA 2017 京都

           これは以前べつのところで書いていた文章の再掲です。  窓ガラスに付着した雨粒が、すれ違う電車のライトに照らされてキラキラと光っている。次の瞬間には、何もなかったかのようにワイパーがその痕跡を消し去っていく。隣では、夜勤明けにもかかわらず朝早くから京都行きに付き合ってくれた同行者が居眠りをしている。雨は途中から雪に変わった。  鴨川を見るたびに、なんてランニングのしやすそうな場所だろうと思う。信号は無いし車だって通らないから、何かに妨げられることなく走ることができる。穏や

          FUJIKINA 2017 京都

          東京に行ったら必ず訪れたい写真展

           来週末から仕事がお盆休みに入るので、2泊3日で東京に遊びに行くことにした。6月に行った際はソール・ライター展に行ったので、今回も何か良さげな写真展をやっていないかと調べてみると、2つ気になるものを見つけた。 1.石川直樹 写真展「いつでもどこでも写ルンです」リンク:石川直樹 写真展「いつでもどこでも写ルンです」  石川さんは極地を旅する探検家なので、そういった極限状態でも問題なく動作し、すぐさまシャッターを切れる写ルンですを重宝し、よく携行するそうだ。詳しくは以下のイン

          東京に行ったら必ず訪れたい写真展

          精神を落ち着かせるための具体的な方法

           清潔にするという行為は、集中力を高めたり精神を鼓舞する効果があるのだと、作家の村上龍が小説やエッセイの中で何度か書いていた。なんでも、軍隊やゲリラのマニュアルにも書いてあるのだそうだ。  僕はこのエピソードというか考え方が好きで、普段生活する中でも意識するようにしている。例えば、何だか無性に気持ちがざわついて落ち着かないときや、わけもなく不安になったりするときには、掃除をしたり、洗濯をしたり、風呂に入ったりして、自分とその周りのものを清潔にするように心がけている。そういっ

          精神を落ち着かせるための具体的な方法

          人はなぜ廃墟に惹きつけられるのか

           先週末の土曜日、仲の良い友人たちと地元で行われる祭りに向かっていた。祭りと言っても大したものではなく、田舎の駅前の商店街で催される清涼祭のようなものだ。その日のメインイベントはその祭りではなく、幼馴染夫妻の家でつくる広島焼きだ。ただ、せっかくだからちょっとだけ見に行こうよと、歩いて出かけることにしたのだった。  シーズンになると釣りを楽しむ人たちで賑わう川沿いの道を、こっちの方が近道だからと下っていく。間違いなく車はすれ違えないであろう細い道々の両側に民家が立ち並ぶ。当た

          人はなぜ廃墟に惹きつけられるのか

          早朝のコンビニ

           私ね、早朝のコンビニがとても好きなの、と彼女は嬉しそうに言った。  ほら、朝早くからどこかに旅行に行くとき、コンビニに寄ってコーヒーや朝ごはんを買ったりするじゃない。店内には自分たちと店員さんしかいなくて、外はまだ薄暗いの。そんな、早朝のコンビニが私、大好きなの。  新しいおもちゃを買ってもらった子どもみたいにキラキラとした目でそう話す彼女を見て、そういう感じはなんとなく分かると僕は答えた。    自分は今、どこかへ向かおうとしている。夜が明けようとしている。ときおり前の

          早朝のコンビニ

          写真を撮るのが上手い人は文章を書くのも上手い説

           写真家、森山大道の『もうひとつの国へ』というエッセイを読んでいる。  この本の帯には、こんな一文が添えられている。 「火曜日、記すべきことなし、存在した。」というのはジャン・ポール・サルトル「嘔吐」の中のワンフレーズである。  僕はもう、これだけでご飯3杯くらいいけてしまうくらいこの一文にやられてしまった。  これは森山大道がフランスの哲学者の言葉を引用している文章であり、彼自身の言葉を綴っているわけではない。しかし、どんな言葉を、どのタイミングで引用するのかという

          写真を撮るのが上手い人は文章を書くのも上手い説