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八重垣大明神 Part 4 見付からない鍵の向こうに幽霊が出る

●関係者に対する取材の開始

 ここまでのレポートが、私の集めた八重垣大明神にまつわる資料の摘要となります。(摘要にしては長いですね。すみません。)
 変わって、ここからのレポートが、八重垣大明神の関係者に対して私の行った取材の摘要となります。(また長いです。すみません。)

 お糸や八重垣姫の呪いを否定したとしても、八重垣大明神が依然として金網に閉ざされた怪しい神社であるという点に変わりありません。呪いの事実がないなら、金網を外し、鳥居を立て、誰もが自由に参拝すれば良い。何なら鳥居を奉納しようか。そう考えた私は、まず金網の鍵と社地の所有者を探しました。

八重垣大明神の金網です。奥に見える青いビルは関西テレビです。


●鍵が見当たらない ー 2018年(平成30年)2月

 天満堀川の来歴の抜粋を再掲します。

 5)1934年・・・・大阪市水道局扇町庁舎の竣工
            (八重垣大明神の向かい)
 6)1956年・・・・日本道路公団の発足
            (東京都)
 7)1959年・・・・阪神地区高速道路協議会の
            発足
            (大阪府)
 8)1961年・・・・阪神高速道路公団の発足
            (大阪府)
 9)1966年・・・・阪神高速道路12号守口線の
            建設に先立つ
            八重垣大明神の数十mの遷座
            (八重垣大明神の現社地)
10)1966〜8年・・天満堀川の埋め立て 及び
            天満堀川の埋立地に
            阪神高速道路の建設
            (天満堀川)

 来歴の(9)をご覧になってください。1966年(昭和41年)に始まった阪神高速道路12号守口線の建設に先立ち、高速道路の予定地に鎮座した八重垣大明神を現在地へと遷座したというのです。(取材を始める前に根拠のない噂として知っていましたが、取材を進めるうちに関係者から事実であるとの証言を得ました。)

 これが事実であるなら、鍵の所有者は大阪市だろうと思い、大阪市に八重垣大明神の管理者を訪ねてみました。応じてくれた市の職員によると、管理者は大阪市某部署(伏せます)だと思われるので、詳細は某部署を訪ねてほしいとのことでした。

 教わった電話番号をメモに取り、某部署に電話を掛けました。すると、X氏(伏せます)という若い男性の職員が応じてくれました。

 吉野「お忙しいところを恐れ入ります。
    私は大阪市北区に在住の吉野と申します。
    社寺や土地の歴史を研究しておりまして、
    立ち入りの許可を得たい神社があります。
    扇町公園の南端に鎮座する
    八重垣大明神の鍵を開けていただけませんか」

 X氏「承知しました。
    確認を行いますのでお待ちください」

   (数分の保留)

 X氏「お待たせしてすみません。
    あちらの鍵は阪神高速道路株式会社の
    所有と思われます」

 言われてみれば確かにそうなのです。八重垣大明神を囲む金網は高速道路の設備をも囲んでいますので、管理者が阪神高速道路株式会社であってもおかしくないのです。
 私は次いで阪神高速道路株式会社に電話を掛けてみました。

 吉野「お忙しいところを恐れ入ります。
   (以下同文)」

 職員「承知しました。
    確認を行いますのでお待ちください」

   (数分の保留)

 職員「お待たせしてすみません。
    あちらの鍵は大阪市の所有と思われます」

 困りました。鍵が見当たらないのです。つまり、近年に誰も八重垣大明神を参拝していないのでしょう。これでは神社として鎮座する意義がないに等しいです。

 私は大阪市某部署に電話を掛け直し、阪神高速道路株式会社にも鍵のなかった旨を伝えました。

 X氏「承知しました。
    ひとまず鍵の在り処を特定してみます。
    必ず報告しますから、
    もうしばらくお待ちいただけますか」


●鍵が見付かった ー 2018年(平成30年)3月

 約2週間の過ぎた頃に、X氏から折り返しの電話が掛かってきました。

 X氏「吉野さん、鍵が見付かりました。
    阪神高速道路株式会社の事務所で
    見付かりました。
    鍵を仕舞うケースの中に1本だけ
    良く分からない鍵があったらしく、
    調べてみたらそれこそが
    八重垣大明神の鍵でした。
    先日にうち(大阪市某部署)が
    錠と鍵を新調しましたので、
    取り急ぎ伝えておきます。
    吉野さんの立ち入りについては
    明日に協議を始めますから、
    もうしばらくお待ちいただけますか」

