雨の日のショパンはこれ? 〜ショパンの恋物語
今朝も朝から雨で、少し憂鬱な気分のスタートとなりましたが、ショパンのワルツ第9番作品69-1の譜読みをしました。
雨と言えば、ショパンなら前奏曲集の「雨だれ」が有名ですが、あまりに暗すぎて朝から弾く気になりません。それほど好きな曲でもないので、初心者向きとされていますが弾いたことがありません。
ワルツ第9番は「別れのワルツ」とか「告別」と呼ばれていますが、ショパンが同郷の幼なじみであったポーランド貴族の娘、マリア・ヴォジンスカに贈った曲です。
1935年、ショパンが25歳の時に両親と再会した旅の帰りに、ドレスデンで旧知であった伯爵家に滞在し、9歳下のマリアと恋に落ちて婚約しました。
病弱だったショパンとの結婚に反対したマリアの親族の反対によって婚約破棄をされて叶わぬ恋となってしまったので、このようなタイトルがつけられたようです。
ショパンは自分の音楽に表題が付けられることを嫌っていましたので、もちろん彼自身の命名ではありません。
没後に出版された時に、´L'adiu'「別れ」というタイトルがつけられました。
曲調は、メランコリックな中にも甘い夢見るようなメロディに、喜びの表現、優しく腕に包むようなダンスなどを想像させるパートがあります。
「愛のワルツ」の方がふさわしい気もしますが、遺品の中にも「我が悲しみ」と題されたマリアと交わされた手紙の束が残されていたショパンの心情を思うとこのタイトルでもいいかなと思います。
因みにこの頃すでにショパンは運命の人ジョルジュ・サンドとは出会っており、失意の中に後に伴侶(今風に言うとパートナー)となったこの女性が入り込んで来たように感じられます。
少し弾いてみて、Espressivo (表情豊かに)と表記される冒頭の主題旋律がロンドのように繰り返される度に揺らぎと陰影が、ためらいがちな恋心を表しているようで、その世界に惹き込まれます。
美しく成長した16歳のマリアと出会えて喜びに跳び上がらんばかりの副主題1、そして尊敬と愛で答えるまだ若い女性の手を取って優しく包むような踊りを表すかのような副主題2そして目眩く恋の展開部。
表題を拒否するショパンが、いかに心のひだを音符に表したかは実に逆説的です。
演奏後に検索してみると、想像力の無い人を嫌ったであろうショパンの気持ちにとても残念な音源が溢れていてとても残念です。
技術的には難しくないので、いずれレパートリーにしたいと思います。
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