見出し画像

コーヒーのフォースウェーブはまだ来ない

なぜなら、サードウェーブの波がまだ完成していないから

「フォースウェーブコーヒーとは何ですか?」

たまにインタビューなどで聞かれるこの質問に、僕は「フォースウェーブはまだ来ない」と答えています。理由は簡単で、なぜなら、サードウェーブがまだしっかりと浸透しておらず、コーヒー業界の中で定着していないから。

次の波に進むためには、まずはサードウェーブの理念を根付かせる必要があります。


コーヒーの「ウェーブ」を振り返る

まず、これまでのコーヒー業界の「ウェーブ」について簡単に振り返りましょう。

ファーストウェーブコーヒー
インスタントコーヒーや缶コーヒーの登場により、大量生産されたコーヒーが手軽に楽しめるようになった時代。ネスレなどの大企業が市場をリードし、コーヒーが日常的な飲み物として世界中に普及しました。

セカンドウェーブコーヒー
スターバックスやピーツコーヒーが代表するこの時代では、コーヒーが単なる飲み物ではなく、「体験」として消費されるようになりました。エスプレッソやラテなどが登場し、カフェ文化が広がり、コーヒーがコミュニティの中心的な存在になったのです。

サードウェーブコーヒー
トレーサビリティ(追跡可能性)やサステナビリティ(持続可能性)、公平な取引に焦点を当てたムーブメント。コーヒー豆の品質だけでなく、生産国の生産者たちの生活を改善することを目指しました。消費国が生産国を搾取する従来の構造を変えようと、直接取引やフェアトレードが重要視されました。


サードウェーブの理想と現実

サードウェーブのムーブメントは、コーヒー業界に大きな理想を掲げました。トレーサビリティ、サステナビリティ、そして生産者と消費国の公平な関係を構築するという理念のもと、ブルーボトルコーヒーやスタンプタウンコーヒーといったブランドが先駆者として立ち上がりました。

彼らは生産者との直接取引を促進し、公正な価格を支払うことで、コーヒー業界をより透明で持続可能なものにしようとしました。しかし、その志を抱きながらも、現実には資本主義の波に飲み込まれてしまいました

象徴的な例が、ブルーボトルコーヒーのネスレによる買収です。創業者が描いた理想とは裏腹に、巨大なコングロマリットの一部となることで、その理念が薄れていく姿は、サードウェーブの現状を如実に表しています。同様に、スタンプタウンやインテリジェンシアもまた、大手企業に買収され、創業者が去ったことで、当初の理念が形骸化していく状況を迎えています。

この流れは皮肉なことに、ファーストウェーブを象徴するネスレ、セカンドウェーブを牽引したスターバックス、そしてサードウェーブの旗手だったブルーボトルが、結局すべてネスレに収束してしまったという構図を浮き彫りにしています。

結果として、サードウェーブはその理念を完全に実現するには至らず、消費者の日常に深く浸透したとは言い難い状況です。このままでは、サードウェーブが資本主義の仕組みの中で薄まり、次の波、フォースウェーブへの道筋も描けなくなる可能性があります。


二極化するコーヒー市場

在のコーヒー市場は、低価格チェーン超高級コーヒーの二極化が進んでいます。

ラッキンコーヒーのような低価格チェーンは、安価で手軽なコーヒーを大量に提供し急成長していますが、環境や生産者の負担を軽視した工場型農業に依存していることが少なくありません。化学肥料や農薬の多用によって土地が荒れ、生産地が次々と変わるという悪循環が生じています。

一方、コンペティションロットに代表される超高級コーヒーは、主に一部の生産者やマーケットに限定されています。スペシャルティコーヒーが牛肉の「サーロイン」だとすれば、それ以外の部位にあたるコーヒー豆を誰が買い支えるのかという課題が浮き彫りになっています。

さらに、COE(カップ・オブ・エクセレンス)やオークションロットなど、味のスコアで評価されるコーヒーは注目されていますが、高得点がサステナブルを意味するわけではありません。これらの基準は味に特化しており、生産過程での環境負荷や生産者の労働環境といった重要な要素は評価の対象外となっているのが現状です。

味だけではなく、トレーサビリティやサステナビリティを含めた新しい基準が必要です。コーヒーの未来を真に持続可能なものにするには、生産者から消費者までをつなぐ仕組みを再構築する必要があります。

サードウェーブが掲げた持続可能性公平性といった理念は、この二極化の中で薄れつつあります。理念の実現が進まない限り、フォースウェーブは訪れません。市場全体でサステナブルなモデルを広げ、次のステップへの基盤を築くことが今求められています。


希望の光を見つける

それでも、世界を見ると完全に希望が失われたわけではありません。

例えば、北欧のコーヒーコレクティブ(Coffee Collective)は、その好例です。創業者たちは現在も当初の理念を堅持し、生産者とのフェアな取引を続けています。彼らは毎年トランスペアレンシーレポートを公開し、購入したコーヒー豆の価格や、生産者に支払った金額を詳細に公表しています。これにより、消費者は自分たちが購入するコーヒーがどのような経緯で手元に届くのかを知ることができます。

さらに、コーヒーコレクティブは持続可能な農業を支援するために、生産者と長期的なパートナーシップを築いています。彼らは適正な価格でコーヒー豆を購入するだけでなく、農業技術の向上や環境保全の取り組みにも積極的に関与しています。これにより、生産者の生活水準の向上と環境への配慮を両立させています。

店舗展開においても、彼らは地域に根ざした活動を重視しています。コペンハーゲンを訪れた際、彼らの店舗が単なるコーヒーショップではなく、地域コミュニティのハブとして機能していることを実感しました。店舗デザインやサービスにも独自性があり、コーヒー文化の浸透に大きく貢献しています。


次の波を作るために

フォースウェーブが来るためには、サードウェーブの理念がしっかりと定着し、浸透することが不可欠です。しかし、この大きな波に立ち向かうためには、同じ志を持つ小さな波が集まり、一つの流れを作り出す必要があります。

サードウェーブが資本主義の波に飲み込まれ、薄れつつある今だからこそ、再びその価値を強調し、本質的に実現するための取り組みが求められています。

日本は、世界的に注目されているコーヒー市場の一つです。個人経営のコーヒーショップ文化がまだまだ強く、他国のモデルとなる可能性を秘めています。

Kurasuもまた、その一翼を担う存在として、指標となれるブランドを目指しています。持続可能な生産者との取引、生産国への再投資、そしてアジアのコーヒーにも光を当てる取り組みを通じて、日本から新しいムーブメントを発信していきたいと考えています。

同じゴールを共有する仲間たちと共に、日本がサードウェーブの理想を実現する場所、さらにはフォースウェーブの新しい波が起こる発信地となる可能性があります

コーヒーの未来は、今ここにいる私たちがどう行動するかにかかっています。


Kurasuと一緒に未来を描きませんか?
Kurasuは、コーヒーを通じて世界中の人々の暮らしを豊かにするというビジョンを共有できる仲間を探しています。

「コーヒーを通じて、持続可能な未来を築きたい」「Kurasuの理念に共感し、共に挑戦したい」という思いを持つ方をお待ちしています。
興味のある方は、ぜひ私たちと一緒に次の波を作りましょう!


いいなと思ったら応援しよう!