[ 読了 ] 誰も助けてくれなくても,仕事は助けてくれる(市川拓司「ぼくが発達障害だからできたこと」朝日新書)
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なにもできない人々
発達障害。暗黙のルールに気づかないとか,物事を最後までやりおえないとか,物事を俯瞰的に見れないとか,人の気持ちに気付きにくかったり,ひとつのことに集中しすぎたり,逆に何もできなくなってしまったり,お金の管理が全然できなかったり,取引先にひとりでは絶対に行かせられなかったり,いろいろ,できないことが挙げられる。
できないことばかり。できることなんて,何もないんじゃないかと思ったりする。
ひとにはできないことをする人々
けれども,できることもあるし,他のひとならば全然手をつけないことや,考えもしないことにもチャレンジして,もしかしたら,うまくやりとげることもできるし,好きなことのためならば,社会性もあるように振る舞うこともできたりする。
できないことなんて,ないんじゃないかと思ったりする。でも,すぐに疲れる。
なぜ沈んでいかなかったのか
市川拓司さんの「ぼくが発達障害だからできたこと」(朝日新書)。どうして,市川さんが自分らしく生きることができたのか。たぶん,それはお母さんの存在が大きいのではないだろうか。市川さんを完全に信じてくれていた優しいお母さん。ほんとうのところ,市川さんは自分を全然ダメな人間だとは思っていなかったんじゃないかと思う。できる。全然自分はできると思っていたと思う。それはお母さんのおかげじゃなだろうか。
市川拓司(著)「ぼくが発達障害だからできたこと」(朝日新書)[Amazon]
いろいろややこしい特性をもって,それであがいて,もがいて,なんとか浮かび上がって,自分なりに泳いでみる。溺れてしまわなかったのは,もちろん,市川さん自身が自身の特性にあわせた泳ぎ方を諦めないでひとつひとつみつけていったからだろう。でも,やってみよう。どうやったら上手く泳げるかな。そういう前抜きな気持ちになるたのは,やっぱり,自分を完全に信じてくれた,誰かがいるからじゃないか。いてもいいんだよと言ってくれるひと。ここにいてもいいなだという感覚がやっぱり大事なんだと思う。
誰も助けてくれなくても,仕事は助けてくれる
そんなひとがいないんだったら,仕方がないから,自分が好きなことをやっていくしかない。ずっと前に,プログラミングに出会ったのはとてもわたしにとってよいことだった。自分の考えたことが正しければ,期待した結果がでる。自分の考えたことが間違っていたら,全然動かない。なんてすばらしいんだと心底思った。それは実験にしてもそう。データによって自分の仮説の妥当性をテストできる。なんだそれと思うほど,おもしろい。自分の問いかけに答えが返ってくるのは,それがどんな結果でも,よくても悪くても,とてもよいことだ。
別にひとから信じられなかったとしても,仕事のなかで,自分が世界のなかに,カチリとはまる瞬間がある。そういう感覚を何度か感じられたのはとても幸運だと思う。
ここにいてもいいんだという感覚が,おぼれるわたしたちを救う鍵だと,わたしは思う。
誰も助けてくれなくても,しごとは助けてくれる。
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