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1月5日は,宮崎駿の生まれた日

1月5日は,宮崎駿の生まれた日です。

宿命を与えられたひとの物語

1983年7月に漫画「風の谷のナウシカ」が発売されます。1984年9月には大友克洋の漫画「AKIRA」が発売されています。いずれの漫画も大戦後の失われた世界のなかで,特別な能力や宿命を与えられたひとがその世界と格闘する様子が描かれています。

  • 宮崎 駿 (著)「風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット」(徳間書店)[Amazon]

日本の高度経済成長は1955年からはじまり,1972年ごろにおわりました。その後,経済の成長は鈍くなっていきます。上のふたつの作品が描かれたのは,成長に翳りの見えてきたころにあたります。

もちろん,ふたつの作品はふたりの天才が生み出したものであることは当然ですが,そこに時代の精神の影響も少なからずあるでしょう。ひとびとがそれらの作品に夢中になったのは,その作品の表現方法によるところももちろん大きいでしょうが,その作品が示す世界観や人間観によるところも,また,大きいと思います。食べないと死ぬように,当時の,あるひとびとにとっては,この作品を読まなければならない理由,読む,なんらかの必要性があったのでしょう。足りない何かを満たしてくれたのかもしれないし,なくて不安だったものを与えてくれ他のかもしれない。

我々はどこへ行くのか、我々は何者なのか

それは何だったのか。おそらく,自分とは何だという問題に関わるものだと思います。1989年にはパトレイバーの劇場版が公開されています。そのなかで印象的な言葉として,「我々はどこへ行くのか、我々は何者なのか」がありました。野蛮人の隊長の言葉だと映画の中では紹介されていましたが,それはフィクションです。そんなことを言った野蛮人の隊長は歴史上にはいませんでした。ただ,こういう言葉はそのころの時代の感覚をうまく捉えていたのではないかと思います。ヨーロッパまで攻め込んだ野蛮人の隊長は,そのころの日本人の比喩だったのかもしれませんね。

バブルが 1991 年に崩壊するまで,どうもわたしたちの先人は,こんなはずじゃない,これが望んでいた社会じゃないと思いながら,外面的には躁的に,内面的に鬱々と暮らしていたのじゃないかと思います。バブルが弾けて,夢から覚めたわけですが,自分たちが何者なのかわからないまま,いまだに日本のひとは自分さがしをしているように思います。

そんな時代の精神をうまくとらえた宮崎駿が生まれたのが1月5日でした。

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