見出し画像

『仕事の8割はつまらない』No.14

「それって、誰でもできる仕事じゃない!」
伝票入力を代行する部署に異動することになった彼女は、悔しそうに、そうつぶやいた。
「それ、俺の仕事じゃないですよね!」
グラフィックデザイナーの彼は、Webサイトに表示するバナー広告のデザインの指示を上司から受け、怒ったようにそうつぶやいた。

そもそも「私にしかできない仕事」って、なんだろう?
組織内のほとんどの仕事は、「誰にでもできる仕事」で成り立っているのではないだろうか?
当時、その場面に出くわした私は、心の中で「私にしかできない仕事」ってなんだろう・・・と反芻していた。
彼女と彼は、その仕事は自分がやるような仕事じゃないと思ったのだろうか?
自分はもっと能力ある人間で、そんな小さな仕事はやりたくないという気持ちだったのだろうか?という風に、私の頭の中は「?」マークでぐるぐるしていた。
いつだって、下層部にいる私は、人からみたら雑用と思われるような仕事でも、やることがあるだけありがたいと思ってしまう。そういう思考回路だ。

それたぶん、20数年前に育児休暇から職場復帰したときに味わった疎外感にある。
当時はまだ、育休から復帰する女性は少なかった。
上司もどう扱ったらよいか分かたなかったのだろう。
周りはみんな忙しそうに仕事をしているけど、私は何もすることが無かったのだ。
毎日パソコンの前で「仕事をしているふり」をしていた。
みんな自分の領域を守ろうと、チームで仕事をするというより、個人で仕事をするような部署で手伝うこともできなくて、遅くまで残業している人が、頑張っているとみられるような組織だった。
あの頃はビルの清掃に来る人の仕事ぶりをみて、毎日きちんとやることがあっていいなと思っていた。


息苦してたまらずに、自ら異動の申し出をして、新しい部署で働くことになったのだが、新しい部署でも、女性は男性のアシスタントで当然、重要な会議には呼ばれずに電話をとり、荷物の発送業務をしたりしていた。
時間に余裕があったので、マーケティングの本を読んだり、内職のように企業リサーチをして頼まれてもいないのに、提案書を作成したりしていた。
その提案書をもって、本当にその企業に伺ったのもいい思い出だ。
今では、子どもがいる女性が働くのは珍しい事でも何でもないことが、とても嬉しい。


伝票処理の業務を「誰でもできる仕事」とぶった切った彼女も、まだその部署で頑張っている。
小さなバナーのデザインを「それ、俺の仕事じゃない」と言った彼は、その後まもなく退職した。
みんな、それぞれ自分の居場所を働くということに重ね合わせているのではないだろうか?私はそう思っている。
誰もが笑顔で働けるような職場が理想だが、それはとても難しいこともよく知っていいるつもりだ。

だから私はいつも、どんな小さな仕事でも「楽しく」仕事をすることを心がけている。
それは、自分が苦手なタイプの人とは程よく距離を置き、率先してまず自分が失敗を怖がらずに仕事を引き受けることだ。
一般社員の立場はこんな時、実はとても強い。


では、また次回。
明日も自分から挨拶をしよう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?