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心のヨロイを脱いで脱がせる?:読書の記録『「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方』下間都代子

声から根が生えているのを見たことがありますか?
根がびっしり張って、その声は、風が吹こうが雨が降ろうがびくともしない。
「頭のてっぺんから声が出ている」みたいな例えはときどき聞くけれど、上じゃないの、下なんです。強力な根っこがびっしり。

ご縁あって、フリーアナウンサーでナレーターの下間都代子さんと直接お話ししたことがある。スピーカーから聞く声からも根を感じていたが、直接聞く声には、ラピュタのような立派な根が生えているのが見えた。

すごい安定感。
揺れない、ブレない。

都代子さんのことをよく知っているわけではないけれど、お悩み相談をしてしまいたくなるような感覚になった。一気に信頼した。というか、今こんなことでモヤモヤしていて……と話してしまったこともある。
(それは声だけではなく、都代子さんの全体の雰囲気の力でもあると思うけど。)

その都代子さんが本を書かれたということで、さっそく読んでみた。

『「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方』日本実業出版社

表紙にこうある。

声には「人柄」が現れます。
話し方には「人間性」が現れます。

……こわ。

声を出して話すという行為は、ある程度無意識だからこそ恐ろしい。
知らないうちに、自分の人柄や人間性を発信しているだなんて。

本書はボイストレーニングの教本ではなく、意識的に声と話し方を相手や場に合わせてコントロールする技術が解説されているもの。

声の出し方に加えて、相づちの打ち方、抑揚のつけ方、質問の仕方などが解説され、うーん、これ全部やるの大変だなと思いながらも、ひとつずつやってみようと思わされる。

ポイントは、相手の心のヨロイを脱がせることだそう。相手が心のヨロイを脱ぐということはつまり、信頼されているからこそ、ということ。そのためには、自分が先に脱ぐのだというアドバイスもおもしろい。私、ヨロイでがっつり防御していないかな、と振り返るきっかけになる。実際、そんなこと考えたことはなかった気がした。

終盤、「品」と「毒」について書かれていた。
この部分が最も印象的だった。

声にはその人の「人柄」が現れ、
話し方には「人間性」が現れる。
そこに【品】のあるなしも感じられる。

(P259)

ああ、もう、難しい。
こんなにいろんなこと気にしていたら何も言えなくなる……と思ったところで助け舟。

信じてついていきたくなる人は、「完璧なまでに品が良い人」なのか? というと、必ずしもそうではないと思う。

(P260)

とのこと。
そうそう、確かに「完璧なまでに品が良い人」に必ずしも魅力を感じるかというとそこは疑問。遠くから見て素敵と思ったりはするだろうけれど、信頼感をもってお近づきになりたくなるかというと、そうとも限らないのかもしれない。
そして、

「華やかで、品があり、少しの毒がある」
この3つがバランスよく備わった人物が求められている

(P261)

「毒」が強すぎれば下品になる。
同じ「毒」でも、「少しの毒」を絶妙なタイミングで使えるバランス感覚を持っている人が信頼される人となる。

(P266)

うん、やっぱり難しい。
頭で考えてテクニックとしてできる部分もあるのかもしれないけれど、結局それが自分のものになって無意識にできるようになったときに、自分の個性の一部になるのだろう。

信頼される人を目指すにあたり、どんなことに気を配り、どんな練習をし、どんな技を出せば良いのかは分かった。さて、では何からやってみるかな。今日はこれ、とか、今週はこれ、というように、少しずつトライするのが良さそう。そして自分にインストールされ、無意識にその技を操れるようになることを目指そう。

都代子さんのような根っこの生えた安定ボイスを手に入れるためのテクニック本ではないけれど、信頼感あふれる彼女に少しだけ近づける、ヒントがたくさん詰まった本だった。

まずは、「自分の声を自分の耳で聞く」からトライ。

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