ユニコーンオーバーロードをクリアしました(ネタバレなし)
はじめに
お久しぶりです。
とうとう就職を間近に控え、僕がnoteを書かずに何をしていたかというと、3月8日に発売されたばかりの『ユニコーンオーバーロード』、略してUOをやっていました。このゲームの略称については現在様々な議論が繰り広げられており、僕の観測範囲だけでも「ユニバ」「ニコバー」「ユニコバ」「バーロー」「ユニバード」「ンオー」「ーーーー」などの呼称が用いられていますが、とりあえずここでは無難そうなUOにします。期待が体験版の五時間に収まりきらなかった人たちによって発売前の時点でかなり略称が出尽くしたこのゲーム、とりあえず一通りクリアしたのでレビューを書きます。クリアまでにかかった時間は50時間ぐらい。開発インタビューだと「寄り道なしで50時間、寄り道しまくったら100時間を想定している」って書いてあったと思うけど、相当寄り道(クエストはほぼ全部やったし、アレインの親密度会話は全回収した)してもこれぐらいでした。まあでも正直想定してたより時間はかかってます。最初は「ほんとにこの感じで50時間ももつのか……?」と思ってたんですけど、しっかり50時間かかりました。僕が多少SRPG慣れしているのもあるかもしれませんが、難易度NORMALだとこれぐらいって指標になれば幸いです。普段からネタバレを含む書き方はしていませんが、今回は特に新作なのでその辺り気をつけていきたいね。
ユニコーンオーバーロードってどんなゲーム?
「運命に抗う、絆と愛の幻想戦記」
(My Nintendo Storeのキャッチコピーより引用)
端的に言えば、『タクティクスオウガ』とか『ファイアーエムブレム』みたいな「あの頃(僕はまだ生まれていない)の名作シミュレーションRPG」に現代の技術を持ち込んで、新しさと懐かしさを両立させたようなゲームです。以前『ハーヴェステラ』のレビューをした時も「踏襲と革新が同居した作品」みたいなことを書いた覚えがあるんですけど、今作もまあそんな感じです。特に今作は公式でそれを明言していて、以前の名作を意識しながら作っていることを明らかにしています。
ゲームシステム(戦闘パート)
ジャンルは「リアルタイムシミュレーションRPG」。『十三機兵防衛圏』をやったことある方に向けて言えば、大体『十三機兵防衛圏』です。
端的に言うと、制限時間内に進軍し、敵を倒していくゲームです。FEとかとは違ってターンの概念がなく、自分と敵が同時に動きます。そこで衝突したら戦闘が起こるという感じ。衝突しなければ戦闘は起こらないけど近くの敵はこっちに向かってくるし、何より本拠地に敵が着いたら敗北なので、基本的にはこっちから積極的にぶつかっていきます。
戦闘になると、部隊に編成しているユニット(キャラ)が自動で様々なスキルを使って戦います。ここのスキルの使い方とかも自分で設定できるんですけど、ここまで話すとえらいことになるので割愛します。勝敗判定は確か与えたダメージが最大HPに対して占める割合の大小とかで決まった気がする。まあ大体与えたダメージがでかい方が勝ちます。戦闘に負けると突き飛ばされて「ウエイト状態」になり、しばらく行動が不可能になります。勝った方はその間も動けるから、さらに追撃を仕掛けることも可能って感じ。
それを繰り返して、敵の本拠地にいるボスを倒せばステージクリアです。FEみたいに防衛戦とか離脱マップみたいなのはなかったと思う。
色々話したし、本当はまだ話してない要素の方が多いぐらいシステムが細かいけど、やれば感覚的に分かります。マジで。僕を信じてください。信じられないなら体験版をやってください。同じ開発元の『十三機兵防衛圏』もそうだったんですけど、頭で全然理解できなくても感覚では何故か理解できるんですよね。不思議なゲームだ。だから高難易度をやるわけじゃない限り、細かいところを考えるのは慣れてからで問題ないです。奥が深いけどハードルは低い、秀逸なゲームシステムになっています。そこは安心してほしい。
ゲームシステム(探索パート)
本作は戦闘だけじゃなくて、探索パートもあります。『FE Echoes』がわかる人に向けて言うと、『FE Echoes』です。別にEchoesに限らず風花雪月とかエンゲージとかにもあるか。
街で武器や道具を買ったり、人に話しかけて情報を集めたりする、いわゆるRPG的なアレ。マップ上にアイテムが落ちていることもあるので、くまなく探索した方が良いです。このゲーム、その辺の作り込みが凄くて、その意味では「全ての行き止まりにブチ当たらないと気が済まない人向けRPG」と言えるかもしれない。Twitter(自称X)が「文字があるとつい読んじゃう人向けのSNS」であるように。
探索パートでは、解放した地域の復興支援もできます。各地で集めた素材を消費する代わりに、名声も高まり、新たに人がやって来たり、港町なら船に乗れるようになったりします。あと復興した街には守備兵を配置することができ、守備兵を配置した地域に落ちている素材は自分で取りに行かなくても回収して手元に入ってくるようになります。ありがたい。
