HSPについてvol.1
「発達障害じゃなくてHSPらしいよ。」
「過敏なんだっけ,最近話題だよね。」
何気ない職場での会話でした。これを片耳で聞きながら「確かに過敏なんだけど,いろいろなことに気付けるし,過敏な人で終わらせたらもったいないよ!」と心の中で思いつつ,言葉が広まっているけれど理解はまだ十分ではないのかな…と思いました。この状況って誰が悪いわけでもなく,言葉が独り歩きしてしまっているだけですよね。
そこで!決めましたわたし!HSPについて勉強して,もっと理解する!そして理解が広がるように発信します!もうすでにたくさんの著書があり,分かりやすく説明された記事もある。でも自分で学んで発信することは,自己理解にもなるし児童理解にもつながるはずと思いながら・・・。HSPに関わる記事には「"繊細さん"の私とあなたが幸せになるために」とタイトルをつけてまとめていきたいと思います。
私自身がこうしてまとめるにあたっての愛読書がこちら。選ぶ言葉がとてもやわらかいので,読みやすいのです。
さて第一回目の今回は「HSPってどんな人?」。基本的な性質についてです。
HSP(Highly Sensitive Person)とは
日本語訳すると「とても過敏な人」や「繊細な人」,「感受性の高い人」と言われるこの気質です。後天的な病気とは違い,背が高いとか二重だとかと同じ先天的なものです。うつとも違います。
心理学者のエイレン・N・アーロン博士が研究を進め,1996年に著書が出版されました。これが2000年に日本語訳で出版され,日本にもこの概念が入ってきました。アーロン博士自身がHSPだそうです。自分の敏感さを弱さだと思ってきたところを心理療法で指摘を受けたことで,研究が始まりました。
このHSPという気質をもつ人が,今では5人に1人と言われます。HSPの人が増えたのか,この概念が認知されたために「私も…」という人が増えたのかは定かではありませんが,私は後者かなと思っています。
たとえばこちら。
HSP専門カウンセラーの武田友紀先生がHSPのことを"繊細さん"と呼び,著書が紹介されるようになってから,店頭でもHSPについての本が見える位置に並べられるようになったように感じます。非HSPの方の目にも留まるところに売られているからこそ,それが言葉の独り歩きではなく,正しい理解につながるようにしたいですね。
必ずもっている4つの面
1つでも当てはまらない場合は非HSPだそうです。
❶深く処理をする
自分が何気なく考えたことを言うと「考えすぎだよ~」とか「深いね~」と言われる場合,これに当てはまるかもしれません。瞬時に様々な情報を受け取るので,表面的なことをより本質を考える傾向にあります。
❷過剰に刺激を受けやすい
聴覚過敏など特定の物に対してではなく,音も光も温度も,そして相手の感情もすべて刺激となります。刺激が多すぎて疲れてしまうこともあるので,静かな時間・一人の時間・暗い場所などで刺激を消化する時間が必須です。
❸感情反応が強く、共感力が高い
共感力が高さから,相手がどう思っているのかをなんとな~く感じたり,相手の気持ちが自分に乗り移っているような感覚になったりすることがあります。ミラーニューロンという「共感を生む働きをするといわれている神経細胞」の活動が活発だからだ・・・とか。
❹ささいな刺激を察知する
「なんか変な臭いがするよね・・・」と言っても共感されづらい変化に気付いたり「あっ!××さん今日調子悪そう・・・」と表情や雰囲気から察したりできます。小さな変化や細かな現状にも気付くことができるので,これが結果的に❷につながるということになります。
もしかして私ってHSP気質?なんて感じた方は,ぜひチェックしてみてください。
HSS型HSPやHSC
HSPには,外向的タイプ・内向的と外向的併存タイプ・内向的タイプ…と様々なタイプがあります。HSPだからといってみんながみんな内向的なわけではないのです。
特に外交的なHSPの中にHSS型という気質があります。HSSとは《High Sensation Seeking》の略で,HSS型HSPは刺激を追い求める×繊細さんといえるでしょう。
また,HSCは《Highly Sensitive Child》で繊細な子どものことをいいます。これが発達障がいと勘違いされやすいそう。大人であれば一人の時間をつくるなどして刺激を流すこともできますが,子どもであると受け取った刺激をどうしていいかわからず多動になったり,集中力が散漫したりしてしまうのです。このような子の理解や支援のしかたも学んでいきたいと思います。
私もHSPの一人
昨年の初めころ,都内での研修の帰りに寄り道した某本屋さんでこの本に出会いました。
この頃の私は,NPOの活動に参加して「“自分嫌い”をちょっと克服した!」と思いながらも,人の気持ちと自分の気持ちが区別できなかったり,自分がどうしたいのかがよく分からなかったりと,もやもやしながら生活していました。人と関わるたびに自分の中身を探しては,見つからず。
「真面目だね~」とか「考えすぎ」とか言われてもしっくりしない。
そういうものは,生まれ育った環境や過去の経験が今の自分をつくったものだと勝手に思っていた私にとって“HSP”という言葉は衝撃的で,はじめの数ページを読んで「私のための本だ!」と即買いでした。
HSPの方って目の前の「なんとかしなきゃ!」と思いすぎて自分の無力さに,自己肯定感が低くなることが多いのです。でもこの本に出会い,HSPの概念を知るなかで
●なんでもかんでもしなくてもいいんだ。
●この気持ちは私のものではなくて目の前の××さんのものだ。
●悩んでいるのは私だけじゃなかったんだ。
と思えるようになりました。相手の表情がくもっていても私が原因でない場合もある。引きこもりたくなった時,それは受け取りすぎた刺激を流すための時間として必要なんだ。ひとつひとつを納得させていくことができたのは,今の状態の原因が過去ではなくて,生まれもったものだと思えたからだと思います。
つい先日も。夏休みになった学校は個人懇談に,職員会議に刺激の宝庫です。睡眠不足が重なって,自分と他人の境界線がゆるんでいました。謝れれば謝れるほど私も申し訳なくなるし,遠くで聞こえる小さな愚痴が私の心の中でもやもやと大きくなっていく。周りに飲み込まれている・・・!と気付けたので,昼食を一人で食べたり,眼鏡で物理的に境をつくったりできました。また私がHSPであることも数人が知ってくれているので,安心して過ごせています。
知っていると行動できることがたくさんあります。その行動で自分を守ることができるし,結果的に相手ともポジティブな関係を続けていくことができます。
HSPという概念が広がることが,HSPである"繊細さん"にとって逃げるための手段ではなく,心が軽くなる考え方のひとつになってほしいなと思います。
ここまで長らく読んでくださった方,ありがとうございました!
次回は4つの面について,もう少し詳しくまとめます◎