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[ 日本書紀を読んでみる ] (7) スサノオの誓約

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概要 宇治谷孟「日本書紀」(講談社学術文庫)を読みとおすことを目的にしています。すこしずつ読んだ内容を,簡潔にまとめ,読者と共有していきます。間違いがあれば,コメント欄で教えてください。

目的

一緒に,宇治谷孟「日本書紀」(講談社学術文庫)を読みとおしましょう。

保食神

スサノオは死んだお母さんに会いたくて,めそめそ,めそめそしています。お父さんのイザナギからそろそろ仕事をしなさいといわれると,もうこんなところにはいられないと根の国に行くことにします。根の国に行く前に,途中でお姉さんのアマテラスに挨拶をしておこうと思い,お姉さんのいる高天原を目指します。

長男が家を飛び出して行ったわけですが,イザナギはこのころ,もう淡路島に戻って余生を静かに暮らそうとしていました。

スサノオが天に登ろうとすると,海も荒れ,山にも轟音が鳴り響いたといいます。死んだお母さんに会いたいとメソメソしている姿とはずいぶんちがいます。轟く音を聞いたアマテラスは弟がこちらに向かってくることを知ります。

「わたしの弟がここにくるのは何か良からぬ気持ちがあるのだろう。たぶん高天原を奪おうとしているのだろう。父も母は兄弟別々の国を与えてくれた。これは取り合いにならないよう,将来喧嘩にならないよう考えてのことだろう。自分がもらった国を捨てておいて,わたしの国を奪おうとは許せないやつだ」

アマテラスは武装して,スサノオを静止しました。スサノオは驚いて答えました。

「私には何の悪い心もありません。父と母が言うとおり,根の国に行こうとしているだけです。ただ途中でお姉さんに会いによっただけです」

けれども,アマテラスは信じません。スサノオは誓約(うけい)をすることを持ちかけます。

「でしたら,こうしましょう。わたしの生んだ子どもが女の子でしたら,悪い心があると思ってください。男の子でしたら,清い心だと思ってください」

アマテラスはスサノオから十握の剣を借りました。十握の剣というのは柄の部分が握り拳10個分もあるほどの大剣のことです。アマテラスはそれを3つに折ってしまします。そして高天原の水で剣をすすぎます。剣を噛み砕いて吹き出してみると,そのこまかい霧から3人の神様が生まれました。

  • 田心姫(たこりひめ)

  • 湍津姫(たぎつひめ)

  • 市杵嶋姫(いつきしまひめ)

全員,女の子でした。

次にスサノオは,アマテラスが腕に巻いていた八尺瓊の五百箇を貸してほしいという。これは8つの玉を紐で通した飾り。スサノオは同じく高天原の水で玉をすすぎ,玉を噛み砕いて吹き出してみると,そのこまかい霧から5人の神様が生まれました。

  • 正哉吾勝勝速日天忍穂耳命尊(まさかあかつかちはやひあまのおしほみみのみこと)

  • 天穂日命(あまのほひのみこと)

  • 天津彦根命(あまつひこねのみこと)

  • 活津彦根命(いくつひこねのみこと)

  • 熊野櫲樟日命(くまののくすびのみこと)

全員,男の子でした。このうち,あまのほひのみことは,出雲臣,土師連等の祖となりました。また,あまつひこねのみことは,凡川内直,山代直等の祖となりました。

アマテラスは言いました。

「男の神はわたしの玉から生まれたのだから,わたしが育てよう。女の神はスサノオの剣から生まれたのだから,スサノオが育てればよい」

感想

誓約(うけい)とは何だ?どうして剣を水ですすいで吹き出したら,子どもが生まれるのだろう。どうして玉を水ですすいで吹き出したら,子どもが生まれるのだろう。

生まれたのは神様ではあるけれども,あまのほひのみことは土師連等の祖,あまつひこねのみことは凡川内直,山代直等の祖とあります。土師連等は当時実在した人間でしょう。人間は人間から生まれるのですから,土師連等が人間であれば,祖先のあまのほひのみことも人間です。

人間がどうして剣や玉を噛み砕くことで生まれるのか。どうしたって生まれるはずもありません。日本書紀が読者を想定して編纂された記録である限り,誓約(うけい)の記述は当時の読者にとっては,ふんふんなるほどと納得されるものだったはずです。わけのわからない記載があれば,その記録の信憑性自体を疑われることになるでしょう。

そもそも,スサノオが清い心であるのかそうでないのかを確かめるための誓約なのに,どうしてアマテラスも誓約をしているのだろう。

まったくわからない。

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