[読了] 学校にあなたの先生はいるのか(新山王政和 「中学校吹奏楽部に関する8つの所感」)
部活動の地域移行
中学校の部活動の地域以降が進んでいます。
中学校の先生が土曜日や日曜日に指導するのが大変。だから,もう部活動は学校ではなくて地域でしましょうという話です。
文部科学省が思っているような地域移行が実際に進めばいいなと私は思っています。それは先生が楽になるからではなくて,学びたい者が,きちんと学べる環境が整備されることを願っているからです。
たとえば,わたしは中学生のころ,剣道部に所属していました。剣道部の顧問は剣道の経験者ではいらっしゃいましたが,稽古にはあまり来られませんでした。そうすると,稽古は適当になってしまい,稽古をしたいわたしからすると,参加する必要のない活動となります。今考えると,あんな部活動など参加せず,地域の稽古会に参加させてもらっていたほうがよかっただろうと思います。
存続する意義のある部活動
新山王 (2017) は,子どもと指導者が求めることには食いちがいがあって,くいちがっている場合には,その部活の存在意義はないと述べています。
新山王 政和 (2017). 中学校吹奏楽部に関する8つの所感, 音楽教育実践ジャーナル, 15 巻, p. 37-44. [J-stage]
新山王 (2017) は次のように場合わけをしています。
子どもが求めること
競技がうまくなりたい
社会性を身につけたい
指導上,指導者が大切にしていること
競技に関する技能に焦点を当てている
社会性を伸ばすことに焦点を当てている
指導者の力量
競技に関する知識・技能がある
競技に関する知識・技能がない
部活動を行うことで,子どもも指導者も幸せになる組み合わせは,1-1-1 です。つまり,子どもが競技をうまくなりたいと思っていて,指導者も競技の技能を高めようとしており,指導者自身,それを可能する知識・技術がある場合です。なるほど,そういう部活動でしたら,子どもも指導者も生き生きと楽しく活動できるでしょう。
では部活動はそんな理想的な 1-1-1 型なのか。それは強豪校のうちのほんのひとにぎりにすぎないでしょう。すくなくとも,わたしとわたしが所属した剣道部は1-1-1 型ではなかったです。
多くの中学校では,全然,水泳経験のないひとが水泳部の顧問をしていたり,剣道をしたことがないひとが剣道部の顧問をしています。それを受ける先生も大変でしょう。子どもや保護者からは素人だと思われ,軽んじらるでしょうし。剣道なんかでしたら,経験があって,でしゃばりのお父さんやお母さんが部活動に口を出したりして,イライラのもとがふえでしょうし。
本当の先生をみつける
武道にしろ,スポーツにしろ,音楽にしろ,本当にしたいひとは,きちんと指導できるひとのもとで稽古や練習を行うのが幸せな状態です。今回の部活動の地域移行が,本当に学びたい子どもたちにとってのよい改革になることを祈っています。
学校の先生が勉強,しつけ,スポーツまでなんでもやってくれると思うのはおかしいです。実際のところは,多くの場合,学校の先生には,勉強もしつけもスポーツもきちんと教えることはできていません。だから,ほとんどの親は子どもを塾に行かせているわけです。勉強を教えてもらうということにすら信頼をおいていない学校に,しつけやスポーツをなんとかしてもらおうなんて,ちょっと無理ではないでしょうか。学校には先生はいないのです。
一方で何もやりたいことがない子どももいるでしょう。そういう子どもはどうするんだという意見もあるでしょう。ほっておくと家で Netflix しかみないんじゃないかと不安に思う親もいるでしょう。ただ,Netflix もさすがにいずれ飽きますし,もうみたくないと思う日がくるでしょう。何もさせないでいたら,勝手になにか見つけてくるかもしれません。
興味を持たれた方へ
どちらの本も部活動自体の教育的意義は認めておられます。同じものを見ていても,ひとによって見方はずいぶん変わるというのがわかります。
内田 良 (著)「ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う」(東洋館出版社)[Amazon]
猿橋善宏・大利実 (著)「部活はそんなに悪者なのか! ? 脱ブラック部活! 現役教師の挑戦」(インプレス)[Amazon]
[ サイトマップを見る ]