ちなみに街の数が多すぎて、シナリオ上で加入するキャラだけでは全然足りません。ただ、砦で傭兵を雇うことで数をカバーすることができます。もちろん戦闘に出すこともできるし、ステータスの成長傾向やボイスなんかも自分でデザインできます。僕は何か抵抗あったから使わなかったけど、普通に素材溢れる方がもったいないので抵抗ない人は是非雇ってみましょう。
戦闘の項目もかなり端折って書きましたが、こっちもかなり割愛した部分が多いです。もうとにかく体験版をやってくれれば大体分かるので、やってください。この記事は皆さんにゲームを購入していただくための記事ではなく、体験版をダウンロードしていただくための記事です。
グラフィック・デザイン
良かったと思います。マップ上の画面はノスタルジーを感じるシンプルな作りですが、シナリオ中や戦闘などは『十三機兵防衛圏』に近い、淡く美麗なデザインでした。ティアキンとかモンハンみたいな、いかにも「現代のゲームですよ!!」って感じの豪華さはありませんが、「現代に蘇ったあの頃の名作」のグラフィックとしては十二分と言えるのではないでしょうか。美術の成績2だったから細かいことは分からんけど。
あと各所で言われてるのはモーションやキャラクターデザインの完成度の高さ。確かにすごく幅広くて、武器屋とか道具屋の店員みたいないわゆるモブキャラさえかなり丁寧に作り込まれていました。まあこの辺も是非ご自身の目で確かめていただければと思います。美術2の人間の目よりはご自身の目の方がまあ信用できるでしょう。
シナリオ
毎度のごとく、冒頭のあらすじを自分なりに書いてみます。
女王イレニアが治める豊かな国、コルニア。しかし、突如反乱を起こした将軍ヴァルモアによってその秩序は崩壊した。女王は騎士ジョセフに王子アレインと共に逃げるように命じ、彼らに希望を託して自ら最後の戦いに出向いたのだった。
コルニアの反乱の後、ヴァルモアは自らを皇帝ガレリウスと名乗り、ゼノイラ帝国の建国を宣言した。ゼノイラはフェブリス大陸全土への侵攻を始め、コルニア以外の四つの国もゼノイラの圧倒的な力に次々と膝を折った。
コルニアでの反乱から十年の時が経った。小さな島に身を潜めながら修行を重ねて成長した王子アレインは、仲間と共に解放軍を結成。ジョセフがイレニアから預かった一角中の指輪を手に、ゼノイラによって奪われた故郷を取り戻すため、アレインはついに立ち上がる————
王道。本当にただその一言に尽きると思います。そういう意味では、SRPGをやりまくっている人にとっては物足りないかもしれない。まあSRPGをやりまくっている人ってそういうのが好きだからこそやってる部分もあるだろうから逆に大満足かもしれませんが。
王道……だからこその既視感はすごくあります。僕もエムブレマーの端くれなので、そんな場面は多々ありました。
正直なことを言えば、『十三機兵防衛圏』とか『ハーヴェステラ』のように予想の先を行ってくれるような感じではなかったので、その点は少しもったいないなあと思いました。SRPGではないけど、「あの頃の名作」として真っ先に名前が挙がるであろう『クロノ・トリガー』とかはまさにそんな感じで、王道の展開の先に作品固有の味があるような物語だったと思うので、そこも見せてほしかったと言うのが本音です。強欲すぎる。
ただ物語自体が面白くなかったかと言われると全然そんなことはなくて、内容はすごく良かったです。王道王道っつってるけど、これノウハウとかなく一から作り上げてるって本当にヤバいことだからね。今SRPGってやっぱりFEがかなりトップを走っている現状があると思うんですけど、そこに肩を並べる可能性がある新規作品として『ユニコーンオーバーロード』がまさしく頭角を現してきた、そんな期待を感じずにはいられない完成度だったと思います。開発に10年かかったらしいから次が出るかどうかちょっと分かんないけど、今のところ反響は悪くない(パッケージ版は売れすぎて品薄状態になってるらしい)ので、是非次も作ってほしいですね。
キャラクター
前にTwitterで体験版のレビューを書いた時は「キャラの多さがウリっぽいけどいまいちキャラが立ってない」って評価したんですけど、この辺についてはまあ……解決したキャラもいるし、解決してないキャラもいるかなあって感じです。FEも30年以上経ってもそんな感じだし、これはもうしょうがないのかもしれない。キャラ数は十分に確保されてるから、各々で気に入ったキャラを使ってくれってことなんでしょう。幸いキャラクター間に性能差はそんなにないです。高難易度だと分からんけど、NORMALならどのキャラでもほとんどの敵を殲滅できる。ジョセフも多分、いける。試してないけど。
ちなみにFEで言うところの支援会話にあたる、親密度会話の内容はかなり良かったです。対象となる二人以外のキャラクターも絡んでくることがあったり、本編では語られることのないキャラの一面が垣間見えたりして、非常に良い。特に他のキャラクターも会話に絡むっていうのは明白にFEにはない利点と言えると思います。あっちはキャラクターのロストって概念があるからその辺やりづらいところがありますが、本作はキャラが倒れても死なない分こういう場面に絡みやすいのが良いですね。
