見出し画像

【第37回】ヤフコメウォッチャー 北田

 新しい記事を出すのはとても久しぶりになってしまった。前作を公開したのは一昨年の8月下旬だから、1年と4か月ぶりくらいか。第29回から36回までは別アカウントで書くなど運営方針が迷走していたのだが、結局こちらのアカウントに統合し再公開した(スキやコメントをくれた皆さん、すみません… )。
 note界には「毎日更新」とか「毎週更新」を絶対の信条としている人も多いが私はそういうタイプではない。仕事でやってるわけじゃないんだし、自分の好きなタイミングで好きなことを書けばよいではないか、と思っている。で、最近また書きたくなってきた。
 このnoteはこれまで男女論的な話だけにテーマを限定してきたのだが、そればかりだと自分自身も飽きるので、たまには他の話題もとりあげていこうと思う。
 

 さて、今回はタイトルどおり、私がヤフーニュース及びヤフーコメントをよく見ている、というだけの話である。私のような人は世の中に大勢いると思う。なにせ日本のWebサイトアクセスランキングで「yahoo.co.jp」は「google.com」に次いで2位なのだそうだ(2021年時点)〈注1〉。おそらく検索エンジンとしてではなく、ヤフーニュースを見るためだけに開く人も相当いると思う。なぜこんなに人気があるのかと言えば、それはもうコメント欄の存在ゆえだろう。

 ヤフーニュースは記事本文だけでなくコメント欄もセットで一つのコンテンツのようなものである。いや、もはやコメント欄こそが真のコンテンツだと言ってもいいのではないか。私も含めて多くの人は、ある事件や出来事について、他の人たちがどう思っているのか、何を言うのかにとても興味があるのだ。コメント欄について昔から「誹謗中傷やヘイトスピーチの温床になっている」と問題視する声があるが、いまだ廃止に至らないのは、これをなくすとアクセス数がガクっと落ちてしまうからに違いない。

 特に有名人の炎上騒動に関する記事などは、最初からコメント投稿者、いわゆる「ヤフコメ民」に渦中の人物を叩かせて盛り上げる(ことによってアクセス数を稼ぐ)のを狙っているかのような書き方のものも多い。実際そうした記事には、まんまと乗せられたヤフコメ民による大量の叩きコメントが発生することになる。
 ここには、掲載元のメディア(「週刊〇〇」とか「〇〇オンライン」とか「〇〇スポーツ」など)とヤフーニュース運営側との共犯関係が見て取れる。
 低劣と言えば低劣なのだが、記事の内容に文句を言ってもしょうがない。ネットメディアは基本的に広告収入で成り立っており、読者は1円の金も払っていない。こうした記事が量産されるのは、我々がなんだかんだそれをクリックしてしまうからである。


 長年(とは言わず半年程度でも)ヤフーニュースをウォッチしていると、世の中の人がどんなニュースに関心があり、どんなニュースには関心が薄いのかがよくわかる。人々の注目の度合いは必ずしも出来事の深刻さに比例しない。
 「中東のどこかの国で爆弾テロがあり数十人が死亡」とか「アフリカのどこかの国で大洪水が発生し数百人が行方不明」といったニュースには数十件程度のコメントしかつかない。一方で「回転寿司屋でバカな高校生が醤油ボトルをペロペロ舐めた」などという一人の死者も出ていないニュースには、熱のこもったコメントが3000件とか4000件もついたりする。
 だから日本人はダメなんだ、と言いたいわけではない。どこの国の人もだいたいこんなものだと思う。人は、よく知らない遠い国で起きた大惨事より、有名人の不倫とか、身近なチェーン店で行われた不衛生ないたずらの方に強く感情を動かされるものなのだ。

 直近でアツかったのは「おじさんパーカー」論争だろう。昨年12月の一番盛り上がってた時には3000件以上のコメントがついた記事もあったと思う。「こんなのパーフェクトに無視でいいだろ」と思いつつ、私もけっこう関連記事を見たりして、妹尾なんとかって人の売名に乗せられてしまった… 。


