激動の時代の夢について 前

夢を見た


 僕はスペインの雑貨屋にいて、2階の薄暗い窓際で友達とお土産を物色していた。なんだか気分が悪くなり、友達に先に出ると伝え階段を降りた。外へ出るとそこは人通りのない大通りだった。店先にはテーブルが置いてあり2人の女と3人の男がピザを囲んで談笑していた。
 ひとりの女から話しかけられた。25歳ぐらいだろうか、人の好さそうな口調だった。僕はスペイン語はわからない、英語なら少しわかると伝えると今度は英語で話してくれた。どこからきたのか。日本からだ。男も話しかけてきた。バルセロナはどうだ。いいところだ。そんな他愛もない会話をしていると最初に話しかけた女がセックスをしないかという。冗談だろというと冗談だという。異国の人間がからかわれるのはよくあることだと思うことにした。

 しばらくすると誰もいない大通りいっぱいに広がったデモ隊がこちらへ向かってきた。みんな手にはよく分からない言葉の書かれたプラカードを持ち、必死に何かしらを叫んでいる。年齢も人種もさまざまだ。中には日本人もいる。
デモ隊からひとりの男性が外れてこちらへ向かってくる。日本でよく見るアナウンサーだ。その表情は日本で見た「朝の顔」とはかけ離れている。
 アナウンサーは大声で僕に何かを叫びながら近づいてくる。別の女が抱いていた赤子を取り上げると、どこからか取り出した銃を赤子に突きつける。父だろうか。今度は女の隣の男がアナウンサーに銃を向ける。男は現地の言葉で何かを叫ぶ。それにアナウンサーが応えようとしたその時、男が銃を撃った。アナウンサーから血が散る。もう一発銃声がなり、今度は赤子から血が飛んだ。血は地面に流れた。

 僕は動けなかった。動けなくなってしまった。デモ隊はこちらを見向きもせず前へ進む。彼らにとっては些細なことなのかもしれない。でも僕の目の前にはふたつの死体があった。目をそらすこともできずにそこにある。
 しばらくするとデモ隊は土ぼこりを残して消えていた。店から友達が下りてきて僕に水を渡してくれる。その友達の女の子は僕の顔を心配そうにのぞき込んで見つめている。目の前の死体より僕の顔色の方が気になるようだった。水を口いっぱいに含んだ。そうしなければ吐いてしまうと思った。でも口に含んだ水を飲みこむことはできない。行き場を失った水は頬をこわばらせ喉をつまらせた。呼吸ができなくなり、否応なく元居たコップへ吐き出された。僕は顎がうまく動かせない。



ここで目を覚ました。村上龍の世界みたいな夢だと思った。この夢がなんだったのかとか、何を感じたのかとか書きたいことはもっとあるけれど、いったんこの話はここで区切りをつけようと思う。最近買った本にも書くことを習慣にするためにはハードルを下げなければならない。どんな拙い文章でもいいし、どんなタイミングで終わらせるかも筆者の自由だと書いてあった。何よりこれ以上長く書いたら二郎1杯で採算が取れなくなる。

「自分に甘く、他人にはもっと甘く」の精神で行こう。

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