🎯第3章 見えてきた可能性::その1 閉じられたままのカーテン
そんな最悪な状況だった僕も
2週間くらいで
観察室から一般病室へ戻るときが来たんよ~
「幸島君が戻ってきましたよ~」
看護師さんの声からして…
手術前からいた病室みたいだ!
入院前からいた彼が
まだいるみたいなんだけど、
体を起こすことも
声を出すことも
左半身を動かすことも
今の僕にはできないから…
顔を見ることさえできない…
彼もそんな僕を見て絶句してたはず!
その証拠と言ってもいいのかな?
手術前は
開けっ放しだったベッド間のカーテンが
朝から晩まで閉じられたままになっちゃった…
トホホだ。
彼は病室のドア側のベッドにいたんだけど、
食事の際に食堂へ行く時とトイレ以外は
ベッドから出てこなくなってね~
たぶん
病室から出るには僕を
通り過ぎなきゃいけんでしょ?
顔を合わさんといけんわけやん?
声も出ないし動けない僕に
気を使ってくれていたんじゃないかな…
そして
僕が病室に戻って1週間後
脳内の問題に対しての定期検査が済んだのか?
彼が退院する日が来たんよ。
大きなバックを抱えて
ベッドのほうから申し訳なく出てきてね~
食堂やトイレに行く時と同じで
僕とは目を合わせず
一目散に病室のドアヘ行こうとしたんよ~
でもね、その時は途中で足が止まった!
そして僕のほうを向いてこう言われたんよ。
「今までお世話になりました。
これから大変でしょうがどうか頑張ってください」
「いやいや~そんなにかしこまらなくてもいいですって!
こちらこそ、最後は話もできず申し訳ありませんでした。
そしてお気遣いありがとうございます!」
そう言いたかったんだけど声が出ないでしょ?
更に体を起こせないから寝たままでしょ?
にっこり微笑むことも
顔面が腫れて麻痺しているからできないんよ…
無視しているわけじゃなかったんだけど
結局はそんな感じになっちゃってね…
ただ…
彼をずっと見つめていた。
それが今の僕が出来る感謝の形!
そんな僕を見た彼は、
深く一礼をして病室ドアを開け出て行かれた。
それ以来これまで一度もお会いしていないんだけど、
元気にしているんかな~
出来れば一度お礼が言いたいんやけどな~
ー つづく ー
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