革命やクーデターってどんだけ監視していても防げないですよ
いつの時代のどんな国にでも秘密警察や日本の公安警察に相当する組織はあり、皇帝や国王を亡き者にして国を破壊しようとか、帝位や王位を力で簒奪してやろうとか、そういう事を考える連中や団体も雨後の筍の如く現れ、その手の連中を捕縛しては全員処刑して、国を守っている。
どれだけ徹底的に監視しようが、恐怖政治をしようが、弾圧や抑圧政治をやろうが、それでもそういう人間達、組織や団体は必ず現れて、実際に計画を実行に移すから、黄巾の乱が起きたり、紅巾の乱が起きたり、太平天国の乱が起きたりしているわけで、そしてこの手の乱をきっかけにして、最終的に王朝が滅んでしまう事もある。
北朝鮮のような国民に相互監視させた上で、更に当局からの監視の目すら光っているような雁字搦めの監獄国家ですら、反体制派によるテロが結構な数発生している。
この記事で紹介されている事例は氷山の一角だ。
つまりテロやクーデター、革命を防ぐ為の監視には限界があるってこった。
完全に狂っていて、逝かれたイデオロギーやカルトの教義を信じ込んで何か起こそうとするような奴らは、必ず情報が洩れるからとっ捕まる。過激派の類もやはりどこからともなく情報が洩れて潰される。大体こういう奴らは普段から言動がおかしいか、隠していたとしても、何かの拍子にぼろを出し、周囲から怪しまれるので、問題を起こすよりも先に存在を当局に感知されるものだ。
しかし、政治が糞過ぎて国民の多くが不満を持っているとか、恨みや憎悪や怒りが蓄積しているとか、そんな状態になっちまったら、当然、国民の多くがテロや革命、クーデターを起こす予備軍になるので、そんなものは数が膨大過ぎて当局でも監視しきれない。
ロシアの二月革命などは、計画されて起こされたものじゃない。
戦時下の食糧難で怒った民衆が「食い物を寄越せ」とデモをやった。穏健なデモだったが、どんどん参加者が増えて巨大化した。最終的に鎮圧する為に警官隊を出したが、何と市民相手に発砲してしまった。鎮圧に当たった側も食べ物に困っていた庶民出身だった為、実際に食べ物がなくて困ってデモを起こしているのに発砲するとは何事かと堪忍袋の緒が切れて、デモ隊に自発的に参加する者が大勢出て、結果的に革命が起きてしまった。
国民の多くが政治に不満があり、老若男女問わずデモに参加するような異常事態になって、参加者数が10万人を超えたとしよう。毎日毎日、デモに参加する人数が増えて、30万人、50万人と増えて行き、遂には100万人に達してしまったとする。国会議事堂周辺はイデオロギーがあるわけでもなく、単に政治に不満があるだけの普通の人、巨大デモを面白がって野次馬気分で見学に来て、結果的に参加するような立ちになった人等で文字通りの黒山の人だかりができていたとする。
これだけの人数になったら、最早、デモの主催者でも、参加者らを統制できないだろうし、警察でも同じはずだ。その状態で政府が警察にデモの鎮圧を命じ、平和的なデモだったのに、殴られて血を流す負傷者が出たり、強権的な鎮圧が行われる事態となったら、何が起きるだろうか。
純粋にカルトの話に限定してもいい。
カルトが出鱈目に暴れ、被害者がら何十人、何百人自殺者が出ている、一家崩壊した家庭が数百、数千出ている、教団や教団と結託した政治家や政党に恨みや憎悪、激しい怒りを持つ人間が数万人、数十万人いたとする。
こんな膨大な人数、一体、どうやって監視するんだ?
ローンウルフ対策は結構だが、仮に公安警察がツイッターやインスタ、ブログや掲示板の書き込みから山上徹也の存在を認識し、調査して高い知能と武器に対する知識を持ち、軍事的な戦術を立てられる人物である可能性を見定めて監視して、山上を事前に逮捕したとする。
本当に事件は起きなかったのか?
さっきも言った通りで、統一教会の被害者なんて、教団信者数が交渉で約60万、アクティブ信者数は6万~10万と見られているが、この約60万が教団に籍を置いた人数とすれば、何十万人もの脱会者がいる計算になる。父親か母親が入信していただけで、子供は入信していないケースも当然あるのだから、被害者数はその数倍に達し、トラブルに巻き込まれて教団を恨んでいる親族にまで被害者を拡大すれば、もっと人数は増える。
さっきの言ったとおり、こんな人数を監視するのは不可能だ。
しかも犯行を実行に移す人間が、SNSやブログ、掲示板で過激な言動を取るとは限らないし、犯行に繋がりそうな情報をネットや図書館で収集しているとは限らないし、犯行が突発的であったり、元から武器や軍事の知識を持っている人物で、凶器を市販品を組み合わせたり改造して組み立てる程度で作成できてしまうようであれば、やはり犯行は防げない。
また、ある人がさるアイデアを思い付いた時、同じアイデアを思い付いた人がその人も含めて100名おり、更にそのアイデアを現実に実行するのは、その内の1人に過ぎない、とする考え方もある(どういった法則名だったか失念してしまったが)。
あくまでも100名という数字はたとえで、実行に移す確率もたとえだ。
山上が逮捕されたとしても、同じアイデアを持った残りの99人の中の誰かが犯行を実行しただけで、被害に遭う人、犯行が行われた日時と現場が異なるだけで、結局、事件は防げなかったのではないか。
統一教会に関しては、事件後、様々な報道が出てきて、あいつらがこれまで何をしてきたのかようやくわかったわけだが、これだけ多くの国民を痛めつけ、酷い目に遭わせ、地獄のどん底に気落とし、人生を破壊するような卑劣な行いをしてきたのに、寧ろ、今まで信者や元信者、及びその家族による報復事件が起きなかった事の方が奇跡だ。
山上のような人物が現れて、事件が起きるのが寧ろ遅すぎたくらいだ。
そういう観点から見ても、たとえ山上を事前に逮捕できていたとしても、同様の事件の発生を防ぐ事は不可能だっただろうと見る。
また、山上に関しては、殺人事件は許される事ではない。
しかし、統一教会を野放しにして、結果、山上が犯行を起こすに至る原因を作った政府は明らかに悪(しかも極悪、凶悪)だ。
仮に警察が山上をローンウルフ予備軍として監視して、逮捕したとして、その原因を作った統一教会は、与党政治家と政府によって守られ、警察も与党政治家と政府からの圧力で統一教会問題ではまともに動かず、まるで政府と与党政治家がカルトの手先であるかのように振る舞い続けたとしたら、それを見た国民は一体どう思い、どのような感情を抱くだろう?
倫理的、道徳的に政府、与党政治家、警察の行いは許容されないのみならず、明白な社会不正義である事は説明を要しないだろう。
政府も、国会も、国会議員達も、警視庁にローンウルフの対策課を創課させる事よりも、まずはカルト対策とカルトの取り締まり、カルトの被害者救済をさっさとやれと思う。
テロやクーデター、革命を防ぐ最大の対策は、まともな政治をやる事だ。