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夏休みの課題、いわゆる読書感想文的な流れ


ラスコーリニコフ 青年 想像画

 夏休みの自由課題、読む予定もないのに「読書感想文」と安易に書くのが定番だった。
 読むはずもないものを終業前に提出しているわけだから、休みが終わりに近づき頭を抱えるのは必然だった。
「名犬ラッシー」の時は、「ラッシーは賢い犬でした。」の一行で終わった。
「フランダースの犬」の時は、「悲しくて、やりきれなくて、泣いてしまいました。」と、また一行で終わってしまった。一行しか書けなかったのは、初めと終わりの数ページ程度しか読んでいないためだった。
 杉浦先生、ごめんなさい。半世紀はもう遠に過ぎて提出します。

「罪と罰」 ドストエフスキー著 工藤精一郎訳 新潮文庫
 19世紀、ロシアの文豪ドストエフスキー。
 で、いまさら? と言う感覚はあって、がしかし、妻との間で微妙に記憶の食い違いが生じていたため、そこら辺を確認したいと思って読み直し、いま正に新たな発見があった。

 第一部出だしから読み進めるのにつまづいた。
 歳のせいかもしれない。
 登場人物の名前が頭に入ってこないので誰が誰だかわからなくなって状況が把握できなくなった。
 なので名前をノートに控え、相関図を作成してみた。

1~2章
主人公 青年 ラスコーリニコフ 
質屋の老婆 アリョーナ・イワーノヴナ
老婆の妹 リザヴェータ・イワーノヴナ
退職官吏 マルメラードフ
その妻 カテリーナ・イワーノヴナ
その娘 ソーニャ・イワーノヴナ、 ソネーチカ(愛称)
妻を殴った男 レベジャートニコフ
マルメラードフのアパートの大家 アマリア・フョートロヴィナ・リッペヴェ・フゼル
五等官 けち クロプシュトーク、イワン・イワーノヴィチ
娼婦 ダーリヤ・フランツォヴナ
娘のアパートの大家 カペルナウモフ
閣下 イワン・アファナーシエヴィチ

3~4章
主人公 青年 ラスコーリニコフ 
ロジャー (愛称) ロジオン・ロマノーヴィチ・ラスコーリニコフ (フルネーム)
アパートの女中 ナスターシャ
大家 プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ
主人公の妹 ドーニャ、 ドーネチカ(愛称)、 アブドーチア・ロマノーヴナ(フルネーム) 家庭教師
妹の勤める家の主人 スヴィドリガイロフ
その妻 マルファ・ペトローヴナ
主人公の父の友人 アファナーシィ・イワーノヴィチ・ワフルーシン 地主か?
妹の婚約者 ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン

(書き写すだけでも一苦労であった。)

 フランス語には名詞に男性形・女性形があって未だに慣れない。
 注文する品によって1を表現する形が違う。
 例えば魚屋で「その鯛を欲しい。」時、魚: poissonは男性形なので本来「un(アン)」を用いるはずだ。「何匹欲しいの?」と問いかけられて「un(アン)」と答えると彼らには違和感を感じるのか「une(ユン)」と訂正される。鯛は女性名詞だった。
 パン一つとっても、細長いフランスパンBaguetteは女性形なのでune baguette、太めのフランスパンPainは男性形なのでun painとややっこしい。 40年以上も住んでいるプライドが弊害となって数冠詞「 2 」 以上を使って必要もないのに余計に注文することがある。
 無駄だし、ジェンダー論で騒がしい昨今、大丈夫だろうかこの言語形態?と不条理な不平を捏造する。

 で、話を「罪と罰」に戻すが、ロシア語には更に加えて、固有名詞「姓」にも男性形・女性形があるのでは?と読んでて疑った。
 主人公「ラスコーリニコフ」はフルネームを「 ロジオン・ロマノーヴィチ・ラスコーリニコフ」。
 妹は「 アブドーチア・ロマノーヴナ」、同姓なのに末尾が違う?。
 他の登場人物も末尾が、女性は「...ナ」で男性は「...ィチ」であった。
 推測が推測だけで終わって、勘違いだったじゃ済まされないから、サイトで確認すると間違いなさそうだ。

 ぼくには、鈴木 一成 君と言う友達がいる。
 ロシア風に呼ぶなら、
 「スズキッチ」である。
 彼の奥さんは「スズキーナ」である。
 これはきっと現代日本社会に利用できそうだ。

 と言うのも、自分の配偶者を紹介するとき「わたしの主人」とか「おれの奥さん」とか言ったりする封建制度・男尊女卑時代の名残りが通常だったりするからだ。
 最近の若い世代では女性に「お宅の御主人お元気ですか?」と世間一般の挨拶をしても、「彼は私の主人でも何でもない !」と違和感を覚え、腹を立てる人が多いのではないだろうか。
 なので「連れ」と言ってみたり、「伴侶」と言ってみたり、「パートナー」と言ってみたりと、みな呼び方に苦労している感じがする。
 単に「スズキッチ / スズキーナ さん元気ですか?」と聞けば「スズキッチ / スズキーナ、マジヤバ」と意味不明な返答が待っているかもしれないが、とりあえず「主人・奥さん・伴侶・つれ・パートナー」など表現を選ぶ必要もなく済むことなので便利だろう。

 などと余計なことを考えてしまって、読書は一向に捗らない。
 ようやく第一部終了。ラスコーリニコフ青年は行動を起こした。
 この先もしかして「罪とは?」、「罰とは?」と言うラスコーリニコフ青年の葛藤が展開されるかも。

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