計算論的神経科学と進化心理学
最近読んだ本「広がる!進化心理学」に、計算論的神経科学と進化心理学の関連性について書いてあったので、そのメモです。
紹介するのは、2章「進化心理学と神経・生理」です。
ティンバーゲンの四つのなぜとマーの3レベルを対応付けて、計算論的神経科学と進化心理学は本質的に同じアプローチだとしています。表にするとこんな感じです。
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\begin{array}{ccc}
マーの3レベル & ティンバーゲンの四つのなぜ & 領域 \\ \hline
計算論 & 適応 & 進化生物学・生態学 \\ \hline
アルゴリズム & メカニズム & 行動科学・認知心理学 \\ \hline
ハードウェア & 発生・系統発生 & 解剖学・分子生物学 \\ \hline
\end{array}
$$
個人的には、行動の観察を起点として考えると、進化学は「その行動の理由・適応上の機能」を問うているのに対して、計算論は「その行動のためにどんな計算が必要か」という方向なので、逆向きのようにも感じられます。
生物の情報処理の機能や目的に着目しているという点では共通しているとは思います。
その後、意思決定や社会性など行動生態学上のトピックに関わる各論の神経基盤についての説明がありました。以下は各論です。
強化学習
TD学習は、哺乳類でも昆虫でも知られているが、そのハードウェアは異なっている。(昆虫は罰の学習にドーパミンが関わっているらしい)
計算論的には、報酬や罰に対する行動の切り替えという文脈で、同じ淘汰圧を受けた機能と考えられる。(収斂進化かもしれないということかな。)ただし、計算論とハードウェアの中間であるアルゴリズムレベルでの同一性は分かっていない。
古典的条件付け後の、条件刺激および条件刺激後の無報酬に対するドーパミン細胞の活動をTD誤差として考えると、予測に対する驚きとして説明できる。
予測符号化・自由エネルギーに関しては、この本の感情や合理性にかかる章でも関連性が説明されています。このあたりも後日まとめます。
マキャベリ的知性
社会脳仮説を支持する神経基盤について。
ミラーニューロンが複数発見されたため、他人の行為を自分の行為に置き換えてシミュレーションとして理解するというミラーシステム仮説が提唱されている。
心の理論を達成するには、自分の行為と他人の行為を分離して認識できるような神経回路となっているはずである。ミラーニューロン以外に自己ニューロンと他者ニューロンも見つかっており、これらの分布は脳の領域によって異なる。さらに領域間の連絡を遮断すると他社と自己の行動調整が難しくなることから、他者と自己の行動調整には各領域の連携が必要であり、このような連携の実現のために脳のサイズが大きくなった(社会脳仮説)と考えられる。
他には、プロセルフ/プロソーシャルと二重過程の神経科学などについて述べられています。
以上です。
この先は、まとまらなかったメモがあり、恥ずかしいから隠しているだけです。
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