BGM
良かったです。シンプルながらも重厚で耳に残りやすい、それこそ「あの頃の名作」のそれに近かったと思います。「これめっちゃ良い!!」ってインパクトのあるものはあんまり思い当たらないけど、サントラとかで一通り聴きながら振り返ってみるとめっちゃ明確に思い出せるんだろうなあっていうあの感じ。あの感じです。
動作・UI
基本的にストレスはほとんどなかったですね。基本的に会話とかアニメーションはBボタン長押しでスキップできるので、その辺のテンポもかなり良かったと思います。船乗ってるアニメーションなんかは結構長いんですけど、スキップしたら一瞬で着いてるので、実際の読み込みは早いんだと思います。早く表示できるなら表示せんかいって気持ちもなくはありませんが。
動作については現代のゲームらしく、かなり快適に作られていたと思います。ただUIについては一つ明らかに問題だと感じた点があるので、それは後の項目で書きます。
問題点・不満点
・親密度会話の回収がダルい
ここは明確に改善の余地があるなと思っています。親密度会話はその会話ごとに指定された場所に行って、ハートマークのシンボルが出てる場所を調べると見ることができるんですけど、一気に回収する時にこれがまあ面倒。一つの会話を回収するために「メニューを開く→回収したい会話を選択→近くの街に移動(これは会話にカーソル合わせてAで飛べる)→街からシンボルまで移動→会話回収」の流れを踏まないといけない。特に毎回メニューを開かないといけないのと、街からシンボルまで移動しなければいけないのがしんどい。
当然ながら、この仕様のメリットもあります。会話の回収場所を指定することで会話が回収できるようになった時点の進行度を定めることができて、それによって本編の内容に触れる会話を作ることもできるようになるし(その会話を回収できる場所に着くためのシナリオは絶対に読んでいるはずだから)、「その場所で会話が行われている」というイメージもはっきりする。そのメリットがあることは理解できるけれども、そのために払うシステム上の犠牲がちょっと大きいかなと思いました。
・取り返しのつかない要素
これだけはネタバレさせてほしい。「クラインフェルト関所解放戦」は、出たらその場でやっておきましょう。僕はこれでクエストの全達成が不可能になりました。
あとこの手のゲームで取り返しのつかない要素として気になるのは仲間の説得だと思うんですけど、そっちはかなり丁寧に導入してくれてるのでよっぽど大丈夫です。FE聖魔でアメリアとマリカとクーガーを逃し、FE覚醒でガイアを倒した僕でも攻略見ずに全員加入させることができました。だから大丈夫だ(十分条件)。
・マップ上のギミックが見えにくい
これは僕が不注意なだけなんですけど、戦闘マップに仕掛けられている罠が結構見えにくいんですよね。参考までに、そのせいで酷い目に遭った動画を載せておきます。このゲームは断じてモンストではありません。
・クリア後の要素が薄い
まあSRPGなんでこんなもんだとは思うんですけど、クリア後はチャレンジマップみたいなのが一つ出てくるのと、新しい難易度が追加されるぐらいです。多分最高難易度で二周目をやればいいからやり込み要素はなくてもOKってことなんだろうけど、それはFEのハードモードを烈火のリン編しかクリアしたことないようなカス人間には無縁の話なのだった。
そういうわけで、二周目に手を出さないならやることには底があります。それは別に悪いことではないと思う(次のゲームに行っていいタイミングがはっきりしているから)し、本編の作り込みは十分すぎるほどなので満足感については全く問題ありませんが、まあ欲しいって言うだけならタダなんで言っておきました。
終わりに
色々言いましたが、非常に良いゲームだったと思います。こんな記事を書こうと思い立つぐらいには没頭してプレイしていました。
現代のゲームらしい派手さはないものの、そう思って油断していると本当にやめ時を失う。だって発売からまだ二週間も経ってないし、忙しくてやれない日も何日かあったのにもう50時間(体験版の分を除くと45時間)やってるわけですからね。学生の身とはいえ、とんでもないことですよ。
丁寧なチュートリアルやよく練られた設定、そして探索の幅広さに戦闘の奥深さ……各所に技巧が光る良作です。新規タイトルってやっぱりシステム面で荒削りな部分がありがちだと思うんですけど、本作にはそういう粗がほとんど見つからなかった。開発に10年かけただけあって、そういう基礎の部分がすごく丁寧に作られていました。ともすれば物語が王道そのものだったのも、今後展開を続ける上で基盤となるものを作るという意図があるのかもしれません。
そういう意味でも、今後にすごく期待したいゲームでした。ここまで読んでくださった皆さんはぜひ体験版だけでもやってみてください。