ないから作った、大人も子どもも刺激を受ける場所
中高生のサードプレイス「Viva!あそびば」サードプレイスを運営する・豊かな暮らしラボラトリー(ユタラボ)の山崎さんにお話を伺いました。
年齢層はどういった人を対象にしていますか?
主に中高生を対象にして放課後にオープンしています。ただ、ユースの方々だけでなく地域の大人の方、おじいちゃんおばあちゃんを含めた多世代の方々にとっての居場所になってほしいなと考えているので、サードプレイスという言葉を使っています。
Viva!あそびばは、放課後の中高生の居場所ということで、中高生向けの企画や開放を行っています。平日2回と土曜日の週3回開けています。平日は16:00から20:00まで、土曜日は13:00から18:00まで開けています。部活終わりに勉強をしに来る子が多いです。
施設では、中高生以外の形での利用もあります。例えば、このオフィス自体が私たちの職場にもなっていたり、地域の方々がコワーキングスペースや会議の場として使ってくださったり…。ふらっと訪れて下さる方もいます。このような、ユース以外を対象とした開放も行なっています。
イベント自体も今後は、中高生に限らず、地域の大人の方にも広く参加していただけるようにしていこうと考えています。
どういう設備がありますか?
益田市には高校が4校あるのですが、そのうちの3高校から徒歩圏内にあります。もともとおもちゃ屋さんの倉庫だったところを、自分たちでDIYしました。
1階の照明はあえてオレンジ色を使い、落ち着いた雰囲気にしています。2階が主に中高校生向けに開放しているエリアになっています。廃校になった学校から卓球台を譲っていただいたり、廃業した会社からコピー機を譲っていただいたりと、地域の方々に大変お世話になっています。最近テントを買ったので、その中で作業もできますし、小上がりスペースもあります。机もリノベーションの時に高校生と一緒に作りました。自習に来る高校生が利用しています。奥には少し区切りのあるミーティングスペースもあります。
どういったコンセプトを大切にして施設を作られているのですか?
みんなで作る、というところを大事にしています。益田は特に、高校生がふらりと遊びに行ったり、勉強したりする場所があまりないんです。でも「無いなら作れる」という余白のあるところが益田の魅力だと思っています。
作るときにみんなのサードプレイスになれるように、高校生も中学生も小学生も大人も一緒に作るというところを大事にしていました。地域の方々に助けていただきながら、高校生たちと一緒に、床を貼ったり、壁を塗ったり、カウンターを作ったりしました。よく見ると隙間があったり、塗りムラがあったりするのですが、そういう部分も含めて、手作り感のあるあたたかい場所になったなと思います。
どのような背景から施設を作られたのですか?
高校生がふらっと放課後に立ち寄れる場所がないことが、背景の一つにあると思っています。加えて、大人も、職場と家の往復ばかりで、その後ふらっと行ける場所がないと感じたことから、立ち上がったと思っています。
イベントはどういうものがありますか
サードプレイスでのイベントは、単発のものや連続で実施しているものがあります。単発では様々なものをやっていますが、連続して行っているものの1つには、ハローワークにひっかけた「ハローライフ(Hello!Life!)」という企画があります。ハローワークというのは、「仕事に出会う場、お仕事探しの場」ですが、このイベントではそれだけでなく、「人生に出会う、生き方にふれる場」にしたいと考え、「Hello!Life!」という名にしました 。益田に来てくれているインターン生をはじめとした大学生から、「どういう大学生活を送っているのか」や、「なぜその学部に行こうと思ったのか」、「将来何をしようと考えているのか」などについて、プレゼンしてもらったうえで、高校生と対話してもらうという企画になっています。益田市内は大学がないので、普段は大学生と関わるような機会が全然ありません。そのため、このような話が聞ける場があるといいかなということで、不定期で開催しています。
単発で行われているイベントにはどういうものがありますか
