開発組織のバリュー(行動指針)を作った話
こんにちは、ファンズ株式会社の若松( @yshnb )と申します。現在は技術部門であるプロダクト開発部の部長を務めています。
2020年も年の瀬、メンバーからも note の記事を書けと言われて久しく時が経ち、ようやく重い腰を上げて筆を執ることにしました。
今回は少し時期を遡り、2020年の初頭、ファンズのプロダクト開発部において、チーム独自のバリュー(行動指針)を作った話を書きたいと思います。
なぜバリュー(行動指針)を作るのか
サービスをローンチをした2019年当初は、エンジニア3名・デザイナー1名という少人数のチームでした。
2019年の後半からはフルタイムで稼働するメンバーも増え、2020年末の現在では、フルタイムの業務委託として稼働するメンバーも加えると10人超えのチームとなりましたが、まだまだ決して大きな組織ではありません。
このような規模のチームの中でバリューを作ることには、次のような意味があると考えています。
1. 組織で期待される価値観を明確にし、主体的に業務を進めやすくする
弊社のような規模のスタートアップでは、開発者として未経験のメンバーを教育をする準備が十分にあるわけではありません。
またメンバーの人数が増えると、人数の二乗に比例するコミュニケーションチャネルが発生します。そのためチームを分割しない限り、人数に応じたコミュニケーションのコストが大きくかかります。
このような背景から、ファンズのプロダクト開発部は、できるだけ少数精鋭のメンバーでチームを組成する方針を通してきました。
ただ、能力の高いメンバーの集まる少人数のチームであったとしても、どのような行動が組織として望ましいとされる行動なのか、異なるバックグランドを持つメンバーが集まっている以上、言葉にせずとも暗黙の了解として伝わることではないと考えています。
言語化された指針を作ることで、組織として望ましい価値観を共有することができ、個別具体的な指示などがなくとも、組織の価値観に沿った行動が取りやすくなると考えています。
2. 社外に対してチームの価値観を伝えやすくする
採用活動などでチームが重要視する価値観を正しく伝えることは、採用する企業側・入社を検討する候補者双方にとって重要なことです。
弊社は「未来の不安に、まだない答えを。」というミッションの元、資産運用サービスを運営するスタートアップです。サービスを成長させ、それによってミッションを具現化することこそが、企業として取り組むべき課題です。
金融商品を扱うという事業・サービスの特性上、金融に関する知識、法律的な観点からの妥当性やリスク管理など、一般的なテックスタートアップにはない観点が求められる場面もあります。各ドメインの専門家だけでなく、エンジニアやデザイナーであったとしても、金融や関連する法的規制などへの基本的な理解は必要となります。
もちろん決して技術を軽視するものではなく、事業への理解さえあれば技術力は二の次でよいとは考えていません。事業の性質を理解したうえで、サービスに適した技術の選定や設計・実装を行えたり、セキュリティリスクへ対処でき、今までにないサービスを世の中に提供できることが、本当のプロフェッショナルとして必要なことだと考えています。
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このような前提に立ったとき、例えば「遊ぶように開発に取り組もう」とか、「あらゆる問題を技術で解決する」というカルチャーは、弊社で期待されるカルチャーとは異なります。
誤解のないようにいえば、個人的にはこうしたカルチャーも魅力的だと思いますし、テックファーストな環境で働きたいと思うエンジニアも多いと思います。しかし弊社の事業背景や目的を考えると、技術だけでなく、様々な観点を考慮した上で最適な意思決定や行動を取れることが重要です。
入社を検討していただいている候補者の方に、期待される価値観を理解してもらい、その価値観に共感してもらえる方にチームへジョインしてもらえることが、企業と候補者の方の双方にとってプラスになると考えています。
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以上のようなことを目的として、プロダクト開発部独自のバリューを作成することにしました。
