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[ 幸せ ] 老いて身体が言うことを聞かない。けれども人生に満足をしているし,寂しくもない超高齢期の不思議。(権藤・古名・小林江・岩佐・稲垣・増井・杉浦・藺牟田・本間・鈴木, 2005)。

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人生の終盤の心身の健康度

85歳以上の高齢者を特に「超高齢者」という。年をとるにつれ,身体の健康はどうしても失われていきます。身体の健康度が下がっていくとき,心の健康度は維持されていくのでしょうか。この問いに答えてくれるのが,権藤・古名・小林江・岩佐・稲垣・増井・杉浦・藺牟田・本間・鈴木 (2005)の研究です。

注意:以下の記述はわかりやすさを重視し,実際の研究の手続きなどはかなり省略しています。詳しく知りたい方は以下の論文をお読みください。

年をとると体もいうことを聞かなくなりますね。それに友人も家族も先に旅立っていきます。高齢期の心の健康度は前期,後期,超期とどう推移していくのでしょうか。

対象者は前期高齢者775名(65歳から74歳),後期高齢者419名(75歳から84歳),超高齢者150名(85歳以上)でした。現在の健康状態を,現在治療中の病気があるかないかで答えてもらいました。心の健康状態については,孤独感・不満足感に関する尺度への回答を求めました。質問は以下のとおりです。

  1. 生きていても仕方がないと思うことがありますか

  2. 悲しいことがたくさんあると感じますか

年をとるほどに健康状態は悪化する

結果,図1のとおり,年をとるほどに健康状態は悪化していくことがわかりました。前期高齢者で7割,後期で8割,超期で9割のひとが何らかの疾病を抱えているということです。人生の終盤では病気と付き合って生きていくのですね。

図1. 健康度の推移

年をとるほどに孤独感・不満足感はどうなる

それでは,孤独感・不満足感はどうでしょうか?下がるのでしょうか?上がるのでしょうか?超高齢期では9割のひとが持病をもっています。体がしんどいと孤独感・不満足感は上がりそうです。しかし,結果は,超高齢期に至って,孤独感・不満足感は下がることがわかっています(図2)。

図2. 孤独感・不満足感の推移

体の自由が失われていくのにもかかわらず,どうして孤独感・不満足感は低下するのでしょうか。権藤・古名・小林江・岩佐・稲垣・増井・杉浦・藺牟田・本間・鈴木 (2005)の考えによれば,体の自由は失われていくが,それを補うように心の成長があり,結果,心の健康度は下がることなく維持されるというのです。

この研究結果からは超高齢期になっても,ひとの心は成長するということが示唆されます。年をとるとどんどん元気がなくなっていくというイメージをもちがちですが,実はひとは生涯にわたって自分を乗り越えていく力をもっているようです。

それでは,その力とはなんでしょうか。その答えとして,老年的超越に関する研究が行われていますが,それについては別の記事で紹介します。

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