スタッフが行ってみたいことや、高校生の興味があることをベースにしてやっています。地域にDJの方がいるので、この間はここでライブをやりました。地域の方とコラボしながらやっていることが多いかなと思います。高校生対象のみでなく、大人の方にも広く告知し、地域の多様な世代の方々に楽しんでもらえるような企画を実施しています。今度やりたいと思っているのは、アロマのブレンドワークショップなど何かものづくりをするイベントです。壁のペイントもイベント化して、「一緒に塗ろう!」というかたちで実施しました。
地域の方と繋がることをとても意識しているように感じます
そうですね。他府県の子たちと比べて、学校と家の距離が離れているために、車で行き帰りする高校生も多く、なかなか刺激を受ける機会がなかったり、出会いが少なかったりすると思っています。そのため、視野を広げる、少しでも外の刺激を受ける機会をここで作れたらいいなと思っています。
高校生と地域をつなぐことは、ユタラボのコンセプトですね。
そうですね。ユタラボはサードプレイスの事業だけではなく、学校に入って授業を作ったり、地域の自治組織の支援をしたり、公民館と一緒に何か事業をしたりといった事業も行っています。このようなサードプレイス以外の事業の中で、地域の方と繋がる機会があるので、そこで出会った大人の方々と高校生がうまく繋がるような出会いの場を作っています。益田市が掲げている「ライフキャリア教育」という言葉があります。市内に大学がないために高校を卒業したら出ていってしまう子が大半なので、「それまでにいろんな地域の魅力と出会ったり触れ合ったりして自身の生き方を考えてほしい」「様々な生き方に触れながら 自分の生き方を考えてほしい」という願いがが主としてあります。
高校生がイベントを行うことはありますか?
学校の探究授業にユタラボが関わっている中で「こんなイベントをやってみたい」「こういうものを作ってみたい」ということがあった時には、サードプレイスを場所として貸すことがあります。その時には、高校生の「やりたい」を叶えてあげられるような伴走支援をスタッフが行い、様々な調整を学校や地域としながら実現のお手伝いをしています。
高校生が進めたイベントで何か代表的なものはありますか
益田のケーブルテレビで、「ひとまろビジョン」というものがあるのですが、ケーブルテレビで放映されているのもあって、観るのは高齢者の方が多いんです。それが課題として捉えられたことや、コロナの時期に番組が減ったことから、「高校生が番組を作るのはどうか?」というお話をもらいました。「やりたい」と手を挙げた高校生の子が、いろんな地域に出かけながら高校生目線で番組を作っており、そこの伴走にユタラボが関わっています。
具体的にどんな番組を作ったんですか
本当に、高校生が自分達が行きたいと思う場所を取り上げています。例えば、地域の新しくできた音楽教室さんに取材に行って実際に体験させてもらった回もありました。様々な場所に行って、取材して、やってみて、その感想を伝える形です。
学校に行けない子が来るということはあるのですか
フリースクールに通っている子もいます。そのフリースクールがちょうど同じ通りにあるので、そこに通う子がサードプレイスの常連さんになってくれるパターンもあります。日中フリースクールに行って、その後サードプレイスに来るというような形です。フリースクールではなかなか外部との接触がないそうで、ここに来るといろんな人に出会えて楽しいと話してくれています。
ユタラボが行う学校での授業とサードプレイスとの接続はありますか
探究についての相談が入り口で、初めてこの場に足を運ぶということも往々にしてありますし、学校の授業の中にユタラボスタッフも入っていくので、そこで顔見知りになって、ユタラボに接続することもあります。
こんな子がこんなプロジェクトをやったよっていう例があったら教えてください。
探究チームのひとつの班で、観光をテーマにしてプロジェクトを進めた子たちがいて、「益田の観光を盛り上げたい!」という想いから、有名なお寺や、空き家問題などに興味がある子が集まって話しあったり、竹灯籠(竹に穴をたくさん開けて中にライトを入れて灯す)というものを使った取り組みをしたりしていました。竹灯籠に関しては、地域で竹灯籠に携わっている方と生徒がイベントで出会って、学校で灯したり、観光地で灯したり、お寺で灯したりというようなことをしました。 ユタラボを作る時にアドバイスをしてくれた建築士さんが、まさにその方で、そういった繋がりも作れました。
取材日:2021年6月25日