その3Dプリンタ製クッキー型、違法です
本文に行く前に
この記事は個人の推測に基づく内容となっています。
気軽に書いてみた結果、予想外の大反響となってしまい、保健所に正式な見解を求めました。
その内容については別記事でまとめているので、ご参照ください。
それでは続きをどうぞ。
3Dプリンタで作るクッキー型って楽しいですよね。
市販にないデザインの物があったりして、私も家でプリントしてクッキーを焼いたりしてます。
また副業としても人気なようで、見栄えが良いし、参入のハードル低いし、気になる商材ですが…
世に出回ってる3Dプリンタ製クッキー型の大半は食品衛生法違反です!
多分。
今回はそういうお話です。
食品衛生法で言う「器具」と規格
調理の際、食品に直接接触する物は食品衛生法で「器具」と定義されます。
その器具には一般規格というものがありまして
と、まぁこういう感じで含有しちゃダメな物が決まってるわけです。
じゃあ、どうやって含有していない事を確認するのか?
もちろん試験をするわけですねぇ~~。
「器具」に必要な試験
器具の材質が合成樹脂の場合は
・カドミウム、鉛の含有量の測定
・重金属、有機物の溶出量測定
これらが必要ですし、
ポリ乳酸(PLA)の場合は
・総乳酸、蒸発残留物の溶出試験
これも必要になります。
複数の材料を使うなら材料毎に試験が必要です。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000176711.pdf
こんなお金がかかって面倒くさい事をやってたら採算が合うわけありません。
なので、基本的にWebで売ってる3Dプリンタ製クッキー型は違法です!知らんけど。
多分ちゃんとやってる人は「試験して食品衛生法適合してます!」って書いてると思います。付加価値なので。
※記事公開後に「試験をしてない事が違法ではない」「販売者は食品衛生法適合であると説明義務がある」等のコメントを頂いたので、記事後半に追記しました
合法的に作るなら
都度試験するのが無難な流れですが、試験用サンプルを出力した3Dプリンタはもうその材料しか使えなくなってしまうので現実的ではありません。
で、あれば外注するという手があります。
国内の3Dプリントサービスとして大手のDMM.makeなんかはちゃんと試験成績書を公開してます。えらい。
めっちゃ高いけど。
食品衛生法適合な水洗いレジン「エキマテ」というのもあります。
ただし、材料が食品衛生法適合というだけで、3Dプリンタ本体や製造環境を含めた最終製品に対して試験が必要なはずなので、エキマテ使えば試験不要で合法かというと多分そんなことはないです。ちゃんとやりたい人は保健所に聞くべき。
(ただ、食品衛生法適合レジンという点では安心安全な素材なので、クッキー型に使うかどうかは別として、小さいお子さんがいるご家庭なんかでは安心して使える上に、廃液を下水に流せる点も良し)
FDM向けのフィラメントとしては北陸エンジニアプラスチックからPP製のものが出てたりします
以下メーカーサイト
まぁこれもエキマテ同様に材料が食品衛生法適合ってだけではダメだと思います。
よく売られてるクッキー型に「PLAと呼ばれるトウモロコシ由来の樹脂を使用しているので安心です!」と書かれてますが戯言です。
乾燥大麻も100%自然由来でオーガニックでヘルシーですよ。
食品衛生法違反のペナルティ
で、食品衛生法に違反すると具体的にどうなるのさ?という話ですが
行政処分として
食品、添加物、器具、容器包装の破棄、その他必要な措置の命令
営業許可の取消、営業の全部又は一部の禁止、営業停止
刑事罰として
3 年以下の懲役 又は 300 万円以下の罰金
といったとこらしいです。
引用:https://www8.cao.go.jp/chosei/dokkin/archive/kaisaijokyo/mtng_8th/mtng_8-4.pdf
あと、回収事案になった場合、
厚生省の公開回収事案検索や、
消費者庁のリコール情報サイトに載るかもしれません。やったね。
実際、規格を満たしていない可能性があるため回収になった事案があります。
【回収理由の詳細】
・輸入通関時の検査不備が判明。蓋の部分が、食品衛生法の規格基準に適合しているか確認が取れていないため
違法だとしても、実際健康被害とか起きなくない?
実際のところ、そうかもしれません。
ただ、フィラメントメーカーはクッキー型に使う事なんか想定して製造してませんし、仮に何かが起こっても補償なんてして貰えないはずです。
自己責任の名の下でやる分には良いですが、善意の第三者に対価を貰いながらそんな無責任な物を提供するのは、誠実と言えるでしょうか?
というか、結局違法は違法なので、
健康被害の可能性がなくても厚生省や保健所の人たちは許してくれないし、怒られたら相当めんどくさいぞ!!マジで!!!(仕事で食品衛生法違反事例経験者
あとは何かあれば製造物責任法(PL法)にも問われる可能性があります。
これはクッキー型に関わらず3Dプリンタ出力品を販売する上で付いて回る話ですが…。
まとめ
食品に接する道具は器具として定義される
器具には規格があり、合成樹脂製の場合は溶出試験などが必要
食品衛生法に適合させる方法はいくつかあるが、手間とお金がかかる
食品衛生法に違反すると行政処分や刑事罰を受ける可能性がある
健康被害の可能性が低くても違反は違反
法令遵守でがっぽり儲けましょう!!!
公開後追記(23/2/7)
はてブのコメントで指摘がありました。
有識者!!なるほど、ご指摘ありがとうございます。
ということはつまりシュレディンガーのクッキー型的な…?
規格はあるけど検査の義務はないのか…。
食品衛生法 第3条を見ると
と、あるので、原材料の安全性を確保してるか?というと、食品衛生法適合じゃない原材料を使用している人はその時点でやっぱダメ?
「努めなければならない」がどれぐらいのニュアンスなのかわからないなぁ。
更に追記(23/2/7)
再びはてブコメントより
情報ありがとうございます!
食品衛生法 第52条はこちら
そして続く第53条はこちら
器具が規格に適合している旨を購入者に対して説明する必要がある、と書かれてますね…?やっぱダメじゃない…?
詳しくは食品衛生法を読み解いて欲しいんだけども、私も読んだ感じでははてブでcasmさんが書かれている通り、この説明義務に違反すれば都道府県知事や厚生労働大臣は販売者に対して営業停止をさせられる事ができ、それを無視すれば罰則があるようです。
ワンチャン、購入者にだけ「食品衛生法適合だよ!!!」ってメールが飛んでたりするかもですが、普通は販売サイトの説明に書いてそうですよね…。
食品衛生法適合な3Dプリンタ製クッキー型を謡ってるショップは…見たことない…。
⇒あった
ちゃんとしてる人はちゃんとやってた。
これで説明の義務は果たしてますが、材料は問題ないとして3Dプリンタ本体側が問題ないってとこはどうやって担保してるんだ…?
まぁ、とりあえず、販売サイトに食品衛生法の規格に適合している旨が記載されていなければ、その時点で説明義務違反と考えて良さそうです。
そして更に追記(23/2/8)
食品衛生法の第七章 検査を確認しました。
つまり「登録検査機関で試験を受けて合格し、厚生労働省令で定める表示がされているものでなければ、販売したり営業に使っちゃダメ」と解釈できるのでは。
ちなみに「第十八条第一項の規定により規格が定められた器具若しくは容器包装」の第十八条一項っていうのはこちら
やっぱ検査してなかったらダメなのでは…?
法律って難しいね!そろそろ保健所辺りに聞かないと分からなくなってきました。
引き続きご指摘などあれば是非!!!
その他コメント色々返信
前述の食品衛生法 第三条にある通り、器具を販売する食品等事業者には適用されるはずです。
どれぐらいの規模で売ったら該当するのかは…うーん。
そこは読み取れなかったですが、販売した時点でアカンやつかもしれません。
また、無償譲渡でも不特定多数に配る場合は該当してくるようです。
飲食店等で食品衛生法の規格に適合していない器具を使って食品を提供するのもダメそう。
業かどうかは反復継続意思があるかどうかで変わると思いますが、少なくとも自前のショップサイトを持ってるクッキー型屋さんなんかは該当するのではと思います。
ググったらわかると思いますが、そういうショップいっぱいあります…。
粘土型として売るなら大丈夫…かな?
ただ乳幼児向けのおもちゃも食品衛生法が関わってくるはずなので、年齢制限を設けた粘土型という体なら…?
そしてなによりクッキー型が欲しい層に粘土型はリーチしないので、それはそれでどうなんだという。
手作り石鹸は薬機法を回避するために雑貨として販売されている実情があるので、クッキー型風雑貨は普通にいけそう。絶対にクッキー焼くなよ!絶対だぞ!
ラップはどうなんでしょうね…個人使用でも衛生面が気になる場合に有用ではあります。違法クッキー型が脱法クッキー型ぐらいになる?
※型自体が違法な存在なわけではありません
かなり反響があるので(23/2/11)
元々3Dプリンタ界隈ぐらいにしか届かないかな~と思って書いた記事が、予想の何倍もの反響があったので、ちょっと保健所にお手紙書こうと思います…。
個人的興味で保健所に問い合わせるのもな~~と思ってたのですが、これだけの人に見ていただいている記事を「違法です!(多分)」で終わらせておくのはよろしくないし、まとめる社会的意義もあるのかなと思います。
保健所の回答を記事化出来るかわかりませんが、続報をお待ちください。