 コメントを投稿するヤフコメ民たちには一定のキャラクターというか思想的傾向がある。2025年1月現在、思いつく限りあげてみると

・テレビや新聞といったオールドメディアへの不信感が強い(特に朝日新聞を嫌っている)
・嫌韓、嫌中
・K-POPブームを苦々しく思っている
・移民や外国人労働者の受け入れ拡大には反対
・フェミニズムの行き過ぎにはうんざりしている
・ポリコレの行き過ぎにもうんざりしている
・不倫には厳しい(最近は少し風向きが変わってきているかも?)
・いじめ加害者は断固許さない
・タトゥーが嫌い、不良とか反社っぽい人がとにかく嫌い
・「昔はワルかったけど今は更生しました」的なインタビュー記事には冷淡
・犯罪に対しては基本厳罰主義、死刑賛成
・薬物犯罪にも厳しい、大麻合法化には断固反対
・「海外と比べて日本はこういうところがイマイチ」といった比較文化系の記事には冷淡
・選択的夫婦別姓については賛成派と反対派が拮抗している印象
・皇室の秋篠宮家の動向には極めて敏感、やることなすこと全てに批判的

などなど。私が恣意的なピックアップをしている面もあるが、全体として保守的、道徳的に潔癖な傾向が強い気がする。2018年のデータによると、ヤフコメ投稿者の84%が男性であり、年齢層は30代後半から40代が特に多いのだという〈注2〉。たしかに文面や論調から言ってなんとなくそんな感じがする。2025年現在は年齢層がもう少し上にスライドしているかもしれない。

 したがってヤフコメ論壇がこの国の老若男女みなの意見を代表しているとは到底言い難い。が、無視できないレベルの影響力はあるように思う。先述のとおりヤフージャパンは国内最大手のニュースサイトである。「わざわざ投稿まではしないが、記事とともにコメント欄にもざっと目を通す」というライト層は非常に多いはずで、そういう人たちが知らず知らずのうちにヤフコメ的な論調に影響を受けている面は否定できないだろう。

 
 ここ数年、ヤフー運営側はAI及び人力での巡回に力を入れており、過度な批判や誹謗中傷にあたるコメントはできる限り削除するよう努めているそうだ。2022年11月からはコメントを投稿するには携帯電話番号の登録が必須となり、ついに匿名性が一段階下げられることになった〈注3〉。
 それでもなお辛辣なコメントが絶えないのが現状である。よく言われるように、どこまでが正当な批判や論評で、どこからが誹謗中傷にあたるのか、その線引きは極めて難しい。運営側だってネガティブなコメント全てを削除するわけにはいかないだろう。

 私の希望としては今後もコメント欄はなくなってほしくない。建設的な書き込みも多くあるし、ある職業に就いている人にしか知りえない業界事情とか、ある出来事の当事者にしか書けないリアルな体験談とか、興味深い投稿もたくさんある(ウソや誇張の可能性もあるので、話半分で読むべきではあるが)。
 また、匿名性の程度は今くらいで調度よいのではないかとも勝手に思っている。世の中には、素性を明かさない場だからこそ言える真実や真意というものが確実にある。社会について色々考える上では、当たり障りのない建前を表明するメディアだけでなく、人々の剥き出しの本音が観察できるメディアも少しはあった方がいいと思うのだ。

 ちなみに、これだけヤフコメ論を語っておきながら実は私自身はひたすら閲覧するだけであり、これまで一度も投稿したことがない。自分の考えは、こういう長い文章で世に出すのが好きなのだ。というわけで私のnote、今後もよろしくお願いします。



〈1〉『【最新】日本で人気のWebサイト訪問者数ランキングTOP50を紹介』
https://gmotech.jp/semlabo/webmarketing/blog/webusite_pooular/
〈2〉『「ヤフコメ民」はなぜ書き込む?携帯電話番号必須化で何が? 投稿者の考えは』
https://times.abema.tv/articles/-/10049345?page=1
〈3〉『ヤフーで"クソコメ"する人は半減したが…居場所を失いつつある「誹謗中傷したい人」の避難先』
https://president.jp/articles/-/67491

いいなと思ったら応援しよう!