Schaum / Jan Jelinek, Masayoshi Fujita
このノートは第一印象を大事にして、未聴アルバムを聴いたままに落とし込む自主的なノート。
言葉遣いはあえて親しみやすい筆者の頭の中で流れるようなものを使う。
マリアージュ
ヘッドホン : AKG K271 mk-2
このアルバムにはめちゃ合う。ドンシャリとかはもってのほかだと思う。
低音にも旨味が多いから、そこがこれでは不十分なところがあるのは残念な点ではある。Asahi The Double (バイト先のヘコ缶)
ヤマメ 鯖の水煮
めちゃめちゃうまい。茶碗蒸し
きっかけ
Masayoshi Fujitaの作品を知ったのは、ある音楽批評本から。その本のチャプター3の表紙に彼は紹介されていて、チャプター1にはミナスのLuiza Brina、チャプター2にはEmma Frankとなっていたからまさかここで日本人かと驚いた。このアルバムの前に前作である"Apologue"を聴いたけど、エレクトロニカ付きの自分としては今作の方が推せる。
感想
(読みやすさ考慮で適当に5行までで区切っていく)
CIN
一曲目の"CIN"から前作とは毛色が一気に違うことがわかる。
私は知らないけど多分これは協奏しているJanという人の要素なのだろう。この人の作品も聴いてみたくなる。Janはベルリンのエレクトロニカの人らしい。ジャズも好きらしい。
ダイナミクスレンジを広く使った曲の聴かせ方がすごい。電車であればノイキャン必須。暗い自室で聞くのがベストだとは思う。あとはアップテンポに疲れた高速道路もいいかも。
ノイズといえばノイズだけど、うるさくない程度のレゾナンスが私好み。
Helio
2曲目には1曲目よりもリズムがある。
helioとはギリシャ語で太陽との意味があるそう。
太陽かーーーー。あんまわからん。この太陽は半分曇っていそう。SF映画で見る太陽って感じがする。つまり、何か起こりそうな意味深なカットの中の太陽。そう、やはり半分曇っているHelio。ああ、いいねこれも。
訳のわからない音楽のようでやはり二人ともコードの知識はあるのだろう、計算されていてテンションの使い方がうまいような気がする。ハッとする音をいいタイミングで入れてくる。
Urub
リズムはイーブン。三曲目でイーブンって確かにね、気持ちいいわ。
ただリズム隊はなんかの低音楽器。パーカッションみたいなのは永久にバグっている。でもいってみれば、こっちにリズムを取らせる方がリズムが生まれる気がする。合理的だ。
Urubの意味は調べても出て来なかった。 You Rubならまあ膨らむか。
What You Should Know About Me
やっとぱっと見でわかるタイトル。
直訳では、君が僕にとって知っておくべきこと。Julien Bakerの歌詞みたいな名前だなと思った。こういう抽象音楽で、歌もなくこうしたタイトルをつけられると作者の意図を読み取るのは無理だなーとよく思う。自分がそんな作曲を時はもっとフィールドレコーディングを入れたりして情景を描きやすくする。
この曲はアルバムの中でもコードの動きが早くて、そこがこの主題において新鮮に響く。独創的な世界の中では、ポップス曲でやったら驚かないフツーな仕掛けが全て新しく響くから世界観を作れることはすごいことだ。
Vague, yet
ドリーミー。睡眠導入のメディテーションアプリのメイン層で用意されていそうな感じのテイストの曲で、冒頭から途中までは低音に隙間がやけにあるなとこのアルバムでは感じる。中盤ではそこを生かす仕掛けがやはりくる。低音で細かいリズムを作ってくる。
あんまり長くなくて残念だけど、後半の浮かんでくるベースも好き。
Botuto
これは5曲聴き終わった中でもメインリズムに凝りがあっていい。主体の提示をすんだこのアルバムにおいて6曲目というのも味がいい気もする。思えば、エレクトロニカなんてふざけた曲ばかりだからスタイルを提示するので5曲は楽しませてくれるのは当たり前かもしれない。ネット上でエクスペリメンタルだのIDMだの書かれてもそこまで情報とは呼べないし。
これ、アルバムとしても考えられていると思う。一曲目のCINなんてナニコレ感をしっかり出しながらイントロとしてのボルテージ上げを存分にしてくれていた。この6曲目も上述した意味での機能を。
この曲は、アルバムの中で一番ビブラフォンが光っている気がする。
文字通り、光っていると思う。メロディ自体はポップスやジャズなどと比べてみるとくすんでいると言えて、そのメロがしかしここでは眩しいくらいなのが面白いところ。
LesLang
と思ったらその流れを汲んだような7曲目。これもいい。
仕掛けがさらに多い形。6曲目と7曲目をセットで聴くのもいい。
なんといっても1:40のあたりの仕掛けが楽しい。これまでこのアルバムは永遠に全音符が続いてそれが切れるのはリバーブ/ディレイの空間系のことが多かったがここへきてこの仕掛け。庵野秀明ばりに唐突で意味が分からなくていい。
しかもそこのノート選びがとても素敵でさすが理論が入っていると
思わされる。
Parades
久しぶりにわかりやすいタイトルがついてくれた。さっきのメロディの話に通じるがこのアルバムにおいてparadesとはこうだ。というのが面白いところ。
私がハリーポッターが好きな理由とも近い。あれはハリーを助けてくれる助っ人が善悪でいうと悪っぽいビジュアルをしているのが素敵なのだといつも思う。セドリックとかはその限りではないけど。
8曲目ではまた静寂の黒色の低音がくる。こういう低音の良さがわかる人はそれだけで友達になれる気がする。序盤では小休止という言葉が似合うテイストであっても、この曲全体はそうではないのを今体感している。茶碗蒸しって安いのでもうまい。湯煎の手間を省けば、夜食にピッタリだと思う。
段々とオートメーションでボリュームを上げているのであろうシンセには無リズムで海や山、風といった時間の概念を人レベルでないことを知らせるような壮大さ。その裏でリズムが動いている。しかも付点。空いた高音パートにはバグった機械音と悠然としたビブラフォン。
そして長くあった雲がやや晴れて終わる。
纏め
だいぶ好きなアルバムだった。もし読んでくれる人がいて気に入ったならAmetsubやAkiko Kiyama、坂本龍一あたりがおすすめだと思う。
カマシワシントンももしかしたら気にいるかもしれない。
ゆったりと聞けて、暗すぎずにむしろリラックスさせてくれるアルバム。こんなに暗いのにそんな印象を与えるのはビブラフォンの仕事なんだと思う。
とても稀有で、面白いコンセプトを持ったアルバムだと思う。
参考
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