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【読書】『楽園のカンヴァス』 原田マハ 著 新潮文庫 2014年

嫁さんが原田マハの小説を読んでいる。
読書会で本書を2024年に読んだベスト本として紹介された。

こういった経緯で読むことにしたのだけど、原田マハさんって、勝手に「若い吉本ばなな」、と思っていた。
ところが、文庫本のカバー著者紹介を読んだところ、たいへん失礼いたしました、先輩でした。だから「さん」づけです。しかも、森ビル美術館森美術館準備室にいらした時にニューヨーク近代美術館に派遣され勤務されていた、とのこと。
読書会でアート好きな人が紹介していたし、その時点で気づけよ、と思うのですが、大変申し訳ありません。

さて、本書は原田さんが勤務していたニューヨーク近代美術館が所蔵するアンリ・ルソー作の絵画「夢」を巡るミステリー、恋愛小説である。ともに原田さんの得意とするジャンルである(らしい)。原田さんの作品を読むのは初めてなので「らしい」としたが、インターネットで調べると、いくらでも候補が出てくる。

ルソーについては絵を知っているという程度で、美術史の中でのポジションについては全く知らない。さすがに専門家としての知識と史実を元にしたフィクションとして一級である。ルソーに関する知識、キュレーターの仕事など、いろいろ知らなかったことがあった。
美術館に勤めて、というと大人しく研究をしている人と思っていたが、キュレーターには展示会の目玉になる作品を確保するためにネゴシエーション能力が必要になるとのこと。

本書を読むと、アートは作家がどうしようにもなく表現したいことを表現し、それをある一人がどうしようもなく良いと感じることではないか、と思う。ある一人はたった一人のこともあるだろうし、多くの一人が良いと感じることもある。でも、それは、あくまで個人で感じることで誰かが良いと言ったとかそういうことは関係ない。

ここしばらくは原田マハの美術シリーズを読んでみようと思わせるに十分な内容だった。
しかし、何でも最初の印象(名前だけとか)だけで読まないのはもったいないことだ、と痛感した。

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