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留置所ルーティーン
朝六時 起床
女警察官達の声かけで一日が始まる。
被疑者各自が布団を檻の外へ片付けると、直ぐに渡される歯ブラシ、石鹸、タオル。全てに自分の番号が書かれていた。
毎朝一番にこれを見るなんて、確実に精神衛生上良くないと感じた。
新人は歯磨きの順番が一番最後である。私は順番が回って来ると歪んだ鏡を前に、白目を剥いたり、口をニヤニヤさせながら歯を磨いた。そうすると何だか全部がギャグに見えて、自分を保てたからである。
七時 朝食
部屋に敷いたござの周りに四人集まり、弁当が檻の窓から投入されるのを待つ。まるで動物園の猿だ。
この朝ご飯が朝昼晩の中で最も不味い。ぬるい味噌汁(粉のような物が溶けていない)、冷たい白飯、よく分からない練り物と漬物。
朝の弁当を全て完食している人を私は見る事は無かった。同部屋の一人が毎朝漬物のみを切なそうな顔で食べていたのが印象的である。
十二時 昼食
唯一昼食が楽しみと言う人が多く居た。
その理由は主に”パン”である。パンはパンでもコッペパンが二つ。ふにゃふにゃの揚げ物一つ。それと昼だけは日替わりのジュースが出た。
私は香料で誤魔化された果汁20%程のジュースが嫌いな為、これを飲む事は無く
”お湯とコッペパン”という昼食が二週間続いた。
ホンモノの薬物中毒者は留置されてしばらくすると、代用の依存物を必死に見つけ出そうとする。その対象が砂糖や小麦になりやすく、クソヤバい形相でコッペパンにありつく、なんて事もある。
夜六時 夕食
弁当の蓋を開けると、基本的におかずが中で乱雑に配置されていた。弁当自体を雑に扱っているのが分かる。
食事中に部屋の人間と会話をしようとすれば担当に指摘を受け、今思うと、そんな環境下で食べる弁当の味は殆どしなかった。
ただ決して美味しくないとしても、シャバに居た時以上に、食材へ思い切り感謝した。
焼き魚をつついている時、こんな残酷な人間達に作られて食べられてごめんね、本当にありがとう…という気持ちに陥りがちだった。
九時 就寝
健康的で良いとも思えるが、昼間ずっと檻の中に篭っている訳で、当然エネルギーが余り過ぎている。平均して四時間はまず眠れない。
私が居た女留置所では、就寝前に睡眠薬や導入剤を服用している人が多く居た。
薬を飲む際、担当が規定量を此方に手渡して確認をする。
それを舌の上に乗せ、口を開け、所謂フェラ顔の様な状態を担当に見せなければいけない。檻越しに見下ろされた状態で
「はいいいよ」と許可を貰えないと薬を飲んではいけなかった。仕方ないのだが、本当に屈辱的でクソみたいな時間だった。
アーティストが希に見せる錠剤を舌の上に乗せたままガンを飛ばす表現(?)あれが此処から来てるのか確かでは無いが、何となく繋がった気がした。 自分も担当に薬を確認させる時、まぁまぁ敵意丸出しな顔をしていたと思う。
調べや外出が無い日の要所をまとめると、こんな流れである。
留置所内での一日に予め組み込まれているものは、ほぼ三度の食事時間だけである。
食事以外の時間は、物一つ無い部屋の中で、ただただ時間が経過するのを待つ事しか出来ない。
コロナの影響でこの美しきシャバでも、自宅に籠らなくてはという状況が続いている。しかし自分の家に居る事が暇だなんて贅沢な話で、自分の部屋は自分が選んだ物で出来ている。本来一番自分にとって最高であるべき場所。踏ん張れ日本人、オリンピックは中止しろ!