【読書】『本屋図鑑』 本屋図鑑編集部 編 得地直美 夏葉社 2022年
井筒俊彦先生の『神秘哲学』を読み始めたら、なかなか読み進められない。
表現が、というより分からない言葉が多く、調べながらになるので結局何がかいてあるかがつかめなくなり、戻って読み直すことになるからだ。
これは難者になるぞ、と思ったところで、解説本としている『井筒俊彦 叡智の哲学』(若松英輔 著)に「『神秘哲学』は、準備もなく、好奇心だけで手に取った者を容易に受け入れない」と書いてあったので、一旦寝かせることにした。若松のいう「準備」が何か今は分からないけれど、井筒先生の『意識と本質』も20年の時を経て読むことができた。
ここは寝かせているうちに読む日がくるはずだ、と信じて。
本が好きな人は本屋も好きなはずである。
僕も本屋にはいると、いつも「あ、まずいな」と思う。
その昔は本屋に入ると1、2時間は平気で本棚と眺め、そして何冊かの本を手にして帰ることになる。こうして「積読」となってしまった本がたくさんあった。
引っ越しの度にこうした本を処分しながら、そして年齢を重ねて「あと何冊読めるのだろうか」と思うようになった頃から、本の買い方に慎重になってきた。
今、本棚をみるとそこには読んでいない本が、まだある。
おそらく難者になりそうな、本も結構あると感じている。
だから書店には足を踏み入れたくなくなってきていた。
こうした中で、本棚から手に取ったのが本書『本屋図鑑』だ。
題名の上に「定本」とあった。あとがきで知ったことだけど、『本屋図鑑』という本と『本屋会議』が10年以上前に出ていて、これを合わせて新たに原稿を加えたのが本書だ。
一章は、最近の特徴のある本屋が紹介されている。
一方、10年以上前に全国にあった二章、三章に載っている本屋は相当閉店しているようだ。本屋を取り巻く状況は出版も含めて厳しい、ということがわかる。
本書では、八章、九章、十章に渡り、この厳しい状況についての考察がなされている。
厳しい状況を解決するには、僕らが本を数冊買えばすむ、ということではない。
本好きにとって本は必要なものだけど、皆が必要のないというものを買わなくていいと思う。皆が本好きになって欲しいけれど、無理やり好きにさせる必要はない。
でも、本書の七章は皆に読んでもらいたい。
僕は通勤の途中で七章を読んだのだけど、鼻の奥がツンっとしてしまった。
いやはや、こんなところでこんなものに出会うとは。
ここを読めるだけで本書を読む価値はあると思う。
これだから本好きはやめられない。