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気候変動時代の対策 緩和策と適応策

あらたな気候変動対策 ―適応策

気候変動適応とは、「現在さらには今後予測される気候とその変化、そしてそれらのもたらす影響に対する調整の過程」です。地球温暖化による気候変動を緩和する取組(緩和策)として、温室効果ガスの削減が世界的に進められています。日本政府も2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。しかし、コロナによって全世界の経済がかつてないほどの規模で縮小された2020年でさえ、その削減量は世界目標に届きませんでした (以下Infographic 参照)。この結果、緩和策をさらに推進する必要があることが明らかになっただけでなく、今後さらなる気候変動の影響が避けられないことが確実となりました。持続可能な社会を考えるとき、気候変動の進行を止めるための緩和策を全力で進めながら、その裏側では、将来どのような気候になるのか、その影響はどんな形で現れるのかということを知り、それに備える「適応策」を進めていくことが重要です。

気候変動の影響は複雑かつ深刻

気候変動の影響は、気温の上昇や雨の降り方やその量の変化、海水温の上昇や海面上昇などの形で現れることが知られています。これらの気候変動の影響は、私たちの社会に様々な副作用をもたらします。日本では記録的な大雨によって洪水による被害が頻繁に発生しています。世界では、気温上昇と乾燥した大気が山火事の被害を拡大化しています。2020年にアメリカ西海岸で起こった大規模な山火事では、森林が消失したり人命が落とされたりしただけでなく、長引く火災による大気汚染で肺や呼吸器官への健康被害が深刻化しています。NASAによれば、火災の発生は気候変動とは関係ないものの、山火事が大規模化・長期化する原因は1980年代から見られる空気の乾燥と気温上昇にあるとしています。このように、地球温暖化の影響は気候の変化として現れるだけでなく、私たちの生活にも大きな影響を及ぼします。

社会課題を悪化させる気候変動の影響

気候変動の影響を悪化させる一因に、現在の社会課題が挙げられます。海外では、経済発展を優先した無計画な都市開発によって、洪水や土砂災害に弱い土地が住宅地になった事例があります。社会課題の中で最も深刻なものの一つに経済格差がありますが、低収入や貧困層の人々は気候変動の影響を受けやすいことが明らかになっています。この原因として、低所得の人たちは、地価が安いことから洪水被害を受けやすい地域に住む可能性が高くなることや、経済的にゆとりがなくエアコンなどの機器を十分に活用できないことから熱中症にかかりやすい環境に置かれる確率が高くなることが報告されています。

気候変動適応と持続可能な社会

国連は誰一人取り残さない社会の実現のためにアジェンダ2030を採択し、持続可能な開発目標SDGsを設定しました。気候変動のもたらす影響と社会経済活動が密接に結びついていることから、SDGsの推進の3本柱の一つに気候変動対策が取り上げられています。SDGsでは、気温の上昇を産業革命前の世界の平均気温より2℃低くさらには1.5℃までの気温上昇に届けることを見据えています。気候変動適応は、気候の変化と社会の変化に対する調整の過程です。よって、適応策を考える際には、緩和策を加味した気候の変化とあわせて、SDGsによる社会課題の解決の程度を踏まえながら、計画的に実施することが重要です。

出典:
国連広報センター
IPCC第五次評価報告書
NASA Global Climate Change

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