[小学生の社会]天皇は日本国民ではない(成城学園の2023年度の中学校入試)
成城学園の社会
成城学園の2023年度の中学校入試(第2回目)の社会の問題に次のような問題があります。
日本国憲法に関する説明として正しいものを、次のアからエから1つ選び、記号で答えなさい。
ア.天皇は「国政に関する権能を有しない」と書かれていることから、政治に直接かかわることはできないが、一国民として選挙権は持っている。
イ.第9条では、戦争の放棄や戦力を持たないことを定めているが、自衛隊を持つことは許されると記されている。
ウ.基本的人権は侵すことのできない永久の権利とされており、現在だけでなく将来の国民にも与えられるとされている。
エ.憲法改正の手続きは、法律の改正と同じ手続きで行われる。そのため、 憲法改正の賛成・反対について国民が直接投票をする機会はない。
答えは「ウ」です。興味深いのはアに天皇に関する記述です。この記述は間違っているのですが,どこが間違っているのかといえば,選挙権がないことと,また国民でもないことです。
天皇は日本国民ではない
天皇は日本国民ではありません。日本国憲法の第一章は天皇の地位に関する記述からはじまります。
「主権の存する日本国民」とあるのように,日本国憲法では主権は国民にあります。天皇は国民ではなく,国民の象徴という地位を占めています。
戸籍も住民票もありません。納税はされておらず,パスポートももっておられません。天皇は国籍をもっていない無国籍者であると考えるのが適当でしょう。
では天皇は日本人なのかという疑問も出てきます。自分が日本人かどうかという問題は,そのひとが自分のルーツはどこと考えるかによって答えがちがってきます。日本国籍をもっていても,自分は韓国人だと考えるひともいれば,無国籍ではあるけれども,自分は日本人だと考えているひともいるでしょう。法律では定義ではない問題だと思います。
「どういうこと?」がある幸せ
なんということもない選択肢ですが,考えてみるとわからないこと,知らないことがたくさんあることに気づきます。このようなことから,歴史に興味をもって,楽しんでいろいろと調べてみたり,考えてみたりする子どもがいたらとてもいいことだと思います。
日本のなかに日本国民でないひとがいる。それが天皇だと知ったとき,やはり子どもは「どういうこと?」と思うでしょう。そこから,いろいろと自分で調べていったり,授業で聞いたりということができたらすばらしいと思います。たぶん,そういう子どもは試験の点数はあんまり芳しくないでしょうけど,自分で考えるというとても大切なことを身につけることになるでしょうから。
成城学園の授業にはこういう「どういうこと?」がたくさんあるのでしょう。
おすすめの書籍
天皇の国づくりの様子がわかりやすく書かれています。
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