#16 勇気と信念のフットボール
ここまでリーグ全戦ドロー。
勝てていなかったとは言え、どの試合も内容は悪くなくタクティカルで先進的、かつエキサイティングなフットボールを見せてくれていた。
選手たちも手応えを感じていてそれなりの自信もあったと思う。
しかしやはり勝てていないということが、どこか心の片隅に引っかかっていても不思議ではない。
自分としてもここまでの3試合を見て、昨年に続きJリーグに旋風を巻き起こしそうな予感もあったし、もちろん勝利も信じていた。
それでも引き分け続きで勝てていない事実やディフェンスラインに怪我人が相次いでいることは、一抹の不安を抱えさせるには充分だった。
そこへきてこの勝利だ。
この試合現地で観戦したが、誰一人としてサボることなく驚異的な運動量で所狭しと動き回る選手たち。
ピッチ上の11人が共通理解のもと有機的に連動しながら鬼気迫る勢いで次々と襲いかかり相手の前進を許さない。
心配されたディフェンス陣も田代を中心にリスクを恐れず勇気をもってハイラインを保ち続けチームをコンパクトにし前線のプレスを助ける。
そのハイラインの裏を狙ったボールや苦し紛れに放り込んだボールはパギや田代がことごとく跳ね返す。
攻撃ではサイドに人数をかけ数的優位を保ちチャンスを作り続けゴールをこじ開けた。
課題であった終盤のガス欠は垣田が戻ってきたことで苦しい時間帯に前線でタメを作ることができ、途中投入の小野と荒木が走り回りサポートすることで解消。
毎試合出ていた課題をしっかりと修正しチームに落とし込む若き指揮官とコーチングスタッフ。
クラブに関わる全ての人の力を結集しもぎ取った勝利だった。
当然上には上がいる。まだまだ1勝したばかりという捉え方も出来るかもしれない。
しかし昨年の主力が大量放出され監督も変わった新生サガンに必要だったのは純然たる結果であり、この1勝は単なる勝ち点3ではないのだ。
だからこそこの1勝はチームにとっても我々サポーターにとっても本当に大きな意味がある。
「負けない、だけど勝てない」であったのが「1勝3分けの無敗」になったのだ。同じ無敗でも4分と1勝3分では対戦相手に与える印象も全く異なる。
この勝利で選手のみならず監督すらも若いチームであるサガン鳥栖は勢いを増すだろう。
だがその勢いをさらに加速させるためには次戦のマリノス戦でも結果を出さなければならない。
昨年完全に力負けした相手にどれだけやれるのか?
ここで結果を出すことができれば、自分たちがやろうとしているフットボールが間違っていないと本当の意味で確信出来るだろう。
たとえ取ったリスクが裏目に出ようとも、臆することなくブレずに「勇気と信念のフットボール」を貫き通してほしい。
決戦は金曜日。今期を占う序盤の大一番だ。