[第1回] なぜ私だけが苦しむのか。フランクルと考える生きる意味。
第二次世界対戦中,ナチスはユダヤ人の大量虐殺を行いました。
収容所に連れてこられたユダヤ人たちは人間の尊厳を踏み躙られ,強制労働を課され,殺害されていきました。およそ600万人のユダヤ人が犠牲となりました。
「夜と霧」。
この本はこの大量虐殺を生き抜いたひとりの心理学者が収容所での体験を綴ったものです。著者はヴィクトール・フランクル。
収容所に到着したユダヤ人はもっているものをすべて没収されました。フランクルは完成した原稿をもっていました。しかし,それも没収されました。
ひとびとは番号で呼ばれました。番号はひとびとの腕に掘り込まれました。ひとびとは強制労働をさせられました。働けないものは殺されて行きました。ひとびとは殴られ糞尿のうえでじっと立たされるなど,人間の尊厳を踏み躙られました。
このような絶望のなか。フランクルは収容所のなかでふたたび失われた原稿の執筆にとりかかりました。
なぜフランクルはこのような過酷な人生を生き抜けたのでしょうか。
フランクルはこう言っています。
絶望したひとびとはこんな人生を生きる意味はあるのかと問います。しかし,それは逆です。あなたは人生から生きる意味を問われているのです。
あなたは人生から生きる意味を問われている。そして,あなたは人生からの質問に答えなければならない。人生の苦しみのなにどのように向き合うか,そこに人間らしさ,あなたらしさがあるというのです。
なんと,謎めいた言葉でしょうか。「あなたは人生から生きる意味を問われている」。この不思議な言葉が何を意味するのか,これから,一緒に考えていきましょう。
◾️◾️参考図書◾️◾️
フランクル「それでも人生にイエスと言う」(春秋社)https://amzn.to/41uuakV
フランクル「夜と霧」(みすず書房)https://amzn.to/41yAR5t
◾️◾️音楽◾️◾️
チョコミントさんの「廃墟をイメージしたピアノ曲(ループ処理済)」を使わせていただいています。ありがとうございます。
◾️◾️画像◾️◾️
Wikipedia Commons の画像を使わせていただいています。ありがとうございます。