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読書】『たゆたえども沈まず』 原田マハ 著 幻冬舎文庫 2020年
原田マハさんの『楽園のキャンバス』に続いて読んだのが本書だ。原田マハさんの本では2冊目。原田さんの本は、美術もの、恋愛もの、エッセイと3つあると思っていて、次は何にしようかと思い、やはり美術ものかな、ということで本書にした。
ゴッホに関する話とは知らずに読み出す。林忠政というパリに実在した日本人の美術商に憧れて日本から来た若者(架空)の眼を通して、ゴッホと弟のテオと絡んだ話である。
誰が事実で、誰が架空かわからない中、話は進む。
途中でストーリーは面白いが、ゴッホが主人公ではない、ゴッホが少し遠い存在として描かれているところが気になる。
主人公はいったい誰なのか。
また、ゴッホの人生をある程度知っていると、例えばゴッホが自分の耳を切り落とした(実際は耳たぶをを切ったらしい)ことや、自殺はどうなるんだ、というように話の筋とは違うところに気がいってしまう。
しかし、原田マハさんのサイトで、たくさんの著作の一覧があって、そこに付けられている短い紹介文をみていて、気づいたことがある。
原田マハさん日本人を絡めた話を書きたいのではないか。マハさんの本をたくさん読んでいる方にとっては「当たり前」のことかも知れないが、
マハさんが「史実をベースにしたフィクション」(アート小説)に分かりやすさをいれるために「日本人」の視点を外したくないのではないか。マハさんは美術の研究家ではないけれど、参考文献の数の多さからそう感じる。
新たな視点をくれていると感じる。