建物も子どもたちがデザイン 石巻市子どもセンター‐らいつ‐
「らいつ」の由来:「権利(Right)」と「光(Light)」の2つの意味を持ち、子どもの権利の拠点として未来の希望のひかりとして子どもセンターが存在するという願いから。
どのような年齢層を対象にされていますか?
0-18歳までと、その保護者、それにかかわる団体が利用することができます。 利用者の比率は乳幼児36%、小学生30%、中学生21%、高校生14%です。
乳幼児支援をしてきた団体(NPO法人ベビースマイル石巻)と子どもの権利を柱にしたまちづくりをすすめる団体(NPO法人子どもにやさしいまちづくり)でコンソーシアムを組み、運営しています。平日の日中の利用は主に乳幼児親子で、夕方から小学生が増え始め、そのあとは中学生、高校生の利用が多いです。
休みは祝日と毎月第1・3木曜日と12月29日~1月3日までで、平日の利用者数は40人ほどですが、土曜日などは100人ほどが利用します。
らいつはどのような経緯からつくられたのですか?
震災後に、石巻の小中高生にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンから「まちに対する意識調査」というアンケートをとったところ、9割の子たちが自分のまちのために何かしたいという結果が出ました。セーブ・ザ・チルドレンが、「子どもまちづくりクラブ」を立ち上げ、ワークショップを重ね、遊び場がほしい、高校生の居場所、意見を発信する場所・機会がほしいという声があがり、「らいつ」ができることになりました。建物自体も子どもたちがデザインし、防音室やスポーツができる部屋、キッチン、勉強ができる部屋もあります。屋上で野菜を作っており、今年はトマト、なす、バジル、ミントを植えました。
石巻市外の方でも利用ができます。石巻には児童館がひとつしかないので、全域から土日は車で送ってもらったり、電車やバスを使ったりして来館してきます。昼はキッチンで作ったり、コンビニで買ったりして1日過ごす子もいます。平日は近場の子の利用が多いです。県外在住の方も利用することができます。
最近は、バンド利用者が増えました。テスト前は勉強利用者もいます。
どういう空間を目指していらっしゃいますか。
指定管理者になる際、『変わらない「らいつ(中身、職員、利用方法)」』でいてほしいという声が子どもたちからあがりましたので、立ち上げ時のコンセプト「石巻の活性化のために中高生が中心となってつくり運営していく施設」、「みんなが過ごしやすく、こどもの思いを世間の人たちに伝えられる場所」を私たちは守っていきたい。子どもを真ん中に、子どもの権利に寄り添って運営していくこということを大切にしています。
施設の設置や運営をしている貴団体についてご教示ください。
2013年に完成し、セーブ・ザ・チルドレン→石巻市に寄贈され、2014年から市の直営で運営・開館されました。その後、2018年から指定管理者制度での運営に代わり、コンソーシアム(NPO法人ベビースマイル石巻+NPO法人子どもにやさしいまちづくり)が指定管理者となりました。
中高生委員会や、中高生自主企画(中高生の主体的な活動)はありますか。また中高生の意見をどのように運営に反映されていますか。
子どもエンパワー事業(小学生~高校生対象)では、アートラボ、めざせ料理王、アースティーンズ(社会、人権、平和がテーマ)、青春力(中高生限定イベント)があります。青春力はカフェを借りて高校生カフェを開催したり、地域のお店に出て行ってパン作りをしたり、屋上を使ってバーベキュー、初詣(イベントとして)などに行ったりしています。
「子ども会議」(らいつの運営・ルールについて話し合う)では小4~高校生が対象で月2回、常時5-6人ほど(小学生が多い)が参加しており、最近では、Wi-Fiを導入するかどうか話し合い、2年ほど協議の上、導入が決定された、などということがありました。小学生~高校生までと参加者の年齢層が幅広いので、ずっと参加している中高生が小学生をひっぱって活動してくれています。活動にかかわる中高生は、スタッフからスカウトしたり、オープンスペースで会議を行って可視化することで興味を持ってもらったり、すでに活動に参加しているメンバーが友達を連れてきたりするなどして、新規のメンバーが集まります。
「子どもまちづくりクラブ」(小学5年生~高校生が対象)では主に高校生が集まり、月1-2回10人程度が活動しています。石巻をYouTubeで発信する「らいTube」プロジェクトでは、らいつの様子をYouTubeで発信しています。「まきコミ祭」プロジェクトでは、地域の一員としてまちづくりに取り組み、アニメ・漫画をテーマに、コスプレイベントなどをして若者を呼び込もうと活動しています。震災を風化させないために活動している「防災」プロジェクトでは、語り部イベント(防災)なども月1~2回集まって、計画を進めています。
「子ども企画」では、子どもたちがいつでも自由にやりたいことを提案できます。自分で企画書を書き、その場でお願いした利用者3人以上にプレゼンし、10点中8点取れれば承認となり、実現できます。これまでには、小学生がUNO大会や水鉄砲大会、クリスマスパーティを、中学生がスマブラ大会を、高校生が英会話教室などを企画し、実現させました。
子どもエンパワー事業での「青春力」は職員が企画しますが、中・高生世代が様々なテーマを通じて地域や社会に関心を持ち、つながることができます。
地域や学校、企業連携で何か意識されている活動はありますか。
月1回、らいつのおたよりを近隣の小学校2校に届けています。また、年に3回は大きなイベントのご案内とあわせて教頭先生とお話する機会を設けています。
移動児童館事業である「出張型らいつ(プレーパークのような)」を小学校PTAと連携して遠方の3地域で開いています。1つの小学校では総合の授業で「子どもの権利、子どものまちづくりについて」にかかわっています。
中学校とのつながりが薄いので、学校カフェなどをやって、かかわりを作っていきたいと思っています。石巻市内に高校は10校程度あり、他の就労支援NPOは校内カフェなどを行っています。震災のために、石巻はNPOが多いので連携はたくさんあり、情報は頻繁に共有しています。学童も一緒に行ったりしています。
地域の人でもらいつを知らない人がいるので、水曜日は地域の人にデッキを開放して、ピクニックのようにして通りかかった人を呼び込むような、、「お茶っこらいつ」を実行しています。
建設費を支援いただいたサントリーと毎年イベントを行っています。昨年はサントリーの方と子どもたちと一緒に花植えをして商店街に設置したり、盲導犬とのふれあい体験をしたりしました。
サントリー以外の企業だと、バンダイとガンプラ作りや、「ジャッキー」のトートバッグづくりをしてジャッキーと一緒に踊るイベントをしました。
地元漁業関係者による漁業体験をさせてもらったり、のり工場へ社会科見学。水産加工工場を見学させてもらったり、カヌー団体と連携してカヌーを体験させてもらったりしました。
取材日 2020年7月8日