バリューをどのように検討したか
チームでのバリュー検討・策定までのプロセスは、当時いたメンバーの中で以下のように行いました。
1. バリューの素案を作成
チームで策定するとはいえ、どのような形であれ、最初の案がある必要があります。ここでは僕の方で素案を作りました(結果的には草案そのままになったものもあるのですが、一旦はほかの可能性も検討した上で元の素案に戻ったという経緯もあり、意味のあるプロセスだったと思っています。)
2. チームメンバーからのフィードバックで方向性の認識合わせ
素案を作ったあと、チームのメンバーに見てもらいました。ここで基本的な方向性についての認識合わせをしました。
3. それぞれのメンバーの視点から期待する価値観・行動例を挙げてもらい、バリューとして明示するべき価値観を抽出
ステップ2での簡単な認識合わせの後、それぞれのメンバーの視点から、期待する価値観・行動例を挙げてもらいました。社内では miro を常用しているので、各メンバーに期待する価値観や行動の例などを、 miro のボード上で上げてもらっています。
各メンバーに出してもらった価値観・行動例などの中から共通しそうなものをまとめたのが次の図です。
ここでアウトプットしてもらった価値観や行動例の中から、元の素案ではカバーされていなかった価値観や、チームにおいて大事だと思われる価値観を抽出しました。
4. 最終的なバリューとそれを説明するテキストのブラッシュアップ
ステップ3で抽出した価値観を、最終的に包含できるようにするためのテキストとして言語化しました。また素案の段階にはあったバリューであっても、うまく概念を説明しきれていなかったものについては、テキストのブラッシュアップを行って、最終的なバリューという形としました。
また、これらを説明するためのテキストについても作成・ブラッシュアップを行いました。
このような方法で、組織として期待する価値観を言語化したバリューが次の4つです。
プロダクト開発部の行動指針(バリュー)
事業成長のためにやる
事業の成長こそが最終ゴール。エンジニアやデザイナーとしてのエゴにとらわれず、自身の業務が、事業の成長にどのようにつながっているのかを常に意識したアウトプットを行います。
持続可能なやり方を採用する
スタートアップであっても、技術的負債や組織的負債を軽視しません。知識の明文化や、維持しやすい成果物を残すなど、属人化せずに持続できる手法を採用することで、組織や事業の長期的成長を支えていきます。
誇りなきものを作らない
金融市場での事業成功には、圧倒的に良いUXで既存の慣習を置き換えることが必要です。自ら高い品質基準を更新し続け、品質基準を満たし人々の行動を変えるような成果を追求します。
自律的チームであれ
課題が与えられるのを待つのではなく、課題を自ら発見し解決に動けるチームを望ましい姿と考えます。一人ひとりが事業や組織の課題を自分事として捉え、その時々の最適な立ち振る舞いを考え行動します。
バリューを作ってよかったこと
バリューを作ってよかったことは、目的の1つでもあった採用活動における価値観の伝え易さです。
持続可能なやり方を採用する・誇りなきものを作らない、といったバリューの双方も、スタートアップの長期的な成長には重要なことだと考えています。こうした価値観に共感してもらえる方こそ、弊社が求める人材だと感じています。
課題だと思っていること
バリューを策定したものの、組織内でバリューを浸透させたり、理解を浸透するための取り組みはまだまだ十分にできているとはいえないな、と感じています。
このバリューは、ある程度普遍的に適用できることを想定し、抽象度の高いものとなっています。裏を返せば、それぞれのバリューには解釈の余地があることも事実です。
2020年はチームメンバーの人数も増え、共通の価値観を持つことは、今まで以上に重要となってきたと感じています。価値観をすり合わせるためのワークショップを実施したりするのがよいのかな、などと考えています。(よい事例などがあれば教えてください)
まとめ
今回は弊社における開発組織のバリューについて紹介しました。
こうした価値観のすり合わせなど、他の会社ではどのような取り組みをやっているのだろう?ということにも関心を持っています。他社の事例も知りたいなーと思うので、よろしければぜひ教えてください。