 ようやく取材が進むと期待したものの、この後に連絡が途絶えてしまいました。しかし、私も一応は分別の付く大人です。鍵の掛かった市有地への市民の立ち入りが難儀なのだろうと、私は立ち入っての取材を諦めようと思いました。それに、現地に立ち入らずとも出来る取材がある。そう考えまとめた内容が、Part3までのレポートの基となりました。

 ところが、約2か月の過ぎた頃に、X氏から信じ難い電話が掛かってきたのです。

 X氏「お待たせしてごめんなさい。実は…」

 吉野「私の立ち入りに
    許可が下りなかったのですよね?」

 X氏「左様です」

 吉野「わざわざありがとうございます。
    私こそ、色々とお手数を掛けさせて
    すみませんでした」

 X氏「…いや、それがですね、
    吉野さんを金網の向こうへ
    立ち入らせられない理由がありまして…、
    こうして電話を掛ける僕も
    にわかに信じ難いのですが…」

 吉野「理由って、何ですか?」


●幽霊が出るから取材NG ー 2018年(平成30年)4月

 X氏「実は、幽霊が出るんです…」

 吉野「え?」

 X氏「万一の事態が起こった場合に、
    我々(大阪市某部署)は
    市民のあなたを助けられないので、
    立ち入りを止めてほしいとの
    話にまとまりました。
    八重垣大明神に対するこれ以上の調査を
    控えていただけませんか」

 これには驚きました。この時の気持ちを有り体に書くと、21世紀に市の職員が幽霊を理由に市有地への立ち入りを拒むなんて、何を訳の分からぬことを言うんだと思いました。

 吉野「幽霊って、何のことですか?
    詳しく聞かせていただけませんか?」

 X氏「僕にも分かりません。
    僕の上司の上司にあたる人物によると、
    その方が現役の職員だった頃に、
    大阪市水道局扇町庁舎で幽霊騒動が起こり、
    どうもその原因が八重垣大明神らしいんです」

 吉野「その幽霊と八重垣大明神が
    どう関係するんですか?」

 X氏「それも分かりません。ただし、
    現れた幽霊を祓った神社なら分かります」

 吉野「その神社はどちらですか?」

 X氏「Z神社です」(伏せます)

 私がZ神社に対し取材を行っても良いかと尋ねると、X氏は構わないとの返答に併せ、連絡の途絶えた約2か月の間に判明した八重垣大明神にまつわる二つの情報を教えてくれました。

 一つは八重垣大明神の社地に限り所有者が市であることです。上物(うわもの)の造作物は史跡の扱いらしく、市民の持つ共通の財産に数えるのだそうです。また、史跡であるために住居表示を持たず、不動産の登記に用いる地番で管理を行うのだそうです。

 もう一つは阪神高速道路12号守口線の建設に先立ち、予定地に鎮座する八重垣大明神を現在地へと遷座した噂が真実であることです。ただし、当時はコンピュータが存在せず、図面などの書類が余りにも膨大となるために、市の経理局長から阪神高速道路株式会社に対し建設に必要な用地を払い下げた際の証明書のみを保管するのだそうです。したがって、1966年(昭和41年)以前の八重垣大明神の明確な位置を示す資料や図面は現存しません。

 余談ですが、幽霊騒動の起こった頃の大阪市水道局扇町庁舎の職員に、私の親類がいます。

「Part 5 見付かった骨は幽霊の遺物か」に続きます。
https://note.com/yoyoyonozoo/n/n6af18e2deb80

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