
わたしたちの日常は、外国人観光客には非日常かもしれない、という仮説
山梨県南アルプス市で、外国人観光客向けの観光ツアーをつくってみようという実験プロジェクト。先日、新聞記者の方から取材を受け、プロジェクトのねらいや概要を説明しました。
お伝えするのが難しかったのが、このプロジェクトの考え方です。
「南アルプスには外国人に見せたい観光資源がある。だから外国人観光客を呼び込もう」という発想ではありません。
「そもそも、私たちが考える観光資源と、外国人観光客にとって楽しい観光資源はまったく違うものかもしれない」という仮説に基づいています。
そもそも何が観光資源なのか。
それを決めるのは、観光ツアーを実施する主体(ツアーオペレーター)ではなく、ツアーを体験する(した)お客さんである、という考えです。
取材には市民の方が同席してくださいました。
「東京の公務員の方が、わざわざうちの農園にボランティアをしにくる。週末は天気が悪いから農作業を休もうかなとわたしたちが思っても、その方はボランティアに来たいと言う。きっと楽しいんだと思う」
「私たちが当たり前だと思っていることが、外国人観光客には当たり前じゃないかもしれない。私たちにとっての日常が、外国人観光客には非日常なのかもしれない」
などと記者の方に力説しているのを感心しながら聞いていました。
このプロジェクトは、佐藤さんと三浦岳人さんの思いつきと意気投合から始まりました。仮説は、この2人の経験知から生み出されたものです。
佐藤さんは、南アルプスでWAKAMONO大学を主宰し、古民家を活用したコミュニティスペース「Yolo 宜 sawanobori」を地元の仲間と共に運営しています。
三浦さんは、東京で外国人観光客向け自転車ツアーを主宰し、そのツアーは、Trip Adviserという口コミサイトで、日本で体験したいツアーベスト10に選ばれています。
もちろん外国人観光客に、日常をそのまま見せればいいというものではないでしょう。その日常を特別なものとして感じてもらうには、きっといろいろな工夫が必要です。(三浦さんがサポートしてくださるのはここです)
ただ、プロジェクトの原点は、市民のみなさんが外国人観光客に来てほしいと思うのか、来てほしいなら何をどう見てほしいのか、にかかっています。
7月の勉強会では、この点を議論したいと考えています。
この記事は、山梨県立大学地域研究交流センターの運営委員である兼清慎一が書きました。(2018年7月9日)