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鍋焼きうどん




●「ご飯食べれる?鍋焼きうどんやで」





人は風邪をひくと身体が熱くなる

どうやらそれは熱で菌を殺しているから、らしい

まだまだ子供の彼には縁のない知識だが





▲「まだよか」





"よか"は方言だ

"いい"という意味らしい

都会の人には縁のない知識だが





2~3時間後、身体が回復した彼はお腹が空いてきたらしい


▲「鍋焼きうどんまだある?」

●「もうないで」

▲「え〜〜」


彼は、リビングに降りればご飯が勝手に出てくると、思っているので少し拍子抜けした


●「食べへんゆうたやん」

●「もぉ〜作るから待っとき」


彼は、なぜ怒られているのか分からなかった

風邪を引けば、母親から優しくされるのか当たり前だ!

と、思っているから



鍋焼きうどんが出てくる間、彼はテレビに集中した

お腹が減っている時の待ち時間は、長く感じると本能で知っているので、テレビで気持ちを紛らわす




やっぱり島田紳助は面白いな



怒涛の関西弁のしゃべくりは、聞いてて心地が良いみたいだ



そういえば、彼の母も関西弁だ

大阪というより、京都のイントネーションだが

父とは団子屋のアルバイトの、先輩後輩だったらしい

なぜ九州出身の父が、関西出身の母と、出会ったのかは

当時の彼の経験値では、わからなかった



●「ほら、できたで」


完成からの安堵だろうか、時間経過からの落ち着きだろうか
、彼の母の機嫌は直っていた




半熟気味の玉子、出汁が染みたネギ・鶏肉

その下で

ずっしりと、そしてほっこりとした表情を見せているうどん




空っぽの胃に優しく入っていく

あたかもこの瞬間の為に風邪をひいたのだ、と

皮肉が出てくるぐらいの「美味」

いや、違う

これは風邪をひいて苦しい思いをした私への「ご褒美」だ

そんな事を彼は、思っていた"気がする"






あ、そう言えば





「かまぼこ」も入っていた

全部美味しかった、お母さんありがとう。

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