雨畑地域のダム問題~ダムによる水害について~
はじめに
2022年9月2日に雨畑地域の望月さんにお話を伺った。主に地域コミュニティや集落の水環境のことでインタビューを行ったが、その中でも雨畑ダムが集落を危険にさらしているお話に関心を持った。この記事では雨畑ダムに対する住民の今までの活動についてまとめていく。
ダムの問題点について
まずは望月さんたちが住む雨畑地域のダム問題について整理する。雨畑地域ではダムの堆砂率(総貯水容量に対する堆砂量の割合)が問題になっている。この堆砂率が雨畑ダムでは120%台(※望月さんのブログ親爺日記より/2021年5月28日/対協便りNo.32) であり、2018年10月の台風では床上浸水が起こった家屋もあった。早川町全体でも河川に関する問題が起こっており、川の流量の減少問題や、水質問題などがある。しかし、雨畑地域ではこれら2つの問題よりも、まずはダムの堆砂率の改善が自分たちの安全の確保のためにも急務だと危機感を募らせている。
雨畑ダムは、アルミニウムをつくる会社である日本軽金属が発電目的で設置したダムである。堆砂問題解決に向けて、望月さんはグループを作り企業や行政に様々な場で質問や要望を伝えたが、明確な回答は得られなかった。
※親爺日記:望月さんは親爺日記というブログに本村区ダム堆積土砂対策協議会(対協便り)の記事を掲載している。
望月さんの活動
望月さんは集落の住民で堆積土砂対策協議会を結成し、代表を務めている。前述のとおり、この協議会の目標は自分たちの集落が水に浸かるという事態を避けることである。協議会は関係各所との連携や面談、協議会便りの発行などを行っている。また、望月さん個人では河川の状況などについて、ブログやフェイスブックに定期的に記録や画像を載せ続けてきた。これらの活動が功をなして、知り合いや新聞社、国会議員、山梨県知事が問題を認知してくれるようになった。その中でも山梨県知事である長崎知事や中谷真一衆議院議員は現地まで視察に訪れ、住民との対話を行った。長崎知事は視察を終え、「地元に対してどれだけ迷惑をかけているのかあまりにも鈍感なのではないか」とコメントを残し、中谷真一議員も「県や(ダムを管理する)日本軽金属と連携し、問題解決に向けて取り組みたい」とコメントを残した。(親爺日記対協便りNo.20とNo.33より/2019年11月29日/2021年7月30日)
他にも中島克仁衆議院議員も「土砂撤去計画に対する国の関与をただす質問主意書」を提出したり、集落を視察して住民との意見交換を行ったりした。(親爺日記対協便りNo.32より/2021年5月28日)
これらの出来事から日本軽金属の堆砂対策は大きく進み、現在では三か年計画を立て、対策協議会と連携を取りながら順調に土砂を搬出しているそうだ。他にも砂利業者とも連携が取れるようになり、砂利の搬出方法に関するところまで対策協議会と打ち合わせを行うようになった。
このように望月さんの活動を通じて、雨畑地区の河川問題を取り巻く環境は改善の方向に向かっており、このことについて望月さんは「6年前の(水利権)更新時に物申さなかった我々地元の責任は重い。その後、長崎知事・国交省・与野党国会議員・メディアのご尽力により現在に至っている。」と自身のブログ内でコメントした。(親爺日記2021年9月1日)
活動を続ける思い
こういった活動を続ける思いについても望月さんは語ってくださった。前述した2018年の台風による水害で移転する家も出たが、それでもその周辺の人たちは我慢して暮らしていた。実際に天気予報で台風や大雨の予報が出た場合には、前の日に町外の子や孫の家へ毎回避難をしている。望月さんはこの人たちとの会話から活動の決意を固めたそうだ。(以下インタビューより抜粋)
【もう無理をしちょしと。補償をとって、出てくのもありだよと。 そしたらね、「ありがとうありがとう。」と。「だけどね、ここは良いところだから、もうぎりぎりまでね、住んでいたい。」って。そんな話聞いちゃうとね、もう俺たちが力強く立ちむかわなきゃ。僕ならね、ダムサイドのあんなとこだったら、もうとっくに出てますよ。だけどね、それでもここへぎりぎりまで住みたいって言われるお年寄りの話聞いちゃうとね、黙っておられんですね、うん。】
このように望月さんは地元を離れたくない方々のためにも、現状を変えなければいけないという強い思いを持っている。
おわりに
今回のインタビューでは、雨畑ダムの堆砂問題の影響を大きく受けている立場の方からお話を伺った。活動の始まりから結果や思いまで、一連のお話を聞くことができ、1人のお話からこんなにも多くのことを学べるのかと驚いた。早川町の河川全体を見てみても、他に多くの課題を抱えているが、他の立場の方や活動家の方からのお話も聞いてみたいと感じた。
(担当